2019年7月29日(月)、株式会社キメラは、招待制のイベント「メディアのサブスクリプションビジネス戦略」を開催。同社が日本国内総代理店を務めるサブスクリプション管理ツール「Piano」の紹介や、デジタルメディアにおけるグローバルなサブスクリプションモデル最新事情などが講演されました。本稿では、グーグル合同会社プロダクトパートナーシップ本部の友田雄介氏による講演「収入源の多様化とGoogleの提供するツール」のレポートをお届けします。

友田氏はまず、2019年の出版・ニュース業界における世界の潮流について言及。ロイターが163社に聞いたところ、52%が有料購読モデルに注力すると回答し、従来の広告モデルを採用・続行する意思のある企業数を上回りました。「その理由としては、世界中でサブスクリプションサービスの成功事例が増えていることが挙げられます」と友田氏は続けます。

The New York Timesは有料購読ユーザーが450万人を突破。その結果、サブスクリプションによる収入が全体の3分の2を超えたそうです。The Guardianも有料購読ユーザーが65万人を突破。2018年から15%増と、こちらも好調です。インドではTHE KENが立ち上げからたったの1年で有料購読ユーザーが1万人を達成しました。THE KENは無料モデルがなく、有料購読でしか閲覧できませんが、独自取材による記事が高く評価され、それを武器に伸びています。南米に目を向けると、Pegina12が半年で有料会員50万人を突破するなど存在感を発揮しています。コメント機能などで付加価値を付けたのが功を奏しているということです。また、The Guardian初の女性編集長であるキャサリン・ヴァイナー氏はこの成功に関して「漠然とトラフィックを追うのではなく、The Guardianに定期的にアクセスする1千万人に注力した」と答えていることが紹介されました。

グーグル合同会社プロダクトパートナーシップ本部の友田雄介氏

次に友田氏は、購読モデルにもさまざまな方向性があることに言及。ここでは

  • Contributions:あらゆる記事を無料で閲覧でき、気に入った記事に”投げ銭”できるモデル
  • Membership:有料会員制を敷くモデル
  • Metered paywalls:一定の数の記事だけを無料で閲覧できるモデル
  • Hard paywalls:無料では記事を閲覧できない、完全有料モデル

の4モデルが例として挙げられ、「自分のメディアの読者はどのような属性か。こうしたモデルをどう組み合わせ、どう提示するのが望ましいのか。その答えを探すのが、世界中のパブリッシャーの最重要課題となっています」と語りました。

そして、それを実現するためのマーケティングファネルは

  • Discovery:記事やコンテンツの存在をどのようにして届けるか、見つけてもらうか
  • Engagement:訪問してくれたユーザーの期待に、いかにして応えるか
  • Conversion:いつ、どのようにして、どのような購読モデルを提示すればいいか
  • Retention:購読ユーザーに、いかにして継続してもらうか

の4つのステップすべてが最適化されるのが望ましく、Googleは各ファネルにおいてその手伝いができると述べました。

「Discovery」の段階においては、Google NewsとAMPの導入が挙げられました。「Google Newsにフィードをいただければ、こちらでみなさんのコンテンツの一部をお見せし、みなさんのメディアへとトラフィックを流すことが可能になります」。また、AMPは「Accelerated Mobile Pages」の略称で、GoogleとTwitterによるオープンソースプロジェクトです。導入すればモバイルでのネットサーフィンがより快適になり、それはすなわち、導入していないメディアへのアドバンテージとなりえます。

「Engagement」の段階では、News Consumer Insights(NCI)が勧められました。これはGoogle Analyticsが収集したデータを利用できるデジタルメディア/ジャーナリスト向けの製品で、世界中の900以上の同業他社のデータをベンチマークとしているため、他社と比べたときの強みや弱みを明確にできるとのことです。さらに、Real-time Content Insights(RCI)であれば、そうしたデータをリアルタイムで閲覧できます。

また、現在は試験運用中との前置きでPropensity to Subscribeも紹介されました。これは訪問者の購読傾向を機械学習でリアルタイム判別するというもので、訪問者の種々の属性から、有料購読してくれる期待率を算出するAPIであるとのことです。友田氏は「Propensity to Subscribeはあくまでスコアを提示するだけですが、訪問者にどうオファーするか、という判断基準の一つとなりうると思います」と補足しました。

その後の「Conversion」、「Retention」の段階においてはSubscribe with Googleが挙げられました。GoogleアカウントやGoogle Pay情報と自社サービスのアカウントをリンクさせることで、Googleにログインさえしていれば複数の端末にまたがって、それ以外のサービスにログインし直すことなく購読している有料コンテンツを見られるようにしたり、検索結果に表示させることができます。友田氏は「これにより、リテンションを上げられます。また、決済手段も登録されていれば、モバイルではわずか2タップで有料購読を完了できるようになります」と続けました。

友田氏は最後に「繰り返しになってしまいますが、有料購読モデルを成功に導くには、ファネルのあらゆるステップを最適化する必要があります。今回紹介させていただいたツールで、みなさまのビジネスのお役に立てればと思っています」とまとめました。