京都大学および松尾研究所発のスタートアップ企業エムニは、テレビ朝日とともに、生成AI技術を活用したヒヤリハット事例の抽出およびチェックシート自動作成に関する実証実験を実施しました。本プロジェクトは、最終的な目標として放送現場におけるトラブル要因を未然に防ぐことを掲げています。
テレビ番組制作の技術スタッフは、トラブル防止に向けて、オペレーションで発生した不具合や注意点を日々情報共有して事故防止に努めています。これまでも各番組や職種ごとのチェックシート作成、機材トラブルやオペレーションミスの共有、定期的なトレーニング等の対策は実施してきました。今回はAIを活用することで、過去に蓄積されたデータを十分に分析し、より効果的な対策を講じることを検討します。
本プロジェクトでは、まず最重要事項のチェックシートをAIが自動生成することを1つ目の目標としました。スタッフがオペレーションに入る前に、当日確認すべき事項を、膨大な過去事例や報告メールをもとに生成AIがリストアップすることで、番組制作における作業の確実性向上を図ります。
次の目標として、隠れたトラブル要因の発見にも取り組みました。業界特有の専門用語、放送機材の状況などのデータを生成AIで解析し、事故要因を検知。潜在的なリスクを特定し、放送事故を未然に防ぐことを試みました。
さらに、データ管理システムの構築を目指し、番組中のミスやトラブル対応を集約。予防対策に活用できるデータベースの構築を進め、分析精度の向上に注力しました。
技術的なポイントとしては、社内のドキュメントやメールの情報をLLMが扱うことのできるように整形しました。また、明確なトラブル以外にも重要な情報を担当者に確認しながらデータに加えたほか、これまで明文化されていなかった暗黙知に関しても新たにドキュメント化して追加しています。
エムニは今後、メール本文からの情報抽出の精度向上に向け、特に番組名の略称や専門用語への対応を強化するとともに、事例集やメールの情報を活用したチェックリスト出力モデルの開発に取り組み、番組制作現場のミス防止に貢献していく方針です。
今回の取り組みにより、膨大な情報の中から放送業界特有のリスク要因を特定し、現場での技術トラブルを未然に防止する仕組みの確立が期待されます。
