音声配信の”出口”を作っていく、Himalaya安CEO・・・メディア業界2021年の展望(6)

新型コロナウイルスによって平時と全く異なる一年となった2020年。みなさんにとってはいかがだったでしょうか? そして2021年に向けてどのような事を取り組んでいくのでしょうか? 今年もMedia Innovationで大変お世話になった皆様に今年の振り返りと来年への展望をお聞き…

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新型コロナウイルスによって平時と全く異なる一年となった2020年。みなさんにとってはいかがだったでしょうか? そして2021年に向けてどのような事を取り組んでいくのでしょうか? 今年もMedia Innovationで大変お世話になった皆様に今年の振り返りと来年への展望をお聞きました。「メディア業界2021年の展望」全ての記事を読む。

中国発の巨大音声プラットフォーム「Hiamalaya」の日本法人でCEOを務める安陽氏。急成長する音声マーケットをどのように捉えているのか、2021年の展望とは。今年は機会がありませんでしたので、来年はぜひまた取材させてもらえればと思っております。

安陽(An Yang)
シマラヤジャパン株式会社 CEO
1988年生まれ。2013年、中国外交部所属の唯一の大学である外交学院を修了。同年、日本のベンチャー企業クララオンラインの北京支社に入社。約3年間にわたって、数多くの日本企業の中国進出を支援。2016年、中国大手SNS企業Weibo(微博)の傘下企業である「微博動漫」の日本法人Weibo Comic株式会社を東京で立ち上げ、漫画、アニメ及び映画などに関する日中間のライセンシング及び共同制作などの事業を展開した。2018年10月、中国のユニコーン音声メディア企業「喜馬拉雅」の日本法人シマラヤジャパンのCEOに就任し、以来、日本における「新声活」の促進に鋭意努力中。

2020年はメディア業界にとってどのような年だったでしょうか?

音声業界に関して言えば、大きく飛躍した1年になったと思います。日本の音声市場でのキープレーヤーたちが相次いで資本調達に成功しており、これを契機にいよいよ業界の注目度が高まってきたという実感があります。

himalayaでも、2020年は音声配信のクリエイターやリスナーが大きく増加した1年となりました。たとえば、2020年の新規音声配信者数は昨年比460%超となっており、年度ごとの伸びとしてはサービス開始以来最高の数値を記録しました。

また、音声配信の習慣にも変化がありました。昨年までは週1~2回程度の更新頻度が一般的だったのが、今年は毎日更新するクリエイターが数百名単位で誕生しています。これにより、更新エピソード数ベースでは昨年比1,000%を超え、UGCはかつてない活況となりました。このことは、従来のラジオから派生した「音声を聴く文化」から、「音声を自ら発信する文化」が本格的に一般化してきたことを示していると言えるでしょう。

そして、2020年は新型コロナウイルスの影響にも触れないわけにはいきません。在宅時間が増えたことで可処分時間も増え、多くの世代で各メディアの利用時間が増えました。himalayaでは、こうした時間の有効な活用法として、オーディオブックの利用を提案しています。今年2月からオーディオブック聴き放題サービス「himalaya聴き放題」をスタートし、UGCだけでなく、こうした“プロコンテンツ”を聴く環境も整えることができました。

このようなことから、総じて2020年は音声メディアにとっては、チャンスとチャレンジが共存した1年となったのではないかと感じています。

これからのメディアに求められること、直面する課題はどういったことでしょうか?

前述のように音声配信クリエイターが急増した背景には、業界への期待があると考えています。「期待」とはつまり、「音声が将来的に、YouTubeのように配信によって収益を得るモデルを確立するだろう」という期待です。ただ、その「クリエイターの収益化」こそが2021年以降の音声業界における大きな課題の1つでもあります。

himalayaは日本の音声業界では他に先駆けて音声コンテンツによるマネタイズの仕組みを提供してきましたが、現在では多くのプラットフォームでも一般配信者のマネタイズができるようになってきています。その反面、明確に稼げるという段階までは、もう少し時間がかかりそうな状況です。

himalayaでは、こうしたクリエイターの“出口戦略”は、プラットフォーム内での収益だけではないと思っています。つまり、「himalayaから声のプロになる道をつくる」ことも1つの出口戦略です。たとえば、2020年に竹書房と共同で開催した「怪談最恐戦2020」では、受賞者に「プロ怪談朗読家」としてhimalayaがサポートしていく、という特典を付与しました。

このような出口をどんどんつくっていくことも、今後プラットフォームには求められていくのではないかと感じています。

2021年に取り組みたいと考えていることはどういったことでしょうか?

大きく分けると2つあります。1つめは、音声配信プラットフォームとしての使いやすさや面白さを追求していくことです。

そのために実施を検討しているのが以下です。

・一般クリエイターが、より簡単に音声で収益化できる仕組みを確立する

・LIVE配信機能やリクエスト機能など、配信を楽しめる機能を追加していく

・ユーザー参加型企画の実施

収益化にあたっては、有料コンテンツ販売を容易にする仕組みづくりのほか、音声広告の仕組みづくりも行っていきたいと考えています。他プラットフォームですでにスタートしているLIVE配信機能についてもhimalayaでお楽しみいただけるよう開発を検討していまおり、ここではギフト(投げ銭)によるマネタイズなどができるよう、調整を重ねていく予定です。また、前述の怪談企画のようなユーザー参加型企画も、2021年はより強化していきたいと考えています。

そして2つめが、プロコンテンツの強化です。

2020年にスタートした「himalaya聴き放題」は現在はオーディオブックがメインとなっています。今後も話題のタイトルを続々投入していく予定ですが、2021年はこれらに加えてhimalayaだけでしか聴けない良質な音声コンテンツをどんどん追加していきたいと考えています。

これまでも、himalayaだけの落語の聴き放題チャンネル『ひまらや落語』や、有名声優を起用したオリジナルラジオドラマ『THE LEAKS』、最先端の中国ビジネス情報を伝える『36Kr 深層チャイナ・イノベーション』など、ときには企業コラボレーションなども行いながら、各ジャンルで独自のコンテンツを展開してきました。2021年は、さらに規模・クオリティを上げて有料聴取にふさわしいコンテンツを制作・提供していき、さらに魅力的な音声コンテンツが聴けるプラットフォームを目指していきたいと思っています。

ユーザーによる音声配信だけでなく、たくさんのプロコンテンツを用意しているのがhimalayaの大きな強みです。「himalayaアプリを開けばあらゆる音声コンテンツが聴ける」と感じてもらえるような“総合音声プラットフォーム”として、業界でポジションを確立していけたらと思っております。

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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