2034年にはクリエイターの市場規模が10兆円に拡大の見込み クリエイターエコノミー協会が国内初の調査結果を発表

一般社団法人クリエイターエコノミー協会と、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が共同で、国内のクリエイターエコノミーに関する調査結果を発表しました。 調査実施の背景として、近年デジタルコンテンツの提供やグッズやスキルの販売など、クリエイターの活躍…

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2034年にはクリエイターの市場規模が10兆円に拡大の見込み クリエイターエコノミー協会が国内初の調査結果を発表

一般社団法人クリエイターエコノミー協会と、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が共同で、国内のクリエイターエコノミーに関する調査結果を発表しました。

調査実施の背景として、近年デジタルコンテンツの提供やグッズやスキルの販売など、クリエイターの活躍の場の広がりにあわせてクリエイターの活動を支援するサービスも登場し、「クリエイターエコノミー」が拡大しています。今回の調査では国内の市場規模、クリエイターの収益状況や見えてきた課題、今後の成長予測について考察しています。

調査結果では、国内クリエイターエコノミーの市場規模は1兆3,574億円になったとしており、2021年に実施された海外の調査で、世界のクリエイターエコノミーの市場規模は約1,042億ドル(約15.1兆円)と推計されたことから、国内クリエイターエコノミーがその約1割に相当するとしています。

<図表1 クリエイターエコノミーの市場規模>

(注)1ドル=145円で算出(出典)三菱UFJリサーチ&コンサルティング

<図表2 クリエイターエコノミーの市場規模算出の考え方>

(出典)三菱UFJリサーチ&コンサルティング

拡大の要因として、多様なプラットフォーム・収益化手法の登場によってクリエイター個々のスキルや志向に沿った活動が行いやすくなったとしており、政府の働き方改革の一環で副業・兼業などの多様な働き方の推進で、副業クリエイター活動の増加したことも考えられるとしています。コロナ禍での可処分時間の増加もクリエイター活動を始めるきっかけになっており、消費者のコンテンツ消費量が増加し、市場拡大を押し上げたとしています。

クリエイター活動をとりまく環境にも変化が見られます。初期は幅広い消費者の関心を集め、コンテンツに紐づく広告で収益をあげるケースが多く見られました。その後、モノやコンテンツ、スキルをクリエイターが直接販売できる収益モデルが登場。最近ではクリエイター個人がサブスクリプションを簡単に提供できるサービスや、ファンと交流できるコミュニティサービスなどの登場で、クリエイター個人の活動への「サポート」として収入が得られるようになっています。

多くのファンを抱えるクリエイターの中には、ブログの執筆からクリエイター活動を開始し、現在では動画、音声、イラスト等の異なるコンテンツでも収入を得るなど、活動内容を広げています。クリエイターと消費者とのタッチポイントが増加し、自身について深く知ってもらうことでファンとのつながりを深めたと考えられます。消費者にとっては、SNSやライブ配信の普及で、以前に比べて「推し」の対象を見出しやすい環境となっています。

<図表3 クリエイター活動の変化>

(出典)三菱UFJリサーチ&コンサルティング

15~69歳の男女のうち、クリエイターとして活動している人の割合は10%で、この数値を基に推計すると、趣味として活動している人を含む国内のクリエイター数は、約822万人となります。

活動のきっかけは「自分の創作した物・サービスを発信したかった」が65%と最も多く、収入を目的としているケースも半数弱あるものの、自身の趣味や特技の延長で活動を開始し、結果的に収益につながっているクリエイターも相応に存在すると考えられます。

<図表4 クリエイター活動を開始したきっかけ>

(出典)三菱UFJリサーチ&コンサルティング

収益状況では約6割のクリエイターが収入を得ており、収入ゼロのクリエイターを含めた平均収入は12.8万円/月、100万円/月を超える収入を得ているクリエイターも2%存在しています。

<図表5 クリエイターの収入分布>

(出典)三菱UFJリサーチ&コンサルティング

専業・副業別の収入有無では、専業クリエイターのうち半数近くが20万円/月以上の収入を得ています。副業クリエイターの64%、収入を目的としていないクリエイターの29%が収入を得ており、副業・趣味でも数万円の収入を得ることができています。

<図表6 専業/兼業別のクリエイターの収入有無>

(出典)三菱UFJリサーチ&コンサルティング

一方、クリエイター活動での収益化や資金獲得、活動時間の捻出などの課題も見えてきました。お金を払ってでも解決したい課題として「法律や税金等の事務処理」「個人での企業交渉」「トラブル対応」など、オペレーション面の課題が上位を占め、クリエイターの4人に1人が誹謗中傷を受けた経験があることもわかりました。

<図表7 クリエイター活動を行う上での課題と、そのうちお金を払ってでも解決したい課題>

(出典)三菱UFJリサーチ&コンサルティング

現時点での国内の潜在クリエイターは推計2,200万人、現在クリエイターとして活動する人と合わせると、3,000万人を上回ります。今後も同程度のペースで推移した場合、市場規模は2034年に10兆円を上回ると試算されます。

<図表8 クリエイターエコノミー市場規模の将来予測>

(出典)三菱UFJリサーチ&コンサルティング

クリエイターエコノミーは日本経済の成長のエンジンとなる可能性がある一方、個人ないし小規模のグループで活動することが多いクリエイターはトラブルの対処や企業との契約、著作権、税務等に関する知識が十分ではなく、それらが活動の妨げとなる懸念もあります。

誹謗中傷問題への対処なども含め、規制の緩和や法律の整備等によって社会環境を整えるなどの包括的サポートが必要で、行政、業界が一丸となることで、さらなる市場成長を実現することができるとしています。

【調査概要】

《Nakashima Takeharu》

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Nakashima Takeharu

「佐賀経済新聞」編集長。県内で開催のアジア最大級の熱気球大会では広報・メディア対応とネットコミュニケーションを担当。

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