昨年から一気にムーブメントとして広まったVTuber(バーチャルユーチューバー)。一説には既に7,000人以上が活躍していると言われ、様々なプラットフォームの誕生、有名人やキャラクターが参加したVTuberの登場、マーケティングでの活用など話題が尽きません。

そんなVTuberを初期から追ってきたのが、株式会社Moguraが運営する、VR業界ナンバーワンメディア「MoguraVR」です。2018年12月28日には新たに、バーチャルを楽しむためのメディア「MoguLive」も開設。本記事では、久保田瞬編集長と永井良友副編集長に、VTuberのムーブメントの原点と今、そしてリアルとバーチャルが溶け合う未来についてお話を伺いました。

先行投資的に立ち上げた「Mogura VR」

―――まずはじめに、「Mogura VR」を立ち上げた経緯を教えていただけますか?

久保田:Mogura VRは2015年2月に立ち上げたのですが、もともと2014年から「もぐらゲームス」というインディーゲームを紹介するメディアを運営していました。2014年はFacebookがOculusを買収したり、Project Morpheus(PlayStation VRのプロトタイプ名)が発表されたり、インディー開発者の間でVRが盛り上がってきたころだったんです。

最初はインディーゲームの動きとしてVRを取り上げていたのですが、そのうちVRの方が面白くなって。実際に読者の反応もよかったですし、VRにはゲームの枠に留まらない大きな可能性があったので、VR専門のメディアを新設することにしました。

日本のVR関係者が集まる場となっているMoguraVR

―――当初の反応はいかがでしたか?

久保田:もうぜんぜんでした(笑)。2015年はVRのコミュニティも小さかったですから。ただ、海外ではVRが相当盛り上がっていて。

盛り上がりの中心は米国だったのですが、そうした海外の情報が日本語で流れてこなかったんですね。そこで海外の情報を日本語で伝えるため、海外のVR専門メディアとパートナーシップを結んで、日本に情報を持ってくることが最初の活動のメインでした。

最初は小さいスタートでしたが、いずれは伸びる分野なのでそこは押さえておきたいと思っていました。VRのことであれば「Mogura VR」を読めばわかるようにしておきたいし、いずれ広まってきたときもそうありたいなと。

なので先行投資的に活動していたのですが、今見返したら真っ赤っ赤ですよ。現地に行って、体験して、その熱をちゃんと日本に伝えることを大切にしていたので、海外にバンバン行ったりして(笑)。

―――それが2016年、2017年になると変わってきたと。

久保田:2016年はVR元年とも言われましたけど、PS VRをはじめとして一般層へのリーチが増えていった時期でした。VRについて調べる人が出てきて、それで読者が増えていきました。

―――先行投資というお話もありましたが、そのときのメディア作りで意識していたことはありますか?

久保田:メディアとしてはとにかく実直にやっていました。

技術がメインの分野ですから、ともすれば難しい情報を正しく分かりやすく伝えることを信条にしていました。それと伝聞ではなく、自分で体験してものを言うようにしていました。さきほど海外の話をしましたが、体験なら現地に行って、インタビューなら直接聞きに行って。

メディアとして成長してきた2016年から今にかけては、「ワンプッシュ」を合言葉に記事作りをしています。VRは世の中にほとんど浸透していないものですから、記事を読んで「これ使えそう」とか、何かしら読者の背中を押せるような内容を目指しています。

とはいえ、自分自身は技術系ではありませんので、最初は間違いも多かったんです。日々勉強しながら、読者の方々に支えてもらいながら今があります。

株式会社Moguraの代表であり、MoguraVRの編集長も務める久保田氏

―――では、マネタイズについてはいかがでしょうか。

久保田:最初は個人事業だったので、貯金を切り崩して運営していました。2016年8月に法人化して、今はメディア単体でなんとか回せています。

会社としてはメディア以外に、VR用のフェイスマスク「ニンジャマスク」をはじめとするVR/AR関連製品の販売、またVRに関するリサーチやコンサルティングの依頼もいただいています。

VRゲームセンターや体験施設などでは必須の存在となっているニンジャマス

―――Mogura VRといえばニンジャマスクというイメージもありますね。

久保田:VRゴーグルは、使い続けると目元のスポンジがドロドロになっていくんです。業界の人間は2015年くらいから気づいていたことですが、ゲームセンターなどの施設でVRが広がっていくだろうと思ったとき、こういうものがないと体験する人が嫌な思いをしてしまうなと。

ビジネス的には後付けなのですが、VRの普及をいかに加速できるかという意味では、メディア運営と根っこの部分で繋がっています。最近では業界向けの展示会も主催して、25社が出展して、600名規模の来場者がありました。業界の中で、必要とされていることをやっているようなイメージですね。

VTuberは「ついにコンシューマーに刺さったバーチャルな存在」

―――話をVTuberに移します。VTuberが世に出てくるようになったきっかけを教えていただけますか。

永井:VTuberが一気に出てくるようになったのは、2017年末あたりです。外見はキャラクター風のバーチャルな存在ですが、視聴者と実際にコミュニケーションできるところが注目されて、受け入れられていきました。

久保田:技術的には、2016年1月にVRエヴァンジェリストのGOROman氏が「美少女キャラの中の人になる配信」を行っています。つまり、その頃からやろうと思えばできたんですね。当時の記事を読み返すと、まさにVTuberの先駆けだったんだなとわかります。

今有名なキズナアイさんも、2016年から始めているんです。当時からすごいとは言われていましたが、ただ広まっていなくて。それが2017年末になって、個人の人たちが自力でやって、「みんなでやろう」と呼びかけたことで一気に広まったと思います。

またそれとは別に、キズナアイさんを企業の人たちが見ていて。自分たちもできるのではと動き始めたタイミングが、2017年末にちょうど重なったんだと見ています。

―――Mogura VRでは、VTuberを追うMoguLiveというメディアを2018年12月に新たに立ち上げました。それほどインパクトが大きかったということでしょうか。

久保田:日々情報を発信する中で、一時わっと盛り上がるようなものは数多くあるのですが、通常はすぐ落ち着くんです。でもVTuberについては関心が続いていて。今までコンシューマーになかなか刺さらなかったVR的なものが、ついに刺さったと。

Mogura VRはどちらかというと業界向けの情報が多くなっていましたが、それならコンシューマー向けの情報を出していきたいということで、メディアを1つ切り分けることにしたんです。

コンシューマーという点では、 一体型VRヘッドセット「Oculus GO」の関心も続いています。VTuberとは性質が違いますが、それほどバーチャルなものに触れる機会が増えてきたんだと思います。デバイスの値段はどんどん下がっていきますし、VR内で活動できるVTuberは相性がとてもいい。VRデバイスとVTuberは相互に絡み合いながら発展していくと予測しています。

バーチャルを「楽しむ」ためのメディアと銘打たれたMoguLive

―――今、VTuberの活動にはどのようなものがあるのでしょうか。

永井:出てきた当初はそれこそYouTuber的な動画投稿がメインだったのですが、今はVR音楽ライブのようなことも開催されはじめました。リスナーがVRデバイスを付けて、VR内でVTuberたちのパフォーマンスを楽しむものですね。非常に盛り上がっていて、VTuberが新たな局面に入ったような印象です。

ほかの面白い例としては、VTuberがティッシュ配りをしていたこともありました。VTuberが映し出されたモニターがあって、その前にポケットティッシュが積まれていて。VTuberが通りすがりの人に呼びかけて、ティッシュを持っていってもらう形式です。つまり、接客業のような役目です。こうした接客・小売業とVTuberの組み合わせも、最近では見られるようになってきました。

久保田:VTuberがだんだんと社会に受容されてきている、ということだと思います。そういう意味では、MoguLiveにもバーチャル編集者がいます。佐藤ホームズさんというVTuberの方なのですが、業界全体に詳しいので実際に編集や取材をして働いています。

永井:VTuberというとタレント的な活動が注目されがちですが、こうした専門職とも相性は悪くありません。インターネット上で完結するような仕事であれば、バーチャルな存在が仕事を持って社会参画する例もこれから増えていくように思います。

MoguraVR副編集長/MoguLive編集長を務める永井氏

―――海外での動きはどうですか?

永井:海外発のVTuberとして活動する人は、数としては多くは聞きませんが、Instagramで活動するバーチャルインフルエンサーの「リル・ミケーラ」は資金調達の額も大きく、注目されています。また、アジア圏でVTuber文化が受容され始めている、という話題は増えてきました。たとえば日本のVTuberが中国の「ビリビリ動画」で配信を行うと、日本での配信と比較して数倍の視聴者を記録するというように。

―――VTuberの将来はどうなっていくでしょうか。

永井:5G(第5世代移動通信システム)が出てくれば、VRライブなどはもっと可能性が出てきます。また外見は理想のアバターを使えるので、歌がうまかったり喋りが得意だったり、様々なタレント性を気兼ねなく発揮する方がよりたくさん出てくるかなと。VTuberという名称はまだ残ると思いますが、いずれはYouTubeがメインではなく、アーティスト活動や仕事をメインとする方々も増えてくると考えています。

久保田:VTuberではないですが、個人が扱うバーチャルの話で言えば、コミュニケーションの選択肢が増えると思っています。たとえば、普段は日常生活をしていて、サッカーの試合があったらVR空間上で友達と一緒に観戦する、みたいなイメージです。その時の自分の見た目をどうするかは自由ですし、一緒に観戦するのはVR上だけの友人でもいい、ということです。

―――より現実とVRが重なっていくと。

久保田:最近では、現実空間をVR化する技術も出てきました。VR上でも部屋の大きさや家具の配置などが現実と一致していて、その見た目を好きに変えるようなものです。バーチャルとリアルが融け合って、シームレスに繋がる世界が間近に迫っています。VTuberも、その流れのひとつなのだと思います。

特集 VTuberは次世代のメディアか

  1. 急速に拡大するVTuber業界、投資が進む領域と主要なプレイヤーをカオスマップで紹介
  2. VTuberとは一体何者なのか? そしてリアルとバーチャルが溶ける未来とは?・・・VR専門メディア「Mogura VR」久保田編集長、永井副編集長インタビュー
  3. HTC NIPPON株式会社 児島社長インタビュー
  4. ゲームメディアはなぜVTuberを作ったのか
  5. グリー株式会社 荒木取締役インタビュー

※順次公開予定です

本特集に関連して「Media Innovation Meetup #2」として、特集の登壇者4名を招いたイベントを、3月13日(水)に秋葉原にて開催します。

■概要
日時 2019年3月13日(水) 19:00~21:00
会場 TIME SPACE 秋葉原 東京都千代田区外神田1-15-18 奥山ビル8階(JR秋葉原駅から徒歩2分)

■スケジュール
18:30 開場
19:00 開演、主催者挨拶
19:05 各登壇者からプレゼンテーション(15分ずつ)
    グリー株式会社 荒木 英士 取締役 上級執行役員/Wright Flyer Live Entertainment 代表取締役社長
    HTC NIPPON株式会社 児島 全克 代表取締役社長
    株式会社Mogura MoguraVR 久保田 瞬 編集長
    株式会社イード ゲーム事業部 矢尾 新之介 ディレクター
20:05 パネルディスカッション
    デジタルとリアルが溶け合う未来とは?
20:45 懇親会
    軽食とドリンクを用意します

チケットはPeatixで販売中です