ローカルニュースに特化したAIによる自動生成ニュースサイト「LocalLens」は地方ジャーナリズムの起点になるか?

米ニュージャージー州LocalLensは、地方自治体の報道を自動的に生成するニュースサイトです。

メディア デジタルメディア
ローカルニュースに特化したAIによる自動生成ニュースサイト「LocalLens」は地方ジャーナリズムの起点になるか?

米ニュージャージー州のLocalLensは、地方自治体の報道を自動的に生成するニュースサイトです。

アレンデール教育委員会のマット・ヘルナンデス氏は、大規模言語処理モデル (LLM)技術と州政府の公開情報を組み合わせ、州政府や地方自治体の情報の可視性を高め、地方ジャーナリズムの起点となることを目指して、このサイトを立ち上げました。

発想は悪くないと思うのですが、ローカル紙の記者(ジョー・アムディティス氏・協同メディアセンター)からは疑問が噴出しています。例えば、重要なジャーナリズムやニュース記事を作るのに、本当に機械に頼ることができるのだろうか?また、そうすべきなのか?AIは本当に、ローカルニュースの骨格となる人間の生活のニュアンスや地域色を捉えることができるのか?これは本当にローカル・ジャーナリズムの未来なのか?という具合です。無論、答えはノーです。

しかし、LocalLensのOur Mission(“民主主義が機能しているのは、それが目に見えるときだけだ”という標題)のページには、LocalLensのゴールは 地域民主主義の民主化であり、新しいテクノロジーを活用し、すべてのコミュニティのすべてのアメリカ人が地方政府の仕事にアクセスできるようにすることだと理想が書かれています。また、LocalLensの最終的な目標は、アメリカのすべてのコミュニティで起きていることをカバーすることであり、自分の町だけでなく、全国の地域コミュニティで起きていることを知るのに役立つことだとしています。

ただし、このページでは、"このようなボット主導の報道は "綿密な地元報道の代わりにはならない "と明言しています。つまり、州政府の資料をAIに読み込ませて、ウェブにレイアウトはするが編集も修正もしないし、議論喚起も求めないのです。ただ単に、大量に記者が解雇され、"すべての地域の会議に出席するために手薄になっている地元のジャーナリストのためのリソースとして機能することにより、ローカルニュースを可能にするインフラの一部となること "を目指しているのだということです。

ジョー・アムディティス氏の疑問は、このサイトの予算はどこから来たのか?ということです。なるほど、501(c)のNPOが運営していると記載されていますが、完全AI駆動のウェブサイトのメンテナンスやサーバの費用は広告で賄うのでしょうか?

しかし、ローカルニュース紙がなくなった地域にこれがあれば少しでも役に立つだろうという発想にはなかなか同意し難いものがありますが、ニュース砂漠になったエリアにAIだけでなく、一人でもジャーナリストが雇えるなら、もっと人間味のあるサイトになるかも知れません。

今後の展望・展開に期待したいと思います。

《前田邦宏》

関連タグ

前田邦宏

前田邦宏

メディアイノベーション見習いスタッフ。海外調査の最新動向を担当。分野を問わず、調べ物が好き。

特集