スマートフォン用ゲームのライブ配信プラットフォーム「Mirrativ(ミラティブ)」。スマホ1台でゲーム実況ができる機能が好評を博し、配信者は現在100万人を超えています。Mirrativを運営する株式会社ミラティブは、2019年2月に35億円の資金調達を発表し、今後ますますの成長が見込まれています。

MirrativとVTuberの関係性として注目すべきは、2018年8月に追加されたアバター機能「エモモ」です。「エモモ」は、配信者専用のアバターを作り、VTuberのように配信・ゲーム実況ができる機能です。つまり、スマホ1台で誰でもVTuberののように振舞える環境をいち早く作り上げたのです。そこで今回は、株式会社ミラティブ代表取締役の赤川隼一氏にインタビューし、MirrativとVTuberの未来について伺いました。

―――Mirrativ立ち上げまでの経緯を教えてください。

もともと私は、DeNAに2006年に新卒で入社して、在籍中はYahoo!モバゲーなどの立ち上げに携わりました。その後海外やゲーム開発の執行役員を経験後、2015年にMirrativを立ち上げました。

Mirrativを立ち上げた理由は2つあります。ひとつは2014年、ゲーム配信プラットフォームのTwitchが、Amazonに約1000億円で買収されたことです。その時Twitchのアクティブユーザーは1億人いたのですが、PCゲームやコンソールゲームが主力で、モバイルゲームはあまりケアされていませんでした。それなら、今後拡大するモバイルゲーム主体の配信プラットフォームならば、グローバルで成長できると思ったのです。

もうひとつは個人的な思いとして、「趣味でつながるサービスが利用者自身の可能性を広げる」という考えがあるからです。

私は高校生の時、当時のテレホーダイを利用して、毎晩チャットルームに接続していたんです。音楽オタクだったので音楽の話をずっとしていたのですが、そこでは見ず知らずの大人たちが、自分の知らない音楽をいっぱい教えてくれたんですね。新しい音楽を知ったら、すぐ次の日に中古CD屋に行ったりして。

チャットルームでできた知り合いとはいまだに仲いいですし、その中には有名音楽バンドのメンバーになった人もいました。そうした繋がりで、本当に自分の可能性が広がったんですね。ゲームの分野で、同じようにつながりを提供して人の可能性を広げることができると思っています。

誰でも簡単にゲーム実況ができるプラットフォーム「Mirrativ」

―――サービスの構想はどのように練ったのでしょうか。

Android5.0が登場したとき、APIを使うと画面キャプチャーができると発見して、「これでいける」と思いました。それまでは、ゲーム実況には複雑な機材と設定が必要で、スマホの実況でもPCが必須でした。その工程を一気に省けるので、きっとみんなやりたくなるだろうと。

サービス当初はAndroid5.0の利用率は20%くらいだったので、配信できる人は限られていました。ですが、いずれ5.0以上の利用率が100%になるのであれば、はやめに先手を打った方がいいと判断しました。

―――2015年にサービスを立ち上げて、最初の反応はいかがでしたか?

はっきり言って、最初は失敗しました。あんな機能もある、こんな機能もあると「イケてる感じ」でリリースしたので、一瞬は注目されたんですが、すぐにユーザーがいなくなってしまって。

―――どうやって挽回したのでしょう。

ひたすら地道に、「配信者をもてなす」ことをやっていました。

まず、Mirrativで誰かがゲーム実況を始めたら、私のところに通知が来るようにしました。通知が来たら、運営アカウントで配信者と直接コミュニケーションを取りつつ、その人の配信をMirrativの公式Twitterなどを使って思いっきり宣伝したんです。

配信者のモチベーションは人が集まることですから、とにかく人を呼んで、配信者と視聴者が仲良くなるようにしていったんですね。

これを続けることで、50人、70人、100人と少しずつ人が増えていきました。特に大きな宣伝はしていないのですが、友達が友達を呼んだりして、ゆるやかなバイラルでアクティブユーザーが伸びていったような感じです。

―――そこで手応えがあったんですね。

張り付きのサポートをしてからは、きれいにユーザー数が伸びました。月単位で見れば、アクティブユーザー数はそれ以降もずっと増え続けています。

もともと、「スマホだけで配信できること」自体はユーザーに刺さっていたんです。すぐにユーザーたちが自主的にオフ会が開催するくらい、高い熱量がありました。ユーザーが伸びてきて、サイクルが回り始めたところで、「これはいける」と確信できました。

それから伸び続けて、2017年9月にiOSでも配信できるようになると、ユーザーが一気に増えて、ついにブレイクできました。

―――人気の高いゲームにはどんなものがありますか。

最近は『PUBG MOBILE』や『荒野行動』など、“実況映え”するのものが人気があります。配信者の方もつい選んじゃう傾向にあるので、“実況映え”はこの先のキーワードになりそうです。

―――先日35億円の資金調達を発表したばかりですが、展望をお聞かせください。

まず国内でつきぬけて成長すること、それとグローバルに進出することですね。また、新規事業を考えています。今は言えませんが、ネタは山程あります。

―――採用という点でも人を増やすことを明言されています。どのような人材を求めていますか?

もともと少人数で作ったものをスケールさせるビジネスモデルなので、少数精鋭チームに適正があって、技術の高い人を求めています。人が好きで、仕事が好きで、ミッションに共感していただけたら嬉しいです。

当社はよく感情が優先する「エモい会社」だと言われるのですが、想いがあるのはあくまで前提です。その上で、結果にもこだわるのがプロだと考えています

ひとり1アバター、複数アバターを持つ時代が来る

―――今回はVTuber特集なので、アバター機能の「エモモ」についてお聞かせください。アバター機能はなぜ入れたのでしょうか。

Mirrativでは人と人をつなげる設計をずっと作り続けていて、「エモモ」もその一環です。人は時間があるとき、予算のかかった番組を見るよりも他人が何をつぶやいているかをつい見ちゃう、ということがこの10年で証明されたと思います。人はコミュニケーションの欲求がかなり上の方にあるんだなと。

今後5G(次世代モバイル通信規格)が始まると、接続がもっと簡単になって、いろいろなものが繋ぎっぱなしになると思います。たとえば、今、10代を中心に広がっている「Zenly」というアプリは、自分の位置情報をアップし続けるSNSです。ポジティブな「情報の垂れ流し」がより自然になってきている中で、5G以降であれば、自分のプレイしているゲームを垂れ流す時代が来るはずです。

それとMirrativの状況で言えば、顔出しの文化がないんですよ。ライブ配信サービスとしては特殊です。そこで「エモモ」を入れたところ、「どうせ顔を出さないから、アバター機能はむしろありがたい」と自然に受け入れられました。ネガティブな反応がぜんぜんなかったので、このタイミングで入れてよかったと思っています。

直近ではエモモにスナップ機能が追加された。今後もどんどん改善されていく予定

―――顔出し文化がないというのは面白いですね。

もっと言えば、無言のまま配信する人もとても多いんです。でも、視聴者からコメントで「一緒にやろう」と声をかけられたら、配信の中で部屋の番号を見せてその場でマルチプレイを楽しんだりする。

それくらい、配信へのハードルが低いんです。数値で言えば、アクティブユーザーの20%は配信をしている状況です。

―――アクティブユーザーの20%が配信者、というのは多く感じます。

配信者と視聴者の間に壁がほとんどなくて、お互いがいちゲームを楽しむファンなんです。ゲームを通してコミュニケーションできれば配信が成立するので、「無言でもいいんだ」と始める人が多いですね。

―――赤川さん自身は、VTuberの流行をどう捉えていますか。

こんなに日本で流行ったのは、やはり日本的な文化が背景にあると思います。そもそも物に魂が宿るアニミズムが歴史的にありますし、インターネット文化としても初音ミクがあった。アニメキャラクターのライブなども増えてきていることを考えると、出てくるのは必然だったのかなと。

それと、日本人のコミュニケーションはもともとハイコンテクスト(明確に言葉にされないものも含めて通じ合うコミュニケーション)なんですよ。絵文字は日本から出てきたものですが、まさにハイコンテクストなものですよね。文脈を理解してコミュニケーションする、表情が完璧に動いていなくても推察する。それが最新のカルチャーなどともろもろ組み合わさって生まれたのがVTuberだと思います。

―――日本では自然の成り行きに近かったと。

今VTuberと言えばアイドル的な役割が主流ですが、先ほどの「繋ぎっぱなしの環境」が当たり前になれば、もっと先には多くの人々がひとり1アバター、あるいは複数アバターを持つようになると考えています。

もともと人は、その人がいる環境に合わせて人格の使い分けを自然にやっていますよね。子供といるときは赤ちゃん言葉に変わるとか、カラオケに行ったら人格が変わるというやつです。その人の社会性が反映されたアバターが作り出されて、インターネット上のコミュニケーションではそれらを使い分けていく。

アバターを持つことが特別ではなく、当たり前のようにみんなが使う文化になっていくと思います。実際にMirrativは、今そうなりつつあります。Twitterはフォロワーが多いから偉いわけではなくて、フォロワー数に関係なくつぶやきのコミュニケーションが楽しいですよね。Mirrativも同じように、小さいコミュニティが大量にあるサービスでありたいと思っています。

―――VTuberはアバター文化のきっかけ・出発点ということですね。

Mirrativのアバター機能は、これからまだまだ進化すべきものだと思っています。もうすぐボイスチェンジャー機能を入れる予定ですし、外部の3Dモデルを使えるようにする予定です。

外部の3Dモデル使用はテストを始めていて、普段YouTubeで活動しているVTuberが、同じアバターを使ってMirrativで活動してくれたことがありました。そこから火が付いて、YouTubeの急上昇ランキングに載るようになっています。そうやって、みんながハッピーになれる構造を作っていけたら嬉しいですね。

VTuber、アバター文化の流れは、アイドルや萌えといったものだけに留まらないと思います。「ここではないどこかに行きたい」という人間の願望はずっとあるはずですし、アバターに関する経済圏は確実に大きくなっていくと思います。そうした市場に、フロムジャパンで勝ちに行くことが今の目標です。

特集 VTuberは次世代のメディアか

  1. 急速に拡大するVTuber業界、投資が進む領域と主要なプレイヤーをカオスマップで紹介
  2. VTuberとは一体何者なのか? そしてリアルとバーチャルが溶ける未来とは?・・・VR専門メディア「Mogura VR」久保田編集長、永井副編集長インタビュー
  3. 「HTC VIVE」とVTuberの良い関係、そして5Gでの進化はどうなる?・・・HTC NIPPON児島全克社長インタビュー
  4. ゲームメディアは何故VTuberを作ったのか、メディアを飛び出して活躍する「インサイドちゃん」運営チームに聞く
  5. VTuberはポストスマホ時代の先駆け?全ての人がアバターを持つ時代を築く・・・Wright Flyer Live Entertainment代表取締役 荒木英士インタビュー
  6. Mirrativが見据えるVTuber流行のその先。成長を見込む“アバター経済圏”で世界に勝つ・・・株式会社ミラティブ 赤川隼一代表インタビュー