本記事はThe Conversationに掲載された、アメリカのTufts Universityで国際経済を専門とするBhaskar Chakravorti教授による記事「Lawmakers keen to break up ‘big tech’ like Amazon and Google need to realize the world has changed a lot since Microsoft and StandardOil」をCreative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、掲載するものです。
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現在、ビッグテックが再び大きな注目を集めています。
アマゾン、アップル、フェイスブック、グーグルの最高経営責任者は7月29日に、市場の競争を損ねているという非難に対し、議会で市場の優位性を擁護する証言を行いました。議員や規制当局は、独占禁止法違反行為についてより活発に議論を行っており、これらの企業の細分化が行われる可能性があります。
私は90カ国でデジタル技術が生活に与える影響を研究しています。また、私は大手テック企業の分割を支持する人も反対する人も、その大部分の人々は深刻な誤解をしていると考えています。
目次
誤解1:グーグルとスタンダード・オイルを比較すること
独占禁止法への主張には、しばしば過去の事例が引き合いに出されます。
例えば、19世紀の巨大な独占企業スタンダード・オイルのことを「当時のグーグル」と呼ぶ人や1990年代のマイクロソフトに対する独占禁止法違反訴訟を持ち出す人がいます。
これらの事例は現在の状況に似ているように見えるかもしれませんが、過去の時代とは現在がグローバルテクノロジー市場であるという点で決定的に異なっています。
現在、2つの「ビッグテック」集団が存在しています。一つは米国の、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルです。もう一つは中国の、バイドゥ、アリババグループ、テンセント、ファーウェイ、TikTokを運営しているバイトダンスです。
このグローバル市場は、スタンダード・オイルやマイクロソフトが規制された時とは全く異なる政治的・政策的圧力にさらされています。例えば、中国政府はほとんどの米国企業の中国市場への参入をブロックしています。また、米国政府も同様に、国家安全保障上の脅威として指定した中国企業をブラックリストに登録し、中国企業の米国への参入の意思を阻害しています。
新型コロナウイルスの発生以来、中国政府による自国のテクノロジー企業への支援は倍増しています。
米国企業の規模とデータ蓄積能力は、経済的、政治的な影響力を世界中に与えています。もし米国の大手テクノロジー企業が分割された場合、グローバル市場は混乱し、分割された米国企業と国家により保護される中国企業との間の競争が激化することになるでしょう。