インターネットを介して音声や動画を配信するポッドキャストや、音声操作に対応したスマートスピーカーの登場で脚光をあびてきた音声コンテンツ。

そんな中、音声メディア「Voicy」を運営する株式会社Voicyは、2019年2月にグローバル・ブレイン、D4V、TBS イノベーション・パートナーズ、電通イノベーションパートナーズ、中京テレビ放送、スポーツニッポン新聞社などから約8.2億円の資金を調達したと発表しました。

名だたる企業が見据える音声メディアの未来とは? Voicyの代表取締役CEO 緒方憲太郎氏に話を伺いました。

――― まずはこれまでのキャリアについて教えてください

キャリアのスタートは公認会計士としてでした。さまざまなビジネスの将来のリスクを考える過程で多様なマネタイズモデルに触れることができました。一時期は海外で仕事をしていましたが、帰国後はデロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社というベンチャー企業にさまざまなアドバイスなどを行う企業にジョインし、社長のブレインという形でビジネスデザイナーをしていました。

「ビジネスをこういう風に成立させませんか」、「そのビジネスはこういうリスクが考えられます」と、年間に何百社もまわる日々で、これは天職だとすら思っていたのですが、ある時にふと「いっそ自分でも事業を立ち上げてみようか」と思い、今に至ります。

――― 起業のフィールドに音声メディアを選んだのはどのような理由だったのでしょうか

父が大阪でアナウンサーをしていますので、音声には幼いころからなじみがあった……というのもありますが、一番の理由は「今、一番価値があるのに一番うまく活用されていないのが音声」だと考えているからです。

僕が今、こうして自分の考えを伝えている手段も音声です。でも、それを第三者に伝えるためには文字にしなければなりません。声をそのまま届けられれば、情報を得る人にとっては一番うれしいはずなのに、現状ではそういうコンテンツやメディアが不足しています。それに、せっかく事業を始めるのなら、五感のうちどれかを独占するくらいのことはしなければという思いもありました。

これからはIoT(Internet of Things、モノのインターネットともいわれる)の時代が始まる……と考えていた矢先にスマートスピーカーが登場し大きく普及したりと、にらんだ通りの潮流になってきていますが、音声分野はまだ未開拓といっていいくらいです。そこに乗り込まない手はないだろうと。

―――音声メディア「Voicy」を立ち上げる際はどのような思いがありましたか

まずは、いかにおもしろいものを作れるか、いかに人の心をくすぐれるかを大切にしようと。費用対効果やメリットの有無だけを考える人たちが入ってくる前に、”ときに採算を度外視してでも、おもしろいものであることが重要であり前提”なのだという文化を植え込んでしまおうと。「Voicy」を立ち上げる前から、今後くるであろう”音声主導の世界”をイメージしてはいましたが、実際に始めてみて気が付くことも多く、発見の毎日です。

様々な番組が揃う音声メディア「Voicy

―――とはいえ、マネタイズできるかも一概に切り捨てづらいものがあります。マネタイズの手段はどのようなものを考えておられますか

今はチャンネルにスポンサーが入ってくれています。視聴者のみなさんの「聴きたい」という熱量が高くなればなるほどマネタイズもしやすくなりますので、拙速な取り組みでその熱を醒ますようなことはせず、じっくりと向き合っていきます。

―――今後、「Voicy」をどのような存在にしていきたいと考えていますか

一般ユーザーが参加することで成立するCGM(Consumer Generated Media)ではなく、単独で成立するメディア……言い換えれば、新たなる文化を創出したいと思っています。活字であれば雑誌や小説、ブログ、SNS。動画であれば、映画、テレビ、YouTube、TikTok……と時代とともに新たなフォーマットが生まれ続けていますが、音声にはそれがありません。台本を作り、それを読んで発信するラジオ番組のころから似たり寄ったりのままなんです。だから今は、コンテンツの多さを誇るよりは、音声を聴く楽しさ、おもしろさを前面に押し出していきます。

―――「Voicy」ではチャンネル開設の申し込みも受け付けています。配信者たちに求める像はありますか

僕たちは「Voicy」を「声のブログ」と呼んでいます。自己表現の手段というのはさまざまにあって、写真による自己表現に優れた方ならInstagramが向いています。文章であれば、TwitterなどのSNSが候補に挙がるでしょう。でも、それが声だという方も大勢おられるはずなんです。

そういった方たちが、ご自身の豊かな考えや人生を声で自己表現するための場だとお考えいただければと思います。ですので、声質の良し悪しなどは必ずしも重視されません。それよりは「この人の講演を聴きたい」とか「この人と一緒に飲んで話がしたい」などと思えるかを一番重要視しています。

―――アナウンサーなど声を用いたプロになるための場所ではないので、そこにハードルを感じる必要はないということですね

そういうことです。とはいえ「Voicy」でチャンネルを持ったことで書籍執筆の依頼が来たり、そこからプロのアナウンサーやラジオパーソナリティーになられたりという方もおられますので、そうやって「Voicy」が出世作になるというのも大変喜ばしいことです。今はまだ配信者の方の将来の道筋を作るというようなことは考えてはいないのですが、結果的にそういう一面も持てるようにはなっているのかもしれません。

―――これからは企業運営のメディアによる音声ニュースの配信も増えていくと思われます。そういった現状をどう見ておられますか

今「Voicy」ではマネックス証券さん、野村證券さん、PR TIMESさんがチャンネルを開設してそれぞれに配信しておられ、それが採用や、社員同士の交流に一役買っているとうかがっています。今は一般企業も音声メディアを作り始めていますので、企業によるオウンドメディアが音声になる、という日も遠くないのではと考えています。

―――そうした潮流の中で、各企業は「Voicy」にどのようなものを期待していると感じますか

音声で発信することで、発信者の熱量や感情をそのまま届けられることに大きな可能性を感じてもらっています。”発信者本人だからこそ、届けられるものがある”ということをご理解いただけているように思います。

―――視聴者に愛好される発信するためのノウハウにはどのようなものがあるでしょうか

持続的に聞いてほしいなら、コンスタントに同じクオリティのものを放送することです。聴く方も、継続するうちに習慣化して定着しますので。1週間に一度、数日に一度といわず、毎日発信するのが望ましいです。

また、音声による発信は身近に感じてもらえる要素が大きく、じわじわとイメージアップにつながる特徴があります。そういった意味では、長期的に取り組むのもマストだといえます。

―――「Voicy」の現時点でのユーザー層はどのような感じでしょうか

年齢としては20代後半がボリュームゾーンで、男女比は半々くらいです。ビジネスマンの方も多いですね。各チャンネルのファンの総計によるところが大きいので、今後の増え方や比率の変わり方は、パーソナリティーさんの顔ぶれ次第だと思います。

―――御社の公式サイトには「音声体験のデザイン・コンサルティング」も行っているとあります。具体的にはどのようなことをされているのでしょうか

スマートスピーカーで音声コンテンツを配信するならウェイクワードはどのようなものがよいか、QRコードを読み込むことで音声コンテンツを配信するのはどうか、多くの視聴者により親しんでもらうための音声コンテンツとは……など、音声デザインのソリューションの提供をBtoBメインでさせていただいています。

―――そうした知見はどのようにして積み上げられているのでしょうか

ロジック、データドリブン、そして経験に基づく直感でしょうか。どれが欠けてもダメで、バランスが大切です。これは弊社ならではの”武器”だと思っています。

―――「Voicy」の今後の展望をお聞かせください

まずは「音声を主軸にした新たな文化がここにあります」というのをさらに広めていくのが大前提です。そのためののろしを、これからも着々と上げていきます。短期的には「これぞVoicy」といえるコンテンツを10、20と増やしていきたいです。音声コンテンツに関するデータも集まってきていますので、成功させるためのノウハウの精度もさらに上がっていきます。

アメリカでは今、インターネット広告の4割近くは音声によるものになるのではという見方があり、実際のところ、ガンガン稼いでいるポッドキャスターも大勢います。今後は音声がスマートフォン以上に快適な環境や生活を提供する世界になっていくと思いますが、そんな中で「Voicy」がどういった存在であるべきかという理想は、実はまだ見えていません。だからこそ、僕ら自身もおもしろがりながら取り組みを進められています。そこに向かって、さまざまな企業が気軽に参入できるための環境作りをより推進していきます。

―――最後に、音声メディアへの参入や、音声コンテンツの配信に前向きな企業へアドバイスをお願いします

かつてテレビが普及したとき、自社の放送局を持った新聞社と、持たなかった新聞社に分かれたわけですが、その差は今、とても大きなものになっています。僕たちはそれと同じように、音声メディアを「進出しなければ」と思えるほどの場にします。

ですが、放送局を持っている新聞社も、自分たちで番組まで作っているわけではありません。支持される番組を作るために必要な能力やノウハウは、新聞の制作とはまったく異なるからです。「Voicy」は音声メディアとしての新たな文化を創出しつつ、音声メディアに意欲的な企業の方々のよきパートナーでもあれたらと思います。

特集: 音声とメディアの未来

5人のキーパーソンが登壇するイベントは5月22日(水)開催

今回の特集に登場する5名から直接話しが聞ける「Media Innovation Meetup #4 音声とメディアの未来」は5月22日(水)の開催です。

終了後には軽食と飲み物を用意した懇親会も実施します。

※Peatixの画面より領収書の発行が可能です
※当日は名刺を1枚お持ちください(ない場合は結構です)

■概要
日時 2019年5月22日(水) 19:00~22:00
会場 〒160-0004 東京都新宿区四谷3-9 第一光明堂ビル 9F TIME SHARING 四谷 ※四谷三丁目駅から徒歩2分
主催 株式会社イード
入場料 3,000円

■スケジュール
18:30 開場
19:00 開演、主催者挨拶
19:05 各登壇者からプレゼンテーション
    株式会社Voicy 緒方憲太郎 代表取締役CEO
    Radiotalk株式会社 井上佳央里 代表取締役
    シマラヤジャパン株式会社 安陽CEO
    ロボットスタート株式会社 中橋義博 代表取締役社長
    株式会社オトナル 八木太亮 代表取締役社長
20:20 パネルディスカッション
21:00 懇親会
    軽食とドリンクを用意します
22:00 終了

■チケット
チケットはPeatixで販売中です。

※Media Innovation Salonの会員様には1000円引きとなるクーポンを配布中です。ぜひ参加をご検討ください。