フジ・メディア・ホールディングスは1月30日、2025年3月期の業績予想を大幅に下方修正すると発表しました。親会社株主に帰属する当期純利益は、従来予想の290億円から98億円へと66.2%の下方修正となります。
背景には、フジテレビでの性加害問題に対する不適切な対応があります。問題の発覚後、企業統治の甘さや情報開示の遅れが指摘され、嘉納修治会長と港浩一社長が引責辞任する事態となりました。この一連の出来事を受け、多くの広告主が自社CM放送の見合わせを決定。公共広告(AC)への差し替えやキャンセルが相次ぎました。
フジテレビでは広告主との関係修復を優先し、公共広告(AC)差し替えやキャンセル分の広告料金を請求しない方針を選択。その結果、第4四半期の広告収入は当初予想から233億円減の1,252億円まで落ち込む見通しです。特にスポット収入は前回予想比120億円減の620億円と、大きな打撃を受けています。
「今回のAC差し替え及びキャンセル分について、広告主と築いてきた信頼関係を維持し、今後早期に広告の発注を再開していただくため広告料金を請求しない方針としました」と同社は説明しています。
今回の業績下方修正は、コンプライアンス体制の不備が広告収入という本業に直接的な打撃を与えた事例として、メディア業界に大きな教訓を残すことになりそうです。新たに就任する清水賢治社長のもと、信頼回復と収益力の立て直しという二つの課題にどう取り組んでいくのか、業界の注目が集まっています。
実際の数字を見ると、連結業績は売上高が5,482億円(前回予想比8.4%減)、営業利益が180億円(同49.0%減)、経常利益が241億円(同40.3%減)となる見込みです。都市開発・観光事業を手がけるサンケイビルでも、保有不動産の売却計画変更の影響で売上高が予想を下回る見通しとなっており、グループ全体での立て直しが急務となっています。