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不透明な時代に団結するメディア人たち【Media Innovation Newsletter】5/16号

おはようございます。Media Innovationの土本です。今週の「Media Innovation Newsletter」をお届けします。

メディアの未来を一緒に考えるMedia Innovation Guildの会員向けのニュースレター「Media Innovation Newsletter」 では毎週、ここでしか読めないメディア業界の注目トピックスの解説や、人気記事を紹介していきます。ウェブでの閲覧やバックナンバーはこちらから

今週のテーマ解説 不透明な時代に団結するメディア人たち

新型コロナウイルスの感染拡大によるパンデミックは、メディア企業に大きな打撃を与え、ニューヨーク・タイムズは12月に3万7000の職が失われたと報じました。また、Poynterはコロンビア大学と共同で、どの地域で職が失われたかというマップを公開していますが、全国に広がっている事が分かります。

こうした前例のない事態に、メディアで働く人々は団結しようとしています。

メディア企業の労働組合で構成されているNewsGuild(もともと大恐慌の1933年に結成されて、2015年に名称をNewspaperGuildから変更した)や、Writers Guildに新規加入した組合員は2020年に1800人となり、大幅に増加したとAxiosが伝えています

企業単位での組合結成の動きも活発です。5月にはニューヨーク・デイリー・ニュースが55:3の圧倒的多数で組合を組織する事を決定。

4月にはニューヨーク・タイムズのエンジニアが650名で組合を結成(これはエンジニアの組合としてはグーグル親会社のアルファベットに次ぐ規模だとのこと)。また、同じく4月にはInsiderの300名以上の従業員が「Insider Union」を結成しました。3月にはメレディスの「PEOPLE」「Entertainment Weekly」などの従業員が組合を結成しました。

組合による行動も活発化しています。

ZiffDavisの「Mashable」「PC Mag」「Ask Men」などのメンバーで作る「ZiffDavis CreatorsGuild」は4月、会社がパンデミックの中でも高収益を挙げているにも関わらず給料への還元がないとして24時間のストライキを決行。雑誌「フォーチューン」のスタッフで作る組合も、会社が業績目標として、署名記事の数やトラフィック数を取り入れるという決定に反対して24時間のストライキを敢行しました。コンデナストでもストライキがありました

雑誌「ニューリパブリック」も4月、ニューヨークからワシントンDCへの移転計画を打ち出していましたが組合からの反対を受けて断念しました

待遇改善や多様性の促進を後押しする

NewsGuildの活動は活発です。

「シカゴ・トリビューン」などを発行するトリビューン・パブリッシングを、徹底した人員削減で悪名高い投資ファンドのアルデン・グローバルが買収しようとしている件では積極的な反対活動を展開。株主への書簡を2度に渡り公表し、トリビューンが十分な収益性があること、アルデンが買収に必要な現金を保有しておらず、トリビューン自身が買収されるための債務を負う事になる、と指摘しました

また、現在強く求められている男女間の賃金格差や多様性の確保についても積極的な活動を行っています。4月に公表した調査結果によれば、新聞社のガネットでは白人男性と、女性や有色人種では大きな賃金格差があり、30年勤務した男女では2万7026ドルもの格差があると指摘。「ジャーナリストとして20年間働いたにも関わらず、ほんの数年の経験しかない若い男性記者が私とほぼ同じ給料を受け取っている事を知って衝撃を覚えました」といった証言が飛び出しています。

新型コロナウイルスによるメディアの閉鎖やレイオフなどもNewsGuildはスプレッドシートでまとめています。これを受けて、議会に対してメディア企業を新型コロナウイルス対策支援の対象に含むように求めるロビー活動も行っています。

草の根の団結も

労働組合の結成のような組織だった行動だけでなく、個人レベルでの団結も見られます。

サブスタックでメディアやテクノロジーに関するニュースレターを発信する8人の作家は、共同で「Side Channel」と呼ばれるDiscordチャンネルを開設しました。それぞれのサブスクリプションに契約している読者限定の会話の場ですが、横の繋がりによって、団結することでより価値を高めていこうという取り組みです。

同じくニュースレターでは「Every」という13のニュースレターをバンドルして月4ドルで提供するという取り組みもあります。テクノロジーやスタートアップに精通する数名のジャーナリストが制作するもので、75万人の無料会員と、2400人の有料読者を抱えているということです。クリエイターエコノミーと言われますが、とはいっても個人だけで戦うのは大変、ということでこうした取り組みには意味がありそうです。

興味深いところでは全米映画俳優組合がYouTubeやInstagram、TikTokなどで活動しているクリエイターやインフルエンサーも加入できるようにしたというニュースがありました。影響力はあるものの個人ということで企業との交渉事では不利に立たされるケースもあったということですが、そうした際の後ろ盾になる可能性もあります。

◆ ◆ ◆

昨年からメディア企業における組合結成の動きは非常に活性化していて、他にも様々な例がありましたが、簡単に状況をまとめてみました。日本ではここまでの過酷な落ち込みはみられていませんが、業界全体としての結束は重要になってくるのではないでしょうか。

今週の人気記事から 音声サービスの機能充実が続々

世界的に音声サービスの拡大が続いています。FacebookやTwitterなどのプラットフォームが競うように音声機能を拡充していますが、音声専門のサービスも負けてはいません。ClubhouseがAndroidでのβ版を遂に開始したほか、韓国初のSpoonは会員制のファンクラブ機能を追加、国産のstand.fmでは有料配信ができるようになりました。

AirPodsなどのヒアラブルデバイスの進化、ポッドキャストの活況によるコンテンツの増加などを背景に、音声でコンテンツに触れる人は年々増えています。パブリッシャーが音声でのコンテンツを提供する例も増えています。これからも目が離せない領域になりそうです。

1.音声配信アプリSpoon、会員制ファンクラブ機能『メンバーズ』を開始・・・メンバーズ限定配信が可能に

2.音声配信プラットフォーム「stand.fm」、有料チャンネル購読者限定のライブ機能を公開

3.インフォバーン新社長に田中準也氏が就任・・・インフォバーングループ役員人事

4.カカクコムの通期、コロナ影響で減収減益・・・EC利用拡大は追い風

5.インプレス、FMラジオ局InterFM897に出資・・・新たなファンコミュニティの創造を目指す

6.スマートメディアがEC事業者向けオウンドメディア構築ツール「Clipkit for EC」β版リリース

7.インタースペースの上期業績、学習塾の「塾シル」が単月黒字化

8.SCSK、マイクロアドと資本・業務提携を実施・・・オムニチャネル時代のDX支援事業を共同推進

9.スマートニュース「新型コロナワクチンチャンネル」開設1か月で利用者200万人突破…接種時期の通知や接種施設のマップ表示

10.Mediplat、講談社に寄稿する漫画家にオンライン医療相談サービスを提供

会員限定記事から C Channelは復活できるか?

元LINE社長の森川氏が立ち上げたC Channelが苦戦を続けているようです。同社はTokyo Pro Marketに上場しましたが、決算資料をもとに分析を試みました。

F1層に訴求する動画コンテンツと、コマースによって成長を目指してきましたが、赤字が続いている同社。コマースは売上は伸ばせるものの、原価率が高く、利益が確保できてない様子が明らかにされています。今後はインフルエンサープラットフォームとして成長を目指すようですが、競争も激しい領域です。果たしてどのような結果になるのでしょうか?

1.赤字が続くC Channel、インフルエンサープラットフォームで大逆転できるか

2.iOS14.5のデータ追跡許可率調査…世界では11~13%、米国では4~5%

3.米国の新聞、2027年までに電子版の割合が印刷版を上回ると予測

4.Piano、サブスクリプション戦略のためのベンチマークレポート第一弾を発表・・・無料トライアル実施は減少傾向、休眠顧客は平均で40%

5.ニュースパブリッシャーがサブスクユーザー引き留めのためにすべきこと・・・解約間際のユーザー特定と加入初期のオファーがカギ

6.Google、2022年第2四半期以降「Google Play」ストア上の全アプリに対し、ユーザーデータの収集に関するルールを厳格化へ。

7.「母親」はどうデジタルメディアに接触している?2021年度はスマートスピーカー所有が10%増加、SNS利用率は93%に

8.Facebook、台湾で音声サービスの運用テストを開始・・・音声クリップの投稿や「Clubhouse」類似機能

9.スポーツ報道における新型コロナウイルスの影響、アクセス制限は何をもたらすか?

10.Facebook、「本文を読まずにニュース共有すると警告する機能」の試験運用開始・・・Twitterも同様の取り組み

編集部からひとこと

東京オリンピックの開幕まで残り2ヶ月余りと聞いて、あまり実感が無かったのですが、もうすぐのところまで迫ってきている事を感じました。ただ、東京は未だ緊急事態宣言の中で、全国的にも宣言がされる地域が増えているという非常に厳しい状況で、これからどうなるのでしょうか。

ここにきて、ソフトバンクの孫さんや、楽天の三木谷さんが海外メディアに対して開催を不安視する声を伝えています。ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなども延期を呼びかける社説を掲載していて、外堀が埋められていっている感があります。

個人的にも、もう1年の延期が現実的な選択で、中止や、感染拡大の中での強行は、今後のオリンピックとしても大きなダメージを負う結果になるのではないかと危惧しますが、いずれにせよ、2ヶ月後ということですので、早めの政治的決断が求められているように思います。

ただし、オリンピック需要を見込んでいたメディア各社にとっては厳しい結果になる可能性があります。こちらも早めのダメージコントロールが必要でしょう。

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【5月6日更新】メディアのサブスクリプションを学ぶための記事まとめ

デジタルメディアの生き残りを賭けた戦略の中で世界的に注目を集めているサブスクリプション。月額の有料購読をしてもらい、会員IDを軸に読者との長期的な関係を構築。ウェブのコンテンツだけでなく、ポッドキャストやニュースレター、オンライン/オフラインのイベント事業などメディアの立体的なビジネスモデルをサブスクリプションを中核に組み立てていく流れもあります。

【5月6日更新】音声メディア(ポッドキャスト)の最新動向を学ぶための記事まとめ

ポッドキャストに代表される音声コンテンツは、特に...

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ニュースよりポッドキャストに支払う意向の若者たち【Media Innovation Newsletter】6/13号

ポッドキャストへの注目が高まるばかりですが、これまで主流だった広告モデルに加えて、有料のユーザー課金モデルも立ち上がっていきそうな気配です。

お知らせ

Manabu Tsuchimoto
Manabu Tsuchimoto
デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。

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