MIの10月特集は「4000万人の巨大市場、インバウンドメディアを知る」です。日本を訪れる外国人の数は今年も全ての月で前年を上回り、政府は2020年に4000万人の大台を目指すとしています。10年前の2009年は678万人だったことを考えると、隔世の感があります。インバウンドの盛り上がりと同時に、その膨大な日本を訪れる外国人をターゲットとしたメディアも成長を続けています。インタビューを中心にインバウンドメディアに迫ります。

訪日外国人が増加する中で、ホテルなど宿泊施設の不足が大きな課題となっています。特に2020年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されることから、宿泊施設の確保は緊急の課題となっています。そこで注目を集めているのが移動できる家とも言えるキャンピングカーです。ラグビーワールドカップでも外国人を中心に人気を集めているというキャンピングカーのレンタルサービスを展開するキャンピングカー株式会社の頼定誠社長にお話を伺いました。

―――これまでのご経歴を教えてください

大学卒業後はIBMで10年くらいエンジニアをやっていました。その後、ネット広告をやりたいと思い博報堂に転職して、主にダイレクト系の化粧品のECなどをクライアントにしていました。その中で、富士フイルムの新規化粧品事業「アスタリフト」で取締役COOとして立ち上げを実施しました。その後は、モブキャストというゲーム会社に参画し、2012年に東証マザーズへ上場いたしました。次は自分でBtoC事業をやりたいと思い、ファインシードという会社で、キャンピングカーレンタル事業と遺伝子検査事業など、新たに10事業を立ち上げました。キャンピングカーレンタル事業が軌道に乗ってきたので、スピンアウトして新会社キャンピングカー株式会社を立ち上げ、古巣の博報堂DYメディアパートナーズさんやイードさんに出資してもらって、さらに事業を拡大しようと取り組んでいるところです。

―――どうしてキャンピングカーを事業にしようと考えたのでしょうか?

個人的に犬を飼いはじめた頃、犬と一緒に旅行するのが大変・・・という自分の悩みがきっかけです。ペットOKの宿泊施設は徐々に整備がされているのですが、かなりの人気ですので、相当前から計画していないと予約できません。忙しい人は直前に予約することが多いと思いますが、そうなると難しいんです。移動も新幹線や電車は周りに気を遣いますし、飛行機だとペットだけ貨物室になってしまいます。そこでキャンピングカーという選択肢があるんじゃないかと。それでキャンピングカーのオーナーさんに色々とヒアリングしていきました。典型的な反応は「キャンピングカーは買うものだ」というもので、レンタルの事業者も殆どありませんでした。これはチャンスがあるなと感じ、まずキャンピングカーを調達して、それをレンタルしていくという事業を始めました。

―――事業開始から約4年ですが、現状どういった状況でしょうか?

レンタル事業は「ジャパンキャンピングカーレンタルセンター」というブランドで展開しています。最初は中古で仕入れた1台から始めましたが非常に強い反響があり、今は直営とフランチャイズの組み合わせで、全国に営業所を構え、約80台のキャンピングカーを保有しています。元々業界が小さいということもありましたが、3年くらいでナンバーワンになれました。

ジャパンキャンピングカーレンタルセンター のウェブサイト

キャンピングカーの車両は全て1台1台手作りで、ベースの車両からカスタムして製作しています。トヨタ ハイエースをベースにした「ロビンソン771」、トヨタ カムロードをベースにした「ロビンソン106」、マツダ ボンゴトラックをベースにした「アミティ」など6種類の標準化した車両を扱っています。オーナーとしてキャンピングカーを購入する場合は収納容量を重視することが多いのですが、レンタルではそこまで収納容量を求められないので、収納を最低限削減して乗車スペースや就寝スペースを増やすなど、約4年やってきたノウハウを盛り込んでいます。普通免許でAT限定でも乗ることができるモデルで、普通のコインパーキングにも駐車できるサイズのみを揃えてますので、誰でも安心して借りていただけると思います。

主力となっているロビンソン771
内装の様子。レンタル用に設計されている

―――どういったユーザーの利用が多いのでしょうか?

最初はペットを飼っていて、お金に少し余裕がある方の利用が目立ちました。ただ、通常時で2~3万円/日、ハイシーズンでも3~4万円/日で利用できますので、6人以上で使えば通常のホテルと変わらない金額になります。ですので、学生さんのサークル・ゼミ利用も見られます。利用期間は日本のお客さんで2,3泊、インバウンドのお客さんだと6,7泊というのが目立ちます。中には一ヶ月くらい借りる人もいます。総じてマナーが良く、とても綺麗な状態で戻ってくるのが嬉しいですね。

―――外国人の利用も増えているのでしょうか?

当初は日本でキャンピングカーがレンタルできるということが知られていないようでしたが、海外の旅行会社と連携を強めていて、去年の中旬から非常に伸びています。台湾や香港の人が多いですが、ラグビーワールドカップに合わせて欧米のお客さんも増えています。ワールドカップは期間が長く、会場も全国各地に散らばっているため、キャンピングカーを走らせながら観戦し、試合のない期間は観光をするという人が多いようです。

台湾や香港からは日本にリピーターとして訪れる人が多いですので、そういう人たちが今までにない特別な体験をするためにキャンピングカーを借りてくれているようです。最初はツアーで、次はレンタカーで、そしてキャンピングカーで、という流れでしょうか。欧米の人はキャンピングカーに親しみがあるので、日本で借りられるという認知が広がれば、もっと利用が進むと思います。

彼らのニーズとして、運転手を付けたいというリクエストもあります。法的な面から我々が手配することはできないのですが、彼ら自身が手配することは問題ありません。今後はキャンピングカーの車両として、運転席と後部座席空間を分離してプライバシーを確保した車両も開発したいと思っています。

来年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されますが、ホテル不足が言われています。キャンピングカーにとってはかなりの追い風になるでしょう。来年は半分がインバウンドのお客さんになるのではと予想しています。オリンピック期間の予約は10月1日から試験的に開始しましたが、非常に多くの問い合わせをもらっています。各国の関係者から、3月から閉会式まで借りたいというようなニーズも貰っています。会期は7-8月の酷暑です。動く家として、冷房が効いた場所を確保できるキャンピングカーは便利に活用できると思います。

ラグビーワールドカップではスポンサーのマスターカードに特別な塗装を施したキャンピングカーを提供。全国の試合会場に遠征しているそう。ワールドカップに合わせての予約も多数あったそうです。

―――インバウンドでキャンピングカーがより活用されるための課題はあるでしょうか?

海外と異なる道路事情は一つの壁にはなると思います。例えば、主要国とハンドルが逆であることや、常に右折可ではないといったルールの違いですね。それから、停められる場所の確保は大事ですね。「RVパーク」と呼ばれるような、キャンピングカーなどの車中泊を想定して、電源やトイレなどを整備した場所が日本でも増えています。こういった場所があれば、訪日外国人の誘致にも繋がりますので、地方自治体も率先して整備を進めています。我々のところにもよく相談がきます。

―――なるほど

国立公園などの近くに「RVパーク」があれば、とてもアクセスが良くなりますので、訪日外国人を誘致することに繋がります。道の駅を開放すれば収益にも繋がりますし、ホームセンターも広い駐車場がありますので活用できそうです。Carstay株式会社さんが運営されている「Carstay」など、日本全国の車中泊が可能なスポットを集めたメディアも誕生しています。

いま、観光公害という言葉ができるように、著名な観光地に外国人が殺到してキャパオーバーになっているということがあります。キャンピングカーを活用して、もっと多様な場所に外国人が訪れるようになれば、観光公害も緩和されるのではないでしょうか。当社でもキャンピングカーを使うことによって楽しめる観光地の情報がより流通することが、利用を促進することにも繋がると思っていて、「くるまの旅ナビ」というメディアを運営して発信をしています。

―――メディアと言えば他にも「キャンピングカー比較ナビ」、「こっそり農遠」、「ワンダホー」、「BOUSAI時計」といった事業も展開されていますね

「キャンピングカー比較ナビ」はキャンピングカーを購入したい人に向けたメディアで、新品と中古のキャンピングカーの比較やクルマ選びのための情報を発信しています。自社ブランドの車両の販売も行っています。「こっそり農遠」は自分で農園の一区画を所有し、その様子をいつでもスマホからチェックできるという農園オーナー制度アプリです。キャンピングカーとの相性も良いのではないかと思っています。「ワンダホー」は迷子犬を皆で探そうというペットアプリで、かなりの確率で無事に見つけることができています。こちらもキャンピングカーと犬の相性は良いのではないのかということで始めた事業です。

―――これからの取り組みについて教えてください

キャンピングカーのレンタル事業は順調に拡大していて、ハイシーズンには車両の手配が追いつかない状況です。キャンピングカー車両自体にも人気が集まっているため調達に時間がかかるのですが、一年以上先に納車されるものも既にオーダーしていて、順次車両数を増やしていくつもりです。

車両も色々と工夫の余地があると思います。車両に麻雀卓を設置して「マージャンピング」というものを提案しています。青空の下で健全な麻雀を楽しめます(笑)。次はWi-Fiやプリンターを完備してキャンピングカーを動くオフィスとして活用する、というムービングオフィス構想というものもを考えています。当社も社内の合宿を、キャンピングカーを使って行いましたが、とても快適で非日常空間を楽しめました。こういった工夫はまだまだありそうです。

青空で麻雀、マージャンピングという提案
葛飾北斎の浮世絵をデザインしたキャンピングカーも提供している

イードさんとの資本業務提携では、スマホをクルマのキーにする「バーチャルキー」を、弊社の管理しているキャンピングカーに導入していくことも考えております。その他にも、AI/5G/IoTなど、様々なテクノロジーやメディアを活用して、キャンピングカーのもっと面白い提案をするべく一緒に動いています。

来年はオリンピックという追い風もあるので、積極的に事業を拡大していければと思っています。

※キャンピングカー株式会社は、MIを運営する株式会社イードの投資先です

10月特集: 4000万人の巨大市場、インバウンドメディアを知る

1. 46社局が日本の観光ガイドを作る取り組み、「LIVE JAPAN」ぐるなび加藤氏に聞く
2. DMOが主体となって世界に情報発信、「せとうちFinder」などを手掛けるネイティブ倉重社長に聞く
3. ラグビーW杯でも注目、キャンピングカーはインバウンドの切り札になるか? キャンピングカー株式会社 頼定社長に聞く
4. 株式会社ランドリーム 原田社長インタビュー
5. 株式会社mov インバウンド研究所 所長 田熊氏インタビュー
6. ADARA 日本カントリーマネージャー 森下氏インタビュー

キャンピングカー頼定社長も登壇のイベントは10月30日(水)開催

今月も「Media Innovation Meetup」を開催。特集に参加いただいた各社が一堂に介し、2時間でインバウンドメディアやマーケティングを理解できるイベントとなります。ぜひご参加いただければと思います。

■概要
日時 2019年10月30日(水) 19:00~22:00
会場 TIME SHARING秋葉原 〒101-0021 東京都千代田区外神田1丁目15−18 奥山ビル 8階
主催 株式会社イード

■スケジュール
18:30 開場
19:00 開演、主催者挨拶
19:05 各登壇者からプレゼンテーション
    株式会社ぐるなび  LIVEJAPAN事業企画S S長 安藤京介氏
    株式会社mov インバウンド研究室 室長 田熊力也氏
    アダラ・ジャパン株式会社 カントリーマネージャー 森下順子氏
    ネイティブ株式会社 代表取締役 倉重宜弘氏
    キャンピングカー株式会社 代表取締役社長 頼定誠氏
20:25 パネルディスカッション
20:50 懇親会
21:45 終了

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