メタ、詐欺広告は「社会全体でのアプローチが重要」と声明 前澤氏は「業務停止処分を出すべき」

FacebookやInstagramで著名人の詐欺的な広告が蔓延している問題で、被害者の一人である前沢友作氏(ZOZO創業者)が、運営するメタを提訴する方針を示していましたが、メタが初めて本件について声明を発表しました。

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メタ、詐欺広告は「社会全体でのアプローチが重要」と声明 前澤氏は「業務停止処分を出すべき」

FacebookやInstagramで著名人の詐欺的な広告が蔓延している問題で、被害者の一人である前沢友作氏(ZOZO創業者)が、運営するメタを提訴する方針を示していましたが、メタが初めて本件について声明を発表しました

メタは、プラットフォームの安全を守るために大規模な投資を行ってきていて、2016年以降、チームと技術に200億ドル以上を投資してきたと表明。他方、「広告審査を行っているものの、膨大な数の広告を審査することには課題もある」と指摘。プラットフォーム上の詐欺に取り組む一方で、その進展には「産業界そして専門家や関連機関との連携による、社会全体でのアプローチが重要だと考えます」と述べました。

広告を主力とするメタの2023年度の広告ビジネスの売上は1319億ドル(約20兆円)。広告は誰でもオンライン上で設定する事ができ、ソーシャルネットワークの個人情報を利用する事で精緻なターゲティングが行える事から、膨大な広告費を吸い込んでいます。同社は「人による審査と自動検知を組み合わせている」「審査チームには日本語や日本の文化的背景、ニュアンスを理解する人員を備えている」と述べていますが、提出から掲載までは僅かな時間しかかかりません。

著名人の詐欺広告を巡っては指摘されてから少なくとも半年は経過していて、正常な対応が行えるとは言い難いものがあります。

メタに代表されるような、セルフサービスで広告が出稿できる仕組みは便利で多くの広告費が投下されている一方で、日々発生する膨大な広告主、広告クリエイティブを人の目で審査する事は難しいため、その審査過程は多くが自動化されています。これを悪用するプレイヤーがいるのも事実で、特に機微な領域(健康、医療、投資、金融など)は詐欺またはグレーな広告が多数投下されているものと思われます。

オンジンがインターネットユーザー479人に行った調査によれば、著名人を騙った詐欺広告に出会った割合は65.9%で、本人の広告だと勘違いしてクリックした割合は37.2%にも上ったということです。こうした広告から実際に詐欺被害が生まれた可能性があり、少なくともメタは広告費を受け取っているわけです。

20兆円もの膨大な広告売上を誇るメタが事実上、こうした状態を放置し、その対策を社会に委ねるような声明を出した事は強い反発を招いています。総務省の松本剛明大臣は9日の記者会見で、詐欺広告への対応を強めると表明しています。前澤氏は「広告配信業務停止の行政処分を出すべき」と踏み込んでいますが、強い姿勢で望むべきでしょう。

《Manabu Tsuchimoto》
Manabu Tsuchimoto

Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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