米国ワシントンDCの地方新聞でありながら、米国の首都という立地を活かして、世界的な影響力を持つメディアとなっているワシントン・ポスト。ただ2010年代前半は経営危機にあり、創業一族からアマゾン創業者のジェフ・ベゾスが買収する事になります。ベゾスはワシントン・ポスト社のデジタルトランスフォーメーションを実現しましたが、その中核となったのがCMSでした。
ワシントン・ポスト社は「ArcXP」(当時の名称はArc Publishing)の開発に優秀なエンジニアを採用し、リソースを投下してきました。そして社内で活用するだけでなく、世界中のパブリッシャーに対して提供をするようになり、今では世界28か国2000サイトへの採用実績があるといいます。その「ArcXP」を日本国内で取り扱っているのが博報堂DYグループのデジタル領域の中核企業であるデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)です。
同社が取り扱いを始めた狙いや、「ArcXP」の強み、パブリッシャーが今後考えるべき方向性について聞きました。
目次
ワシントン・ポスト社発、企業のデジタル資産を一元管理するプラットフォーム「Arc XP」
―――始めに皆様の自己紹介をお願いします。
砂田氏(以下、砂田):出版や広告の制作を10年手がけた後にDACへ入社し、パブリッシャー領域の担当を経て2021年4月からプログラマティック広告と販促ソリューションの開発を担う部署の本部長を務めています。2016年にArc XP(以下、Arc)に出会い、日本導入への手引きを行ないました。
竹内氏(以下、竹内):私は2022年3月までRTBのテクノロジーのベンチャーにいたのですが、以前からDACのソリューションビジネスアドバイザーという形で、Arcのビジネス推進プロジェクトにも関わっていました。4月にDACに転籍し、パブリッシャーの営業サイドのディレクターも手がけながらArcを管轄する開発部門の部署長を務めています。
渡田氏(以下、渡田):2019年にDACに入社して以来、メディアセクションの担当をしています。2021年からArcプロジェクトに関わり、Arcの営業を担当しています。また、Arcだけでなく、パブリッシャーの課題解決に寄与するソリューションの提供、広告商品の設計サポートなども行っています。
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―――砂田さんがArcを日本に導入されたのは、どのような経緯だったのでしょうか。
砂田:パブリッシャー向けのソリューション提供は以前からDACの方針としてあり、アドサーバー開発なども進めていました。ただ、グーグルアドマネージャーが無償で導入できる状況もあってアドテク領域での差別化には限界があると感じていました。
そこでコンテンツ領域にも足を踏み入れ始めたのですが、同時期にDAC内部ではLINEの公式アカウント用CMSも開発、提供していました。CMSの重要性が増していくことが予想される中で、SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)でワシントン・ポスト社がパブリッシャー向けの基幹業務管理システムを作っている話を聞き、急遽ワシントンDCに飛んで交渉を開始し、2019年に日本国内での販売を開始したのが経緯となります。
―――Arcに接触した時の第一印象はいかがでしたか。
砂田:思想が素晴らしいと思いました。AWSの上につくられるまったく新しいメディアプラットフォームであることや、一つのソースでグローバルに展開できるクラウド型CMSであるということもです。ワシントン・ポスト社は導入パブリッシャーを定期的にカンファレンスに招き、意見を募ってどんどんアップデートしていくので、Arcを導入すれば世界中のパブリッシャーが必要としているものが自動的にアップグレードされていく。クラウド型CMSならではの発想であり、実現できている唯一のものだと思います。
グローバルCMSは他にもありますが、一パブリッシャーのためにつくられたものは日本独自のUXに合いづらいという話を聞いていました。一方Arcはエンドユーザーが複数いることを前提に開発されており、アジャストメントが非常に高いです。国内導入に際し、表現の日本語化と校正・校閲ツールを追加し、独自にカスタマイズしています。
――Arcの導入にはどのようなメリットがあるのでしょうか?