米上院の超党派グループは、ローカルニュースを税控除(クレジット)により財政的に支援する法案「The Local Journalism Sustainability Act(ローカルジャーナリズムサステナビリティ法)」を提出しました。「購読料クレジット」「報酬クレジット」「広告料クレジット」の3種類の税控除を活用する意向を示しています。
ローカルニュースを支援する法案の内容
同法案の適用対象は、新聞、デジタルメディア、テレビ・ラジオ局を発行・運営するローカルニュースです。新型コロナウイルスのパンデミックの際に、ローカルニュースは信頼性のある情報源となった一方で、パンデミックやテック企業の不正行為による収入減の影響で、経済的に危機的な状況にあるとしています。
そこで、同法案では次の3種類の税控除を提案しました。
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ローカルニュース購読料クレジット
地方紙を購読したり、地方の非営利団体に寄付したりすることを奨励するためのクレジットです。
・毎年250ドルを上限とした5年間のクレジット
・初年度は購読料の80%、次年度以降4年間は50%が控除対象。上限である250ドルの控除を受けるには、初年度に312.50ドル以上、次の4年間はそれぞれ500ドル以上の支払いが必要となる
・クレジットは、非営利のローカルニュースパブリッシャーへの寄付に使用できる
ローカルニュースジャーナリストの報酬クレジット
新聞社、地域のデジタルメディア、非営利団体の報道局、民間・公共放送局は、報道内容を向上させるために、より多くのローカルニュースジャーナリストを雇用できるようになります。
・初年度はジャーナリスト1人当たり最大2万5,000ドル、その後4年間は最大1万5,000ドルを5年間にわたって控除する
・初年度は5万ドルまでの報酬の50%、次年度以降4年間は5万ドルまでの報酬の30%が控除の対象となる
・四半期あたり100時間以上の勤務時間を満たすジャーナリストのみ対象となる
地方紙・ローカルメディア広告クレジット
中小企業が地方紙やローカルメディアに広告を掲載する際の経済的負担を軽減するためのクレジットです。
・初年度は最大5,000ドル、次年度以降4年間は最大2,500ドルまでの5年間のクレジット
・初年度は広告費の80%、次年度以降4年間は50%がクレジットの対象となる
・地方のテレビ・ラジオ局に加え、地方紙、地方のデジタルメディア、非営利の報道機関にも利用できるなど柔軟な対応を特徴とする
ローカルニュースを税控除で支援する必要性
科学、歴史、アート、文化などあらゆる分野のニュースを報道するデジタルメディア「GBH News」によると、同法案の対象は、下院案では従業員数750人以下、上院案では1,000人以下と小規模な報道機関に限定されるとのことです。
GBH Newsの寄稿者であるDan Kennedy氏は、超党派が提出した同法案は政府が直接支援するのではなく、税控除するものであるため、ジャーナリストの独立性に影響を与えるような事態も避けられる、と同法案の必要性を強調しました。
これまでには政府がローカルニュースに直接寄付したり、新興ローカルニュースへの支援を呼びかけたりする活動も見られたようです。しかし、一部の専門家は「このような活動が部分的な解決策になったとしても、政府がジャーナリズムに資金を提供することの大きな危険性を示している」と述べ、ローカルニュースの支援方法によっては、政治活動に影響を与える可能性もはらんでいることを示唆しています。
Rebuild Local Newsが同法案を支持
アメリカの3,000以上のローカルニュースから成る連合「Rebuild Local News」は、同法案を支持することを発表し、同連合の議長を務めるSteven Waldman氏は次のように語っています。
「この法案は、ローカルニュースの衰退に対処し、地域社会を強化するための非常に重要なステップです。ローカルニュースが衰退すると、地域社会の衰弱、不正行為、環境汚染、格差の広がりにつながります。ローカルニュースを強化すれば、市民がニュースに興味を持ち、地域の問題を解決する能力が高まります。この超党派の法案により、消費者、中小企業、ローカルパブリッシャーに権限を与えることができ、ジャーナリストの独立性を損なわずにより良いローカルニュースを生み出すことにつながるでしょう」
18もの連合メンバーが同法案を支持しており、そのなかには全米アフリカ系アメリカ人新聞協会(NNPA)や、北米最大のジャーナリストとメディア労働者の組合であるThe NewsGuild-CWAなどが含まれるとのことです。広告収益に頼らない事業モデルの確立が急務となっているローカルニュースにとって、同法案は有益なものとなるのではないでし