「ダイヤモンド」のデジタル変革はいかにして達成されたか、山口編集長に聞く

Media InnovationはメディアのDXについて考える「Media DX Conference 2022」を10月14日に開催します。本イベントに登壇する、ダイヤモンド社で「ダイヤモンド」の編集長を務める山口圭介氏にいかにしてデジタル変革を成し遂げたのか聞きました。イベントの詳細はこちらから(入場無料)

創刊から100年を超える老舗の経済・ビジネス雑誌「週刊ダイヤモンド」。デジタルでは「ダイヤモンド・オンライン」を展開してきましたが、以前の広告ビジネスから有料サブスクリプションに大転換。雑誌とオンラインの編集部も統合し、デジタルファーストに舵を切りました。

ダイヤモンド社はいかにしてこの大転換を成し遂げたのか、今後どのような展開を考えているのか。雑誌とデジタルを束ねるダイヤモンド編集部 編集長の山口圭介氏にお話を聞きました。

山口 圭介
株式会社ダイヤモンド社 ダイヤモンド編集部 編集長
ダイヤモンド・オンライン&週刊ダイヤモンド編集長。早稲田大学卒業後、2004年に産経新聞社入社。08年にダイヤモンド社に転職、週刊ダイヤモンドの記者となり、商社、銀行を担当。12年より金融・政治担当の副編集長、18年からダイヤモンド・オンラインとの兼任副編集長。19年4月より現職。編集部のDXを推進。主な担当特集に「経済ニュースを疑え」「孫正義が知らないソフトバンク」「AI格差」など。

―――まずご経歴を教えてください

銀座でバーテンダーを5年やったりして、色々と遠回りして2004年、26歳の時に産経新聞に入社しました。最初は社会部の多摩支局に配属されて警視庁捜査一課担当の下できたえられました。その後、仙台の東北総局で東北6総支局の事件キャップとして、東北中の事件を仕切ることになりました。ただ、私は元々経済部志望だったこともあり、このままだと事件担当で東京に戻ってしまうとの危機感もあって、定期購読していた週刊ダイヤモンドに転職しました。

08年にダイヤモンド編集部に加入してからは、商社や銀行を担当して、12年に金融担当の副編集長になりました。18年にはダイヤモンド・オンラインも兼任した副編集長という立場になって、通常のデスク業務から離れて、デジタル変革のプロジェクト専任として、どうやってデジタルのサブスクリプションを立ち上げていくか、というチャレンジを始め、19年4月、雑誌とデジタルを統合したダイヤモンド編集部の編集長として実際に改革を進めています。

―――デジタル変革という観点で課題だったのはどういった事だったのでしょうか?

一つはミッションが異なる2つの編集部が並立していたことです。週刊ダイヤモンド編集部とダイヤモンド・オンライン編集部。両編集部は融合を進めてデジタル化を進めているという立て付けでしたが、前者は記者集団が作るコンテンツを最大限活かして雑誌の部数を追うモデルです。後者のオンラインは広くPVを集めて広告収入を得るモデルでした。同じ「ダイヤモンド」というブランドを冠した編集部でしたが、ミッションは大きく異なりました。別々の編集部でのデジタル改革は難しいという結論が出ました。

―――「ダイヤモンド」のデジタル変革は編集部の統合が大きな鍵になったそうですね

その通りです。雑誌とオンラインの編集部を統合して、その中でリソースを最適化しました。また、記事の入稿フローもデジタル中心に解体的に見直しました。全てのコンテンツをオンラインで先に記事を掲載して、それを再パッケージ化して雑誌に掲載する、というような退路を断つ転換も行いました。編集体制もデータドリブンになり、記事の書き方自体もオンラインに最適化した文体に日々アップデートしています。

重要だったのは成功体験を捨てることです。自分はある意味、そこに躊躇のない性格だったのかもしれません。新聞社から雑誌社に転職したときもそうですし、記者から副編集長、副編集長から編集長と、実際にはジョブチェンジするくらいの違いがあって、過去の経験を捨てるくらいでないと、なかなか前に進めません。それをむしろ楽しむくらいがちょうどいいのかもしれません。

また、編集部のこうした変化を経営層が強力に後押ししてくれた事。そして何より、働き方が劇的に変化する中にあって、編集部の記者、編集者がタブーなしに柔軟に前向きに試行錯誤を繰り返してくれた事が大きかったです。

引き込まれる記事で埋め尽くされているダイヤモンド・オンラインのトップページ

―――ダイヤモンド社は会社全体としてデジタルシフトを推し進めている印象があります

私の直属の上司であるビジネスメディア局の局長はダイヤモンド社と外資系通信社を行き来してデジタルに対して深い知見を持っているし、経営トップもデジタル変革の必要性を理解して牽引してくれました。この数年間はCTOを採用するなど、外部から積極的にデジタル人材を採用してきました。これも経営の意思の現れだと思います。

―――これから「ダイヤモンド・オンライン」はどのような進化を続けていくでしょうか?

新たに始めた有料サービスのダイヤモンドプレミアムを軌道に乗せたという点で、「ゼロからイチ」を作ることには成功したと思います。ここでしか読めないコンテンツに徹底的にこだわって、課金の壁を乗り越える仕組みできました。ただ、まだまだやれることはあります。これからは「イチをジュウ」にするフェーズ。直近は読者にコンテンツをどう届けるかという点で、副編集長が中心になってさまざまな改革を進めてくれていますし、動画コンテンツにも力を注いでいます。書籍が読めるコーナーも拡充をしていますし、法人会員も今後の重点領域です。やるべきことは山積しています。

―――デジタル時代の「ダイヤモンド」ブランドはどうなっていくのでしょうか?

近年、ハレーションが起きそうなタッチーな問題に切り込めるメディアが少なくなってきました。「ダイヤモンド」は公平中立に、忖度なしに報じられるメディアとしての地位を確立していきたい。また、ビジネスパーソン自身の成長を支えるような存在になっていきたい。経済の本質に切り込むと同時に、個人のスキルアップにもつながるコンテンツやサービスも提供していければと思っています。

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Media DX Conference 2022 sponsored by pasture

・主催 Media Innovation (株式会社イード)
・協賛 pasture (エン・ジャパン株式会社)
・日時 2022年10月14日(金) 14:00~17:00 @ オンライン開催
・参加費 無料(要事前登録)
・会場 Zoomによるオンライン開催

当日のスケジュールや登壇者のプロフィールなどは特設サイトをご覧ください。

※参加にはMedia Innovationの会員登録(無料)が必要です

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【12月6日更新】メディアのサブスクリプションを学ぶための記事まとめ

デジタルメディアの生き残りを賭けた戦略の中で世界的に注目を集めているサブスクリプション。月額の有料購読をしてもらい、会員IDを軸に読者との長期的な関係を構築。ウェブのコンテンツだけでなく、ポッドキャストやニュースレター、オンライン/オフラインのイベント事業などメディアの立体的なビジネスモデルをサブスクリプションを中核に組み立てていく流れもあります。

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Manabu Tsuchimoto
Manabu Tsuchimoto
デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。

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