令和元年上場は何社? ベンチャー企業、年末の上場ラッシュのワケ

年末の新規上場がラッシュと言えるような状況です。主要なところだけでも、フリー、ランサーズ、メドレー、マクアケ、スペースマーケット、ALINKインターネット、BuySell Technologyといった上場が期待されてきた注目ベンチャー企業の数々が12月に東証マザーズへの上場…

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年末の新規上場がラッシュと言えるような状況です。主要なところだけでも、フリー、ランサーズ、メドレー、マクアケ、スペースマーケット、ALINKインターネット、BuySell Technologyといった上場が期待されてきた注目ベンチャー企業の数々が12月に東証マザーズへの上場を果たします(新規上場企業)。

2019年に東京証券取引所に上場したのは、承認を受けた段階の会社も含めて82社。うち15社が12月に固まっています。昨年は97社、一昨年は93社ですので、90社に届かない今年は低調な年と言えますが、それでもこれだけのベンチャー企業が同時に上場するのは異例です。

この背景には幾つかの理由が考えられます。

上場のハードルは上がっている

株式会社ジャパンベンチャーリサーチのまとめによれば2018年国内スタートアップの資金調達額は4211億円。2010年には僅か704億円であったことを考えると、この10年間で日本のスタートアップに対する投資が増え、その資金を使った積極的な事業拡大によって、創業から数年でも上場を目指せる環境が整ってきました。

12月に上場するメドレーは2009年、フリーは2012年、マクアケは2013年、スペースマーケットは2014年と創業から10年以内です。

Japan Startup Finance Report 2019H1 より

Startup DBが提供する未上場企業を対象とした想定時価総額ランキングでは、5社が1000億円を超え、いわゆる「ユニコーン企業」となっているほか、20位でも300億円を超え、マザーズ上場企業と比較しても遜色ない数字です。

一方で上場のハードルは上がっています。転機となったのは、いわゆる「gumiショック」。2014年末に上場した同社は、僅か2ヶ月半で業績予想を赤字に下方修正。これによって上場時の業績予想により強いプレッシャーがかかるようになり、結果として2Qや3Qまでの数字を固めて、期末近辺に上場する傾向が強くなりました。

東証の審査も年々厳しくなっていると言われ、関係者によれば証券会社による審査に合格しても、東証の審査に落ちるケースが増えていて、それも年々増していると言います。

同時に監査法人へのプレッシャーも強まっていて、監査法人も監査する企業の選別を強めるようになり、上場を目指そうにも監査法人が決まらない「監査難民」が続出していると言われます。特に大半の企業が採用する3月決算では業務が集中するため新規の引き受けが難しいとされ、決算期を3月以外の時期にするのは必須のようです。

12月上場企業も大半が3月以外を決算期としています。スペースマーケットやBuySell Technologyは12月決算です。上場時には進行期の数字と、業績予想を開示する必要がありますが、12月決算であれば3Qまでの確定値を報告することになります。残りは3ヶ月分ですので、精度の高い予想が出せ、結果として上場直後に下方修正を出すようなことを防ぐというわけです。

オリンピック前の駆け込みなのか?

オリンピック前の駆け込みという見方はどうでしょうか。これは正解でもあり、不正解でもあると思います。

東京オリンピックに向けて開発が進む

上場の準備を始めるに当たって、オリンピックが景気のピークになると予想し、その前に上場できるようにスケジュールを引こう、という判断はありそうです。東京オリンピックが決定したのは2013年でしたので、十分な余裕がありました。

一方で、上場準備には3年程度を要しますので、そろそろ景気が悪くなりそうだから、今すぐ上場しよう、という訳にはいきません。準備も社内体制の整備から、主幹事証券による審査、取引所による審査など綿密にスケジュールが引かれるのが一般的ですので、調整は難しいと考えられます。

ただ、延期という考え方はあります。十分な規模にまで成長することができず、期待する時価総額に届かなさそうであれば延期するという選択肢もあります。上場には利害関係者も多く、経営陣の判断の通りに行くかは必ずしも限りません。

気になったのは、スペースマーケットがダウンラウンド(前回の調達時より時価総額が下回ること)での上場を決めた事です。同社が2018年にC種優先株を発行した際の株価は17.5万円で、これが300分割されて約583円となっていますが、仮条件では520円でした。最後の投資家は最初の段階から含み損を抱えることになります。

初期の投資家は十分に安い株価で取得しているため利益を得られる可能性は高いと思われますが、ダウンラウンドでもいいので、景気が良い内に上場させて換金しようという意向を邪推してしまいます。

上場ラッシュは続くか

今後も上場ラッシュは続くでしょうか? そうはならない可能性が高いと考えられます。スタートアップが活況な一方で、新規上場企業数自体は年間100件以下で推移している上、そのハードルは上がり続けています。M&A市場も活況で、上場よりもM&Aを選択する経営者も増えています。

ただ、それでも日本全国にある約420万社の企業のうち、上場企業はその0.1%に満たない約3700社という選ばれた企業の証です。その栄冠を目指す動きは今後も無くならず、上場を目指したチャレンジは続いていくことでしょう。

《編集部》

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