ワシントンDCに本部を置く、新聞社らで作る業界団体、ニュース・メディア・アライアンス(News Media Alliance)が11日、議会の公聴会に出席し、グーグルに代表される巨大プラットフォームによって新聞社や出版社などのパブリッシャーのコンテンツが不当に利用され、収益を奪われているとして法案策定を求めると声明を発表したことが大きな話題になっています。
同団体は11日に調査結果を発表し、グーグルの検索結果のうち16~40%はニュース記事で、パブリッシャーに収益を還元することなく、2018年には推定47億ドルの利益を上げたと批判。この数字は「控えめなもの」で、ニュースの存在により、トラフィックの増加、製品開発への応用、AIのトレーニングなど、ニュースがサービスの開発に必要不可欠なものになっていると指摘します。
ニュース・メディア・アライアンスのDavid Chavern代表は「ニュース提供社は質の高いジャーナリズムに投資が必要です。情報が無料であれば素晴らしいですが、記者には報酬が必要です。」
そして同氏は巨大なプラットフォームとの交渉は困難であり、法的な裏付けが必要であると指摘します。11日には「オンラインプラットフォームと市場支配力 第1部 無料と多様な報道」と出された公聴会に出席し、同団体が主導して作成に当たっている「ジャーナリズムの競争と維持のための法案」を議会が通過させることを求めました。
「私達はグーグルやフェイスブックなどのプラットフォームと、パブリッシャーが共同で交渉に当たることのできる環境を整える法律を求めています。これはプラットフォームがウェブと広告市場を寡占している市場で、パブリッシャーがコンテンツを取り戻すための唯一の解決策です」
しかしこうした動きに批判的な声もあります。ジャーナリストのJeff Jarvis氏は「彼らの声明は全くのでたらめ」だと切ります。「その声明は2段落目から崩壊しています」その文章は以下の通りです。
グーグルは消費者がニュースにアクセスするための主要な経路になっています。2011年にはグーグル検索とグーグルニュースは約75%の主要ニュースサイトの最大の流入元になりました。2017年1月から2018年1月にかけてグーグル検索からの流入は25%も増加して、毎週16億人にも成長しました。
ニュース・メディア・アライアンスの調査結果の全文はこちらから
これは確かにグーグルがニュースに与える影響力を示すものですが、ニュースメディアに対してグーグルの貢献が大きいことも同時に示すものです。
Jarvis氏は「問題はこうした送られたトラフィックをマネタイズする手段をパブリッシャーがいつまでも獲得できず、一見さんを読者にする才能も無いということです。一方でグーグルは”Subscribe with Google”のような取り組みで、購読者を増加させる手助けをしてくれているというのに」と批判。
さらに「彼らはインターネットの価値の厳選が、コンテンツと呼ばれる商品や実在(記事、見出し、サムネイル、単語など)ではなく、関係性へと変化していることを理解してないのです。だから、リンクや引用を阻止することで抵抗しようとするのです」と辛辣です。単品のコンテンツではなく、総体として読者との適切な関係性を築く努力ができなければ、生き残れないというJarvis氏の指摘は理に適ったもののように思えます。
グーグルも Jarvis氏の取材に対して次のようにコメントしています。
多くの専門家が指摘するように、調査は正確ではありません。広告が表示されない検索クエリを過大に見積もり、グーグルが提供する価値を無視しています。毎月、グーグル検索やグーグルニュースは100億回を超えるクリックをパブリッシャーにもたらし、購読や広告収益に貢献しています。また、私達は世界中のパブリッシャーと技術や広告の面でコラボレーションし、成果を上げてきました。
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