なぜいい記事を書いてもPVは増えないの?・・・新連載「メディアってオワコンですか?」(第1回)

本連載「メディアってオワコンですか?」は、近年高まるメディア不信や厳しいビジネス環境など、メディア人が顔を合わせれば「いやー厳しいですよ」と言う現状に、一石を投じたいシリーズです。多様なメディア業界の中で、「突き詰めている人」や「偏愛」を持つ人々をインタビュー。メディア人が抱える課題へのヒントや、メディアの魅力を再認識できるコンテンツをお届けします。「メディアってやっぱ面白いじゃん」と思ってもらえたら幸甚です。

「データ分析をして、メディアを改善しよう」

メディア界隈にいる人なら、よく聞くフレーズですよね。でも、“本当に”できていますか?

「GAを見て、コンテンツを改善しようとするだけじゃ甘いんですよね」

連載第1回目は、元スマニューで現在データコンサルティングをしている田島将太さんにインタビュー。メディアにおける「データ分析の活かし方」を話してくれました。

東京大学教養学部卒業。2016年9月スマートニュース株式会社に入社後、2019年11月に独立。現在はデータ分析を中心としたコンサルティングを行う。

「いい記事を書いていればPVは伸びる」が実現しないワケ

―――「データ分析」してコンテンツをよくしていこう!と言いつつ、なかなか上手くいかない現場も多いのではないかと思います。

田島 うーん、メディアにおいてデータ分析は、「個々のコンテンツをどう変えるか」よりも「チームビルディング」に有用だと思うんです。

メディアの成長に最も大事なのは「良質な独自のコンテンツ」で、それは過去のデータを見ているだけではなかなか生まれてきません。データはコンテンツを考える道具というよりも、むしろ意思決定の共通言語として使う方が、メディアにとっては価値を発揮できるのではないかと思います。

データを活用したチームビルディングが必要になってくるのは、メディアが「第2フェーズ」にいる時です。日本のメディアではほとんどの場合、PVが指標になっていますよね。このPVを「記事数×記事あたりの表示回数×CTR」と“分解”しているのが「第1フェーズ」です。

最初は組織が小さいので、「記事数」は伸ばす余地があるし、「記事あたりの表示回数」もSEOや配信などによって、「CTR」もWeb向けのタイトルをつけることで増やしていけます。

ただこの“分解”はいずれ天井に当たります。組織は無限に大きくならないので、「記事数」は増やしづらくなる。無理に増やそうとすれば、「クオリティと量のトレードオフ」になってしまいます。

「記事あたりの表示回数」も配信先、プラットフォームとの力関係がありメディア側から増やそうとするのは難しい。「CTR」は突き詰めれば突き詰めるほどメディアのポリシーから外れていく。この“分解”は初期には有効ですが、どこかで壁にぶち当たってしまうんです。

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そこで次の段階としてPVをどう“分解”するかというと、「読者数×読者が月あたり何回来てくれるか(訪問頻度)×訪問あたりの回遊率」と、もう少しエンゲージメントに沿った指標に変えるわけです。

この“分解”を使う時に難しいのは、編集部でコントロールしづらいものが増えることです。第1フェーズの記事数や配信先はコントロールできますが、「訪問頻度」や「読者数」はコントロールしづらい。ここで編集部に編集以外の人が必要になってきます。

その際、編集以外の人間、つまりエンジニアやアナリストなどと議論する「共通の土台」がないことが多いんです。編集部の「暗黙知」を編集以外の人間に伝えるのは、なかなか難しいですよね。議論をするための「共通の土台」を作るには、データ分析が一番いいのではないかと思っています。

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【12月6日更新】メディアのサブスクリプションを学ぶための記事まとめ

デジタルメディアの生き残りを賭けた戦略の中で世界的に注目を集めているサブスクリプション。月額の有料購読をしてもらい、会員IDを軸に読者との長期的な関係を構築。ウェブのコンテンツだけでなく、ポッドキャストやニュースレター、オンライン/オフラインのイベント事業などメディアの立体的なビジネスモデルをサブスクリプションを中核に組み立てていく流れもあります。

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