本記事はThe Conversationに掲載された、オーストリアのMonash Universityで経済学を専門とするSimon Wilkie教授による記事「The news media bargaining code could backfire if small media outlets aren’t protected: an economist explains」をCreative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、掲載するものです。
2003年に、私が米国連邦通信委員会(Federal Communications Commission)のチーフエコノミストを務めていたとき、News Corpによる衛星放送の有料プラットフォームDirecTV買収の監督をしました。
合併以前、DirecTVは有意義なコンテンツを所有しておらず、一方、コンテンツが豊富なNews Corpは有料放送の配信プラットフォームを所有していませんでした。
経済分析によると、News CropとDirecTVの合併により、ライバル会社の有料テレビ配信プラットフォームであるFox放送ネットワークやFoxスポーツチャンネル、またComcastなどのケーブル会社に売却されたテレビチャンネルを値上げするインセンティブを所有することになるでしょう。
この結果、市場での健全な価格競争に弊害が生まれると考え、私たちは、チャンネルの値上げに合意できない企業が出てきたときに備え、FCC仲裁メカニズムを開発しました。
これは、モリソン政府のニュースメディア交渉法が、オーストラリアでFacebookとGoogleに課している、メディア企業が自身のコンテンツにリンクを張ったり、利用したりした場合の補償を要求するのと同じ仕組みです。
米国では、実際にこの仲裁メカニズムが機能した実例があります。例えば、News Corpの創業者であるRupert Murdoch氏は、仲裁によりチャンネルの値上げができないことに不満を持ちDirecTVを売却しました。
しかし、米国とオーストラリアの間には、決定的な違いがあります。米国では合併の影響を受けないチャンネルが多数存在しているため、それらを用い市場価格の基準を定め、それを踏まえて各チャンネルにとって妥当な価格を判断することができました。
例えば、Comcastのようなケーブル会社は、ABC、NBC、CBSのような放送テレビネットワークと契約をして、Foxネットワークの価格基準を決めることができます。
オーストラリアでは、ニュースコンテンツの値段を決める際に、そのような基準となる市場価格は存在しません。そのため政府は、ニュースメディア契約法を発効する前に、当事者たちが価格に対して商業的な合意をしておくことを奨励しています。
契約法の目的は称賛に値します。しかし、Facebookが先週、思い切った行動に出たことにより、オーストラリアの小規模なニュース出版社が大きな打撃を受ける可能性が出てきました。
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