Tokyo Otaku Mode Inc.株式会社bitFlyer Blockchain株式会社イードの3社が共同プロジェクトとして進めるブロックチェーンを活用したコンテンツの翻訳プラットフォーム「Tokyo Honyaku Quest」。まずはイードが運営する「アニメ!アニメ!」の記事の翻訳を開始し、グローバルに日本のアニメ情報を発信していくことを目指します。

プロジェクトを主導してきた、Tokyo Otaku Modeの安宅基氏、bitFlyer Blockchainの三瀬修平氏、イードの土本学氏にお話を伺いました。

左から株式会社イード 土本氏、Tokyo Otaku Mode Inc.安宅氏、bitFlyer Blockchain 三瀬氏

―――最初に自己紹介をお願いします

安宅: 学生の頃からゲーム三昧の生活で、『ダービースタリオン』を徹底的にやり込んだり、『ファイナルファンタジーXI』ではヴァナ・ディールで5年以上生活したりしていました。それがきっかけで、攻略本のライターにスカウトされ、仕事もゲームという生活を送っていました。その後は個人開発者として色々なサービスの立ち上げをやっていて、ジャンル特化型のSNSなどTwitterやFacebookなどソーシャルメディアと連携したサービスも数多く手掛けました。そこから話が繋がって、ソーシャルメディアを活かして日本のオタクコンテンツを世界に発信しようというTokyo Otaku Modeという会社を2011年に共同創業して、情報発信と越境ECを主に展開しています。

三瀬: 私も昔からゲームが大好きで、子供の頃にサンタクロースからもらったファミコンでよく遊んでいました。ゲームの中ではRPGがメインでした。アニメとの接点という意味では、大学卒業後に勤めた銀行で配属された最初の支店が吉祥寺で、担当先にアニメ制作会社や声優のプロダクションが多く、J.C.STAFFさんも自分の担当の一社でした。ちょうど「とある魔術の禁書目録」が放送されていた頃でしたし、もともとJ.C.STAFFの作品も大好きだったので、収録や制作現場に立ち会えたことがとても印象に残っています。ブロックチェーンとは、その後外資系銀行に転職後、企業のグローバル財務管理のアドバイザリー業務やキャッシュマネジメント業務を担当する中で出会いました。金融だけでなく世界を大きく変えそうな技術だと感じ、その中心で仕事をしてみたくなったことからbitFlyerに転職しました。

土本: 自分も、もともとゲームが大好きな人間で、特に任天堂ファンだったのですが、学生時代から「インサイド」というゲームメディアを仲間内で運営して情報発信をしていました。大学卒業と同時に今の会社に加わり、継続してメディアの運営に携わっていました。3年前くらいに後輩にバトンタッチし、今はイードのメディア事業を統括する立場ですが、ブロックチェーンはメディアにとっても大きな可能性を秘めた技術だと感じていて、何とかメディア作りに取り込んでいこうと試行錯誤をしているところです。

―――3社のプロジェクトはどのようにスタートしていったのでしょうか?

安宅: Tokyo Otaku Modeでは越境ECをやっていて、世界中に商品を販売しているのですが、販売はそれぞれの現地通貨建てになります。色々な通貨を扱うのは煩雑で、価格差も生まれてしまうため、統一通貨は難しいのか? という問題意識がありました。そんな中で、2017年秋からの仮想通貨ブームを見ながら、ブロックチェーンという技術を調べていくと、インターネットに出会った時のように一週間くらい寝られなくなっちゃったんです(笑)。それで自分でも「安宅コイン」のようなものを開発してみたりして。その後、Tokyo Otaku Mode起案の「オタクコイン」というオタク領域の通貨を発行しようということで企画がはじまりました。そんな中で、知り合いを経由してbitFlyerの三瀬さんに出会ったんです。

三瀬: 少し話しただけで意気投合して、すぐに飲みにいきましたよね(笑)。私も銀行で企業のグローバル財務に触れる中で、複数の国でサービスを展開している企業が受け取る通貨と、支払いに使用する通貨の金額差で生まれる為替リスクが大きな課題であることを知っていました。安宅さんがおっしゃるように、同じ業界なのに国の通貨に縛られて、為替リスクが生まれてしまう現状を、業界内の統一通貨で解決しようという「オタクコイン」の取り組みには共感しかありませんでした。それと同時に、両社で取り組めそうな色々なアイデアを議論しました。

安宅: 最終的には翻訳という領域に辿り着きましたが、本当に色々なアイデアがありましたね。 例えば、所有権をNFT(Non-Fungible Token)に結びつけることにより、資産性を持たせることが可能です。 絵画で例がありますが、アニメでも出来ないかというのは思っていました。Tokyo Otaku Modeは世界で人気のオタク領域に強みがあるので、やはり、この領域で何か・・・と考えているところで、「アニメ!アニメ!」というメディアを運営されていて、ブロックチェーンにも取り組まれているイードの土本さんを誘って仲間に入ってもらいました。

―――翻訳というアイデアはどう生まれたのでしょうか?

三瀬: ブロックチェーンは価値の流通を滑らかにする機能があると思っているのですが、それでも言語の壁というのは依然としてあって、特に文脈やニュアンスが大事なエンターテイメントの領域では言語がコンテンツの流通を妨げていると感じていました。

安宅: そうですね。沢山の作品が生まれている中で、翻訳されるコンテンツは経済性があるものに限定されてしまいます。トップの作品はきちんとプロの翻訳者が翻訳を担いながら、もっと翻訳される作品の裾野を広げるために、ファンの力を借りられないかというのがコンセプトです。実際に、ファンが勝手に翻訳したり、動画に字幕を付けたりというのは文化としてあって、違法ではあるのですが、それがコンテンツの拡散を支えている面もあります。それをオフィシャルでやれれば、制作側もファン側にも良い形が作れるんじゃないかなと。

土本: まずは「アニメ!アニメ!」の記事を翻訳して、グローバル版のサイトを立ち上げるということで、メディアにとっても海外展開は言語の壁があり何度もチャレンジしながらなかなか実現できてこなかったのですが、ファンの力を借りることで実現できるとメディアにとっては非常に大きいと感じています。

三瀬: 翻訳するのはコンテンツや記事に限らないと思っています。例えば、アニメ会社の公式ツイッターの投稿を翻訳するようなことができれば、海外へのマーケティング支援にも繋がりますし、コンテンツの翻訳はハードルが高くても、数百文字のつぶやきの翻訳になら貢献できるというファンも増えると思っています。

Tokyo Honyaku Questのトップページ(近日実証実験が開始予定)

―――Tokyo Honyaku Questで工夫したのはどのような点でしょうか?

安宅: 翻訳を仕事ではなく、楽しんでやってもらおうという味付けを沢山していました。最初のコンセプトは結構真面目に翻訳という雰囲気だったのですが、三瀬さんに「翻訳もエンタメにしたい」と言われて、だいぶ方向性が見えました。

三瀬: 最初は「Tokyo Honyaku Quest」というタイトルもなく、絵もそっけない感じだったのが、ドット絵のイメージが出来てから、やりたいことが明確になった気がしました。bitFlyerは金融出身者が作った会社で、仮想通貨交換業も金融よりの真面目な事業です。でも、それだけじゃブロックチェーンの世界は伸びないと思っていました。そういう意味で、このプロジェクトは私にとっては大きな意味があって熱意で推し進め、社内でのコンセンサスもそこそこに最後は加納社長に直談判をして何とか進めることができました。

ただ、エンタメの側面もありますが、「miyabi」を使ったブロックチェーンの設計は大真面目で、弊社CTOの小宮山がちゃんとブロックチェーンを使う意味が出るようこだわって作りました。翻訳者の仕事の実績をブロックチェーン上に記録されていくので、翻訳者としてキャリア構築の一助になるようなものにできればと思っています。

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エンタメらしさを目指した、ロゴ

―――「Tokyo Honyaku Quest」ではHONというトークンが発行されますが、どのような使い道を想定されているのでしょうか?

安宅: アニメ、マンガ、ゲームが好きな人が、普通には買えないような特別なアイテムや特典と交換できるトークンになります。また、「オタクコイン」とも交換性を持たせる予定です。秋葉原の店舗で使えたり、ECで使えたり、法定通貨的な価値はありませんが、オタク経済圏の中で活用できるものにしたいと思っています。

三瀬: HONを持っていること自体が価値の証明にもなると思います。持っているということは優秀な翻訳をしてくれたということですから。フォロワーが沢山いることがインフルエンサーの証明になるように、HONを持っていることがコンテンツに大きな貢献があり、翻訳者として優秀だという証明になるのではないでしょうか。

―――プロジェクトの反響はいかがでしょうか?

安宅: 実証実験の開始前から、翻訳者の候補を募集していて、実に1200人を超える候補者が集まりました。やはりコンテンツに貢献したい、関わりたい、という熱量は凄いものがありますね。彼らに、Tokyo Otaku Modeの採用にも使っているような本気のテストを受けてもらって、約30名の翻訳者に最初は参加してもらう予定です。日本のアニメやマンガを読んで日本語を勉強してきたような猛者が揃っています。実証実験では対象者を絞りますが、徐々に参加者を広げていく予定です。

―――1200人とは凄いですね

安宅: HONという対価がトークンで支払われるにせよ、仕事ではなく、好きなものへの貢献にこれだけの人が集まるというのは象徴的な出来事だと思っています。これからロボットとAIの時代が来ると、人は働かなくても最低限の生活ができるようになります。ベーシックインカムのような議論もあります。するとお金や通貨の重要性は減っていくことになります。じゃあ暇になった人間が何をするのかというと、好きな事に打ち込んだり、人や社会に貢献するという欲求が出てくると思うんです。プロとして対価を貰う人がいる一方で、地域の祭りを運営するのに対価は求めないですよね? そういう人間らしい貢献ができる一つの場所を作れると良いなと思います。

三瀬: まさに安宅さんと同じ意見で、最終的には働かなくても良い世界を作るために働いているのかなと思います(笑)。多くのものが機械に代替されていくなかで、好きなことをやっていることが価値になる、そういう世界を作りたいと思います。

―――最後に意気込みを聞かせてください

安宅: 一定の規模のある3社が集まって、トークンエコノミーというチャレンジングなことをやっているというのはそれだけで稀有な事かなと感じています。開発を進める中で、手応えも徐々に掴んできているので、成功に向けて頑張りたいと思います。3社の価値観が揃っているので、良いものができるんじゃないかという確信があります。

三瀬: bitFlyerでは創業時からのバリューである「Passion, Execution, Number」という言葉をよく使います。情熱・実行・数字ですね。情熱をもって実証実験まで漕ぎつけることができましたが、更に数字にもこだわりたいと思っています。単に売上、利益という数字だけではなく実際に世の中にインパクトを与えることが数字だと思っています。良いものを作ってこのプロジェクトが広がっていくように今後も進めていければと思います。

土本: メディアはコミュニティだと思っていて、トークンエコノミーとメディアは相性が良いコンセプトだと思っています。「Tokyo Honyaku Quest」は一見すると翻訳プラットフォームの機能を備えていますが、コンテンツを愛する人たちが、それをより広めようという情熱を持って集まるコミュニティでもあると思います。その力を借りて、日本のコンテンツを世界に発信するお手伝いができればと思います。また、「アニメ!アニメ!」のグローバル展開も、ファンの力を借りて海外に展開していくという形を作れるとメディア業界にとっても非常に価値があるのではないかと思っています。

―――ありがとうございました。

本プロジェクトに参加するbitFlyer blockchainの加納代表も登壇するイベント「ブロックチェーンとメディアのこれから」を8月28日(水)に丸の内で開催します。詳細はこちらから

MIは株式会社イードが運営しています

特集: ブロックチェーンとメディアのこれから

  1. 活用が広がるブロックチェーン領域のカオスマップを大公開!全135の企業・サービスを掲載
  2. メディアにおけるブロックチェーン技術の活用とは? 著作権管理と許諾のプラットフォームにも取り組む、コンテンツジャパンの堀代表に聞く
  3. ブロックチェーンで資本主義的な世界を超える!全領域に積極投資を進めるgumi國光会長に聞く
  4. 「ゲーム遊ぶ」だけで生活できる未来を作りたい、ゲーム領域のトークンエコノミーに挑む「GameDays」・・・イード宮崎氏
  5. NFTを使った音楽の原盤権や3Dデータ流通にも取り組む、ブロックチェーンの社会実装を目指すBlockBase真木社長インタビュー
  6. トークンを使ったコンテンツの翻訳プラットフォーム「Tokyo Honyaku Quest」について、Tokyo Otaku Mode、bitFlyer blockchain、イードの3社に聞く

登壇者が出演するイベントは28日(水)に開催

Media Innovationのオフラインイベント「Media Innovation Meetup」では、8月も特集と同じく「ブロックチェーンとメディアのこれから」というテーマで、4名の方をお招きして8月28日(水)に開催します。ぜひお誘い合わせの上、ご参加いただければ幸いです。

■概要
日時 2019年8月28日(水) 19:00~22:00
会場 Vacans Space5 〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビル B1F
主催 株式会社イード

■スケジュール
18:30 開場
19:00 開演、主催者挨拶
19:05 各登壇者からプレゼンテーション
    株式会社イード 宮崎紘輔 部長
    BlockBase株式会社 真木大樹社長
    株式会社gumi 国光宏尚 会長
    株式会社bitFlyer blockchain 加納裕三 社長
20:15 パネルディスカッション
20:50 懇親会
    軽食とドリンクを用意します
21:45 終了

チケットはPeatixで販売中です。

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