メディアは事業会社化、拡大ありきではない会社に二極化する・・・電通 シニア・ビジネス・プロデューサー片山 智弘 氏に聞く

「デジタルメディアに挑戦する人々の学びの場」としてMedia Innovation Academyを開設いたしました。7月18日(木)にメディアの「マネタイズ」「運用」「新規事業」をテーマとしたイベントを開催いたします。 登壇者でもある株式会社電通 シニア・ビジネス・プロデュー…

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メディアは事業会社化、拡大ありきではない会社に二極化する・・・電通 シニア・ビジネス・プロデューサー片山 智弘 氏に聞く
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「デジタルメディアに挑戦する人々の学びの場」としてMedia Innovation Academyを開設いたしました。7月18日(木)にメディアの「マネタイズ」「運用」「新規事業」をテーマとしたイベントを開催いたします。

登壇者でもある株式会社電通 シニア・ビジネス・プロデューサーで、クロシードデジタル株式会社 取締役CSOの片山 智弘 氏にメディアの「マネタイズ」「運用」「新規事業」についてお尋ねしました。

片山 智弘 氏のご経歴は下記の通りです。

株式会社電通 シニア・ビジネス・プロデューサー
クロシードデジタル株式会社 取締役CSO
慶應義塾大学大学院在学中に、就職活動試験のSPI練習サイトを運営する会社を経営。事業をサイトM&Aで売却して大学院修了後、電通入社。入社後は一貫して新規事業系部署に所属。広告市場と隣接する領域で活用が見込まれる最新デジタルテクノロジーやメソドロジーのパッケージ商品化・事業化を主に実施。その中でメディア企業とも協業やアドバイザリー多数。
直近では、電通グループのアセットを活かしたスタートアップ向けのマーケティング支援チーム及び商品の開発や、セガゲームスのグループ会社でゲーミフィケーションを提供するクロシードデジタルの資本提携をしてJV化を実施。自身も役員として経営陣として参画。

―――これまでの経歴と簡単に自己紹介をお願いします

 学生時代から就職活動のSPIを練習するメディア兼イーラーニングのWEBサービスを2年程会社を作って運営していました。

 電通に入ってからは、ずっと新規事業開発に携わる部署におりまして、広告とセットで売れそうな比較的今のビジネスに近いメディアプランニングやマーケティングコンサルティングをベースにした商品開発と、電通の持っているアセットが役に立ちそうなデジタルテクノロジー/メソドロジーを活かした新規事業開発を広く担当しています。

―――現在、携わられているお仕事について教えてください

 今やっている中で、大きいものは3つあります。

 1つは電通グロースハックプロジェクトです。電通グループでグロースハックを活かしてKPI/KGIを延ばすソリューションをご提供して、プロダクトオーナーさんに伴走できる仕組みを作って運営しています。電通デジタルに主幹部署である「グロースハックグループ」があり、各事業部と電通単体からのバーチャルメンバーも入れると計30人くらいの所帯になっているチームの副代表兼ファウンダーの1人としてこの推進をしています。

 もう1つは、三井不動産さんおよびEY Japanさんと一緒に運営する産業創造拠点「BASEQ」でのQスクールという研修事業と、ビジネスディベロッパーとして事業開発をサポートする伴走サービスの責任者です。東京ミッドタウン日比谷6階を中心にした主にオープンイノベーションを使って新規事業を起こしたい大企業向けの会員サービスを提供していて、今年で2年目を迎えています。

 最後に、セガゲームスさんのグループ会社でゲーミフィケーションを活かしたマーケティングキャンペーンや新規事業を手掛けるクロシードデジタルへ今月7月から電通として資本参加をさせていただいて、その取締役として経営参画をまさに今月からさせていただいています。

 これら3つのそれぞれのクライアント企業様や協業先、取材いただく先として非常に多面的にメディア企業の皆様にお世話になっています。

―――なぜその仕事に携わることになったのでしょうか

 電通グロースハックプロジェクトは約5年前に社内で立ち上げていました。粛々と新規事業部内でPoCをして黒字化をしてから、事業の本格展開をしていくために一緒に電通グループで運営できる仲間を探していた時に、電通デジタルで専門的な知識を持った仲間が見つかり、グループで主幹となる部署ができる流れが作れてから一気に規模が大きくなりました。

 BASE Qは三井不動産さんという非常に重要なクライアント企業様からの協業マターでのご相談ということで、当時の営業担当者および電通側の責任者が、オープンイノベーションを普段からの仕事としてやっている私を引っ張ってアサインしたのがきっかけです。一緒にやっている事業オーナーでBASE Q運営責任者である光村様へも(三井不動産 ベンチャー共創事業部 光村圭一郎氏)、同じイントレプレナーおよび社会人の先輩としてリスペクトがあって、なんだかんだ3年半近く一緒に動いています。

 最後のクロシードデジタルは、元々、4、5年前から今一緒に役員をさせてもらっている取締役COOの伊藤真人と同世代の社会人で集まる飲み友達で交流がありました。その中で、ちょこちょこと新規事業のことで情報交換をしていたのですが、クロシードデジタルとしての経営フェーズが変わったところで会社として投資の相談をしてもらいました。そこから目論見も合うので、両社で社内を巻き込んでこの提携ができました。

 全てめぐりあわせですね。人の引きが恐ろしく強いのだと思います。

―――その仕事の魅力はなんですか

 どれも共通しているのですが、一番は、デジタルテクノロジー/メソドロジーが社会に役に立っていくのを手触り感を持って実感できるところですね。

 今やっている、グロースハックもオープンイノベーションもゲーミフィケーションも、まだまだこれからです。それら自体がソリューションとして認知されて、市場が育っていくという側面があるのと、それぞれが既存の様々な産業に掛け合わせると事業を大きく成長できるエンジンになれるところがいいですね。もちろん今回のテーマであるメディアもその掛け合わせ先として例外ではないと思います。

 また、電通だからできる、大企業同士だからできる、そういったイントレプレナー独自のダイナミズムが活きている部分もやりがいとして多々あると思っています。

―――メディアが果たすべき役割についてどう思いますか

 月並みですが、人類の情報判断のものさしを作っていくことだと思います。

 そのメディア自身が持つブランドアイデンティティと編集方針というフィルターに沿って、それを実施していくことがメディアの存在価値だと思うので。

 ある雑誌ではかっこいいとされているものが、あるWEBメディアではダサいとこき下ろされていてもそれでいいですし、同じ事実・ニュースをピックアップするにしても、短文でおわるもの、写真や目撃者の表現を出しているもの、詳しい専門家のコメントを入れるもの、そもそも取り上げるかも含めて、出し方1つでも重要度が全然違うこと自体もメッセージになりますし。

 そういう矜持というか使命感がある編集やプロデューサーの人と仕事をすると楽しいですよね。

メディアのマネタイズ方法についてご意見を聞かせてください

 メディア単一の中での、王道なアプローチ*では、結構わかりやすい落としどころが既に定式化されてきている一方で、この方法で行ける規模に上限が見えているので、その先へどう行くといいかが気になっています。

 *王道のアプローチ=下記の①~⑤をリソースと相談しつつ、徐々に参入していくこと。①から⑤の順番通りに行われていくことが多いです。
①広告(純広告+アドネットワーク)
②有料記事(バラ売りかサブスクリプション)
③イベント(サロンや一発系の大規模イベントも含めて)
④マーケティング支援(オウンドやブランドスタジオ等)
⑤物販(ECやD2C、取材先グッズ開発まで)

―――メディアの運営のコツについてご意見を聞かせてください

 自分などが偉そうに言えることではないかもしれませんが、自社編集への愛とビジネス感覚のバランスに尽きる気がしています。

 極端な例ですが、こんなに良い記事で素晴らしい編集者さんが書いてるのに、なぜ儲からないのだろうというメディアもあれば、フェイクニュースやパクリ記事問題までいかないまでも非常に薄い記事を量産していて、残念なものも正直散見されます。

前者はサスティナビリティが問題視され、後者はモラルとガバナンスで、問題が起きているのではないでしょうか。専門領域のニッチメディアや新興系のメディアなどの特に両端で問題が起きやすくなっていると思います。

 前のご質問の通り、マネタイズ手法はある程度定式化しているからこそ、このバランスをいかに取りながら運営をしていくべきなのか、ビジョンやミッションの描き方と、そのための事業戦略が非常に大事になっていくと思います。

―――メディアの新規事業についてご意見を聞かせてください

 どこまでの新規事業を作りたいのかによりますが、前提として、さっきの役割の質問に絡んで、メディアの持っているブランドアイデンティティだけは絶対にブラさないことは大事かなと思っています。

 その上で、手前には、まさにクロシードデジタルでやらせてもらっているようなゲーミフィケーションの活用やコンテンツ自体のゲーム化(ゲーミファイ)もあります。まだまだ今だと一部のメディアしかできていなかったり、広告配信のおまけみたいになっているデータの販売も、これから法整備や環境整備が整っていく中で、更に伸びてくると思います。

 ただ、規模を狙っていくには、金融やIP(Intellectual Property)みたいなレバレッジが掛けられる領域に手を付けたり、自身がメディアとして取材している領域や新規テクノロジーに対してチャンスを見つけたら張って新規事業化していくなど、よりコングロマリット化しないといけないのかなと思っています。発信能力と思想や領域で一定バイアスを持った商社みたいなイメージです。

 そういう事業会社化する会社と、メディアに寄って拡大ありきでは運営しない会社と、今後はどんどん二極化していくと読んでいます。編集方針の哲学がちゃんと共有できるのであれば吸収合併がもっと起きてもいいとも思っています。

―――メディアの未来はどうなっていくと思いますか

 メディアの未来というお題が広いので、情報の授受の取り扱いにだけ言及させていただきます。情報のインターネット上の変換と展開方法にアップデートがなされることと、もう1つは情報のトレーサビリティが上がって信用度が格付けされていく時代になると思います。ちょっと話が飛んでわかりにくく聞こえたら申し訳ありませんが、解説いたします。

 前者は、例えばあるメディアで、記事を動画に変えたり、テキストの翻訳やサマリーをしたりといった、情報そのものの変形が容易になったりするかと思います。今はWEBサイトが主流ですが、アプリ化やサイネージなど、枠になる部分への入稿も簡単にされていくでしょう。また本体メディアもある中でSNSや他のメディアのコーナーへ乗るといったURLが違うところへの展開や、そういった情報・枠・チャネル間での横断的な変換や、配信の取捨選択速度が上がるなどの全部をさしています。

 後者は、インターネットの情報全体で信頼性やデータの主権明示が叫ばれている流れがメディアにも絶対来るだろうと思っています。ある記者はいつもファッションの記事を書いているのに今回は変なゴシップも寄稿していて一貫性が無いとか、あるメディアの情報価値が金融商品みたいに格付けされる時代になる可能性があります。

 しかし、本質的な役割はこれからも変わらないのかなと感じています。

―――イベントにいらっしゃる方々へのメッセージをお願いします

 長々とすいません、メディアど真ん中な人間ではありませんが、せっかく呼んでいただいたので、比較的近い領域にいるビジネスサイドの人間として刺激的な場になるように貢献できればと存じます。よろしくお願いいたします。

Media Innovation Academy #1 業界TOPリーダー18名が集結!メディアの「マネタイズ」「運用」「新規事業」研究会

株式会社イードが運営するMedia Innovation が、「デジタルメディアに挑戦する人々の学びの場」としてMedia Innovation Academyを開設いたしました。リアルな交流、協業が生まれることを目的としており、オンライン、オフライン合わせたコミュニティを形成していきます。

今回のイベントは下記18社の方々に5分ほどプレゼンいただき、その後、メディアの「マネタイズ」「新規事業」「運用」をテーマに、座談会を実施いたします。

アドテクノロジー、テレビ・雑誌・新聞のデジタルメディア、メディア業界のオープンイノベーション、メディア担当者が知っておくべきマーケティングのテクノロジー、ブロックチェーンなどの新規ビジネス、メディア起点の横展開、顧客データを活用したメディアビジネス、海外メディアの動向、カテゴリー特化のバーティカルメディア、インフルエンサービジネス、メディアが行うオンラインサロン、メディア業界の再編ファンド、など、盛り沢山の内容でお送りいたします。

■概要
日時 2019年7月18日 (木) 19:00 – 22:00
会場 Speee Lounge:〒106-0032 東京都港区六本木4-1-4 黒崎ビル4階
  (東京メトロ日比谷線、都営大江戸線六本木駅、4a、6番出口から徒歩7分)
主催 株式会社イード/ 株式会社メディアインキュベート

■スケジュール
18:30 開場
19:00 開演、主催者挨拶
19:05 各登壇者からプレゼンテーション(18社)
20:30 パネルディスカッション
21:15 懇親会(軽食とドリンクを用意します)
22:00 終了

チケットはPeatixで販売中です

《浜崎 正己》

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浜崎 正己

浜崎 正己

メディアの立ち上げと運用を支援する(株)メディアインキュベート の代表。1988年千葉県生まれ。Twitter : https://twitter.com/masaki_hamasaki

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