企業がメディア化する時代に。「ナラティブを描けるメディア、人に勝機」・・・PIVOT 竹下隆一郎氏インタビュー

Media Innovationの8月特集は「メディア業界のキャリア、これからどうなる?」をテーマに、業界のトップを走る皆さんが考えるこれからのキャリアについて聞きました。8月31日(火)にはイベントも開催予定です。奮ってご参加ください。 メディアの最前線で活躍されている方…

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企業がメディア化する時代に。「ナラティブを描けるメディア、人に勝機」・・・PIVOT 竹下隆一郎氏インタビュー
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Media Innovationの8月特集は「メディア業界のキャリア、これからどうなる?」をテーマに、業界のトップを走る皆さんが考えるこれからのキャリアについて聞きました。8月31日(火)にはイベントも開催予定です。奮ってご参加ください。

メディアの最前線で活躍されている方々が、どのようにキャリアチェンジを図ってきたのかをお聞きする本企画、元「ハフポスト日本版」編集長で現PIVOT株式会社 チーフSDGsエディター兼執行役員の竹下隆一郎氏(9月9日に『SDGsがひらくビジネス新時代』発売予定)にお話を伺います。

竹下氏は日本の伝統的なメディアの朝日新聞社の記者→外資系ウェブメディアのハフポスト編集長→コンテンツ系スタートアップのPIVOT創業メンバーと日本では珍しいキャリアを歩んでいます。記者を志したきっかけから竹下さんの現在地についてのキャリアパスのほか、今後メディアの役割はどのように変化していくのか、そこに関わる人が持つべきスキルや方針についてもお話しいただきました。

竹下隆一郎
PIVOT チーフSDGsエディター / 執行役員
朝日新聞経済部記者、スタンフォード大学客員研究員、ハフポスト日本版編集長を経て、就任。アメリカのニューメキシコ州やコネチカット州で育った。世界経済フォーラム(通称:ダボス会議)メディアリーダー。英語名はRyan(ライアン)。2008年5月に4ヶ月の育児休業を取得。子どもの弁当づくりが趣味。2021年9月9日に、『SDGsがひらくビジネス新時代』(ちくま新書)を発売予定。

ストーリーを伝えれば社会が動く。メディアの可能性に気づいた新聞社時代

―――朝日新聞社に入社されたきっかけは何だったのでしょうか?

私は中学校の途中までアメリカに住んでいたのですが、小学校の時に現地で差別的扱いを受けていました。同級生が日本人のステレオタイプの細い目を表すジェスチャーで揶揄して来たこともあったのですが、その反論として日本人は始業の時に先生にお辞儀をし、トイレ掃除も自分たちで行う、違いはあるけどその背景には様々な文化がある、という内容の文章を現地の新聞に投稿したんです。その時に、ストーリーを語れば世間や人の意識が変わり、行動も変わるという体験をしたことが大きかったですね。

初任地は九州地方で、宮崎県と佐賀県などを回り経済部、金融庁などの取材を経験しました。佐賀は市内に恵比寿像が400体くらいある土地なんですが、400体全部を市民が取材し発表するプロジェクトチームをつくったんです。市や銀行や旅行会社も参加して宝くじツアーがつくられたり、最終的に本にもなりました。プロデューサー的立場でプロジェクトをつくれば、人を巻き込み世の中に新しい動きを生み出せることを実感しました。記者3、4年目の頃です。

その後、朝日新聞メディアラボに社内公募で立候補し、新規事業や投資先を考える部署に配属されました。当時からテレビや新聞など旧来型メディアの機能は衰退していくと考えていたので、メディアの可能性を証明し業界を変えたいという思いもありました。

―――メディアラボで具体的に取り組まれていたことは?

大きく2つあり、ひとつはクラウドファンディングサイトの立ち上げです。クラウドファンディングのポイントは「何のためにこのビジネスを立ち上げるのか」という“ストーリー”を語り共感を生むことですが、記者の仕事と同じなんですね。この時、ストーリーを伝えるのはメディアにいる人が一番得意とするところなので、他の分野に活かせば大きな可能性があるのではと気づきました。

2つ目は、学びのオンラインコミュニティの「スクー」との連携です。メディアの未来を考えるプロジェクトに携わり、報道だけでなく、教育という機能が大事ではないかという観点で記者がオンライン授業の講師を務めました。最近、朝日新聞は記者サロンという「オンラインイベント」をやっていますが、記者が表に出て語ったり、インタビューをライブで行ったりしていますよね。メディアラボに行ったことで、メディアの機能を広く捉え直せば大きなニーズが生まれ、雇用も増やせるという世界観に出会えました。

―――その後1年間スタンフォードにビジネス留学をなさっていたとか。

記者を12~13年ほど経験した後に、客員研究員としてスタンフォードへ行きました。現地では「AIが編集長になったらメディアはどうなるか」という大きなテーマを掲げ、企業に話を聞きに行ったりビジネススクールの授業に出席したりしていましたね。帰国後は、良い記事を定義しAIに学習させればデスクが不要になるのではないかという仮説を立て、「人工知能とメディア」という観点から機械学習の研究を東北大学と行っていました。

ハフポストでビジネスモデルを変革し、起業とSDGsの融合目指しPIVOTへ


《小田恵》

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小田恵

小田恵

フリーランス編集者/ライター。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン科卒業後、デザイナーとして広告代理店に勤務したのち、編集プロダクション、駐在員および帯同家族向けの情報誌を発行する海外メディアに編集者として勤務。現在は中小企業経営者や女性自立支援団体へのインタビューを手がけながら、企業の新サービス提供のためのコンテンツ視覚化の手引きもなども行う。

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