「ウォール・ストリート・ジャーナル」限られた読者層から脱却せよと訴える内部レポート…ただ提示されている戦略は陳腐?

「ウォール・ストリート・ジャーナル」(Wall Street Journal、WSJ)は1889年に創刊され、世界を代表する経済紙として、過去37回のピューリッツァー賞を受賞。購読者はデジタルと印刷版を合わせて300万人以上。デジタルのサブスクリプションも有料契約者が220万人を突破し…

メディア その他
<p>Photo by Cate Gillon/Getty Images</p>
  • <p>Photo by Cate Gillon/Getty Images</p>
  • 「ウォール・ストリート・ジャーナル」限られた読者層から脱却せよと訴える内部レポート…ただ提示されている戦略は陳腐?
  • 「ウォール・ストリート・ジャーナル」限られた読者層から脱却せよと訴える内部レポート…ただ提示されている戦略は陳腐?

「ウォール・ストリート・ジャーナル」(Wall Street Journal、WSJ)は1889年に創刊され、世界を代表する経済紙として、過去37回のピューリッツァー賞を受賞。購読者はデジタルと印刷版を合わせて300万人以上。デジタルのサブスクリプションも有料契約者が220万人を突破して成長を続けています。所有するのはダウ・ジョーンズ社で、2007年にルパード・マードックのニューズ・コーポレーションの傘下になりました。

論調は保守で共和党の主張に近く、気候変動の否定やトランプ大統領に好意的な姿勢などはリベラル派が強い米国メディアの中では異色です。しかし直近では、内部での対立の様子が度々伝えられるようになっています。

7月には280人の記者が署名して編集人に対して公開書簡を送付。ニュースとオピニオン(社説)を明確に分離するように求めました。書簡では「オピニオン欄の事実確認と透明性の欠如、明らかな事実に対する無視が、読者や情報源から信頼を得る努力を無にしている」と指摘。ペンス副大統領の寄稿で、新型コロナウイルスに「第二波はない」とする主張や、政府主張の数字をチェックなしに公開したと非難していました。

10月22日にはオピニオン欄が、「ニューヨーク・ポスト」が報じた大統領候補のバイデン氏の息子ハンター氏への疑惑を確認したと掲載したのに対して、同日にニュースコーナーではこの報道を否定する記事が掲載されました。

このような混乱状態の中、社内の有志が作成したとする、「WSJ DXS」と題した資料をBuzzFeedがリークしました。この資料は「ウォール・ストリート・ジャーナル」が印刷版の呪縛を引きずり、デジタルで光明を掴めていないと指摘。新しい読者を獲得しなければ未来はないと主張しています(PDFの全文)。

BuzzFeed NewsにリークされたWSJの内部レポート

一見、「ニューヨーク・タイムズ」の2014年の著名な「イノベーションレポート」のようで、的を射た指摘もありますが、今更? というような陳腐な戦略も提示されているようです。若干解説してみます。

優先すべきはコア読者ではなく若い新しい読者?


《Manabu Tsuchimoto》

関連タグ

Manabu Tsuchimoto

Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

特集