ブロックチェーンで唯一性が担保された資産であるNFT(ノン・ファンジブル・トークン)。非常に高額で取引されるなどの話題が尽きないNFTですが、これによってデジタルコンテンツはどう変化していくのか、最前線で取り組まれている方に話を伺います。
デジタル・物品の真贋証明やガバナンストークン、コンテンツがボトムアップで生み出されるゲーム「Loot」の出現―――「NFTによって従来と異なる世界観が生まれた」と語るのは、Tokyo Otaku Mode(以下、TOM)の取締役副社長COO、一般社団法人オタクコイン協会立ち上げの中心メンバー、「パジちゃんねる」のYouTuberとしても活躍する安宅基(あたか・はじめ)氏。最新テクノロジーによってアップデートされる世界をウォッチし続けてきた安宅氏が、NFTを使ってどのような未来を描こうとしているのか、お話を伺いました。
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株式会社Tokyo Otaku Mode 取締役副社長COO
元攻略本ライター。フリーエンジニアを経て、2009年11月にTwitterを活用したリアルタイムQ&Aサービスを開発し法人化、その後事業売却の形でバイアウトした。続いてTokyo Otaku Mode創業に参画。COO & Co-founderとして米国シードアクセレーター 500 Startupsのプログラム参加。EC事業など新規事業開発及び事業全般の統括を行う。
目次
NFTとブロックチェーンの結びつきで感じた無限の可能性
―――安宅さんはNFTに関して先進的な取り組みをされていますが、きっかけは何だったのでしょうか。
2014年の夏頃にはTOMの越境eコマース事業でビットコインを決済手段にしたら面白いのではという話があり、暗号資産の取引所から営業も来ていたんですが、信用性も低いしお金に目ざとい人たちが関わっているという印象しかなくて、正直あまり関わりたくないと思っていました(笑)。
それからしばらくして、2017年秋にビットコインが盛り上がり始めたので、なぜこんなに騒がれているんだろうと調べてみたら、そこで初めてブロックチェーン技術とつながることを知ったんです。周りにブロックチェーンで起業している人もいて、規模感やトークン発行の可能性も分かってきました。さらに調べるとNFTの概念もできあがっていて、すでに『クリプトキティ』も開始されていたと思います。
コンテンツとの相性は抜群だなと思い、活用法を考え始めた矢先に、18年に流出事件で一度下火になって。21年の再燃を期に改めて可能性を模索し始めたら、Discordの参加権やメタバース上のイベントチケットに使えそうだということが見えてきました。
Vine(ヴァイン:6秒動画のSNS)創業者のDom Hofmann氏が立ち上げた「Loot」では、NFT保持者に、コミュニティで自発的に作られたガバナンストークン(投票機能が付与されたトークン)が付与されたりして、無料で手に入れたNFTやトークンが数日で数百万円の価値がついたりと、コンテンツ創出時に金銭的インセンティブが合体したようなNFTで、組み合わせ次第で可能性は大きく広がるんじゃないかと思います。
―――『クリプトキティ』が出てきたときはどう感じましたか?
インターネット上でデジタルデータの数が限定できるという概念は今までなかったですよね。僕は「在庫を定義できる」という言い方をしていますが、グッズ販売でも数量限定品はよく売れます。マーケティング的な観点からも数量限定で所有権が明確にできるといろんなことができるし、高価なアート作品よりは大勢の人がファンアイテムやコレクションとして買える1,000円、2,000円くらいの方がマーケットが大きい。日本発のIPとの相性がいいことは感じました。
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―――「デジタルデータの所有はコピーと同じ」と言う人にはどのように理解してもらえばいいでしょうか?
僕がよく用いるのはモナリザの例です。モナリザのレプリカがたくさんある中で、鑑定書が付いた本物だけが数百億円以上の価値があるわけですよね。デジタルだと全く同じものなんだけど、“本物を誰が持っているか”を世界中に証明できることが価値だと思うんですよね。レプリカでは満足できない、と言う点に尽きると思います。
NFTは売買されたログが必ず残るので、偽物が出てこない。金銭的価値もトラッキングできるので、物理的なモノをやりとりするより確実性が高いと思っています。正規流通している商品をどう本物と証明をするかというところで、例えば、納入先で検品してシールや刻印でQRコードを入れておけば、本物と証明することができる。デジタルの場合は、それはブロックチェーンでないとできないんです。
ツイッターのアカウントや公式サイトでコントラクトアドレスを告知すれば、買った人が照合して本物であることや限定性を確実に証明できます。物理的なモノだと見比べてもよくわからないんですよ(笑)。そういう意味では、今後ブロックチェーンに情報を載せることがすごく重要になってくると思います。