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【解説】18のデータで知る広告の現在地・・・特集「メディアと広告のこれから」

MIの7月特集は「メディアと広告のこれから」。メディアにとって最大のビジネスモデルとなってきた広告が大きく変わろうとしています。新型コロナウイルスによる市場の変化、世界的なプライバシー規制への対応、アドフラウドやブランドセーフティへの取り組み、商材やクリエイティブの品質、こうした広告の変化にメディアはどう付き合っていけば良いのか。当事者への取材から探ります。

特集「メディアと広告のこれから」の初回では、広告の現在地を探るべく、18のデータを紹介していきます。数字やデータから、広告のこれからを考える起点にできればと思います。

ついに最大となったインターネット広告費

まずは市場の全体動向から。インターネット広告は媒体別でテレビを抜き、最大のセグメントとなりました。その規模は2兆円を超えます。

電通「日本の広告費2019」より作成

一方で、その大半は運用型広告という点にも着目する必要があります。それ以外の媒体に直接落ちる純広告やタイアップの規模は3300億円程度で、成長がほぼない事がグラフからも分かります。成長の果実はグーグルなどのネットワーク広告が得ているのです。

2019年の大きなトピックはヤフーとLINEの経営統合でしょう。両社を合わせた年間の広告事業規模は4600億円以上。2兆円の約3割を占める巨人が誕生することになります。

ヤフーは2019年4月~2020年3月、LINEは2019年1月~12月、決算発表資料より

世界的に見ても寡占傾向が伺えます。グーグル、フェイスブック、アマゾンといった巨大プレイヤーが米国でもインターネット広告市場の7割を占めるという構造です。

eMarketerの2019年2月の予想より

グーグルはネットワーク広告を媒体社に掲載してもらうことで巨大なネットワークを構築しています。しかし、その規模はグーグル全体の広告事業のわずか15%程度に過ぎません。大半は検索やYouTubeといった自社の面に落ちています。ただ、媒体社に配分する額は年間で1.5兆円にもなります。この金額を世界中のパブリッシャーが争奪戦を繰り広げています。

アルファベットの2020年1Q業績発表より
パブリッシャーに対する還元率は公式発表から

新型コロナウイルスによる打撃

年初から世界的に感染が拡大している新型コロナウイルスは広告市場に大きな打撃を与えています。2020年は世界全体で7%の減少、日本は14%の減少という予測があります。

MAGNAによる調査より

ただし、デジタルは踏みとどまっています。調査会社のMAGNAと、米国の業界団体のIABによる2つの調査を下記にまとめました。MAGNAは世界全体、IABは米国で、かつMAGNAは2019年と2020年の比較、IABは2019と2020年Q3,Q4の比較という形ですが、傾向は変わりません。

MAGNAによる調査 / ※IABは2019年に対する3Q/4Qの成長率予測

日本でも影響が見られます。博報堂の速報値でも、5月・6月と時間が経つにつれ影響が深刻化していることが伺えます。特に新聞、雑誌、テレビの影響が大のようです。

博報堂の月次売上高推移より

この動きはメディアの収益に影響を与えています。ニュースアプリ大手のGunosyの業績ではQ4(2-5月)で大きく広告が落ち込んだ事が分かります。

Gunosy 2020年5月期 決算説明資料より

さらにGameWithは広告のPV単価と、視聴単価の落ち込みを報告しています。2019年Q1を100とした場合、2020年Q4は80と70。約2-3割の下落があったようです。

GameWith 2020年5月期 決算説明資料より

広告主のデジタル広告に対する意識

ここからは広告主がデジタル広告に対して抱いている意識について紹介します。まずは懸念点として挙げられたのは「アドフラウド」「ブランドセーフティ」といった事です。

「アドフラウド」は広告の不正クリックや表示など、適切ではない手法で広告費が消費されるという手口を指します。「ブランドセーフティ」はブランドを毀損しないメディアに広告が掲載できているかという議論です。

Advertiser Perceptionsの調査より(2018年11月)

最も懸念として挙がっている「アドフラウド」は減少傾向にあるという報告があります。

White OpsとAssociation of National Advertisersの調査より(2019年1月)

また「ビューアビリティ」(画面の中にきちんと表示されているか)という点でも改善が見られます。

Integral Ad Scienceの調査より(2020年4月)

読者の広告に対する意識

一方で読者の側として広告をどう捉えているのでしょうか?

日本のJIMA(日本インタラクティブ広告協会)の調査によれば、広告に対するネガティブな意見としては、「何度も同じ広告が表示される」「紛らわしい広告の存在」「ターゲティングへの嫌悪感」などが挙げられています。

「2019年インターネット広告に関するユーザー意識調査」調査結果(2019年12月)

こちらは米国での調査ですが、広告を非表示にする「アドブロック」というソフトウェアを利用する理由を聞いたものです。こちらでは「広告が多すぎる」「無関係なものが表示される」「煩わしい」といった事が挙げられています。

Global Web Indexの調査より(2019年4月)

こちらも米国の調査ですが、「アドブロック」の利用率は確実に上がっていてメディアの収益にも悪影響を与えています。読者に嫌われない広告を実現していくのは急務であると考えられます。

eMarketerの調査より(2019年7月)

プライバシーも懸念されています。iOS14からスマホ端末を特定するIDであるIDFAの利用が同意ベースに変更になりますが、それに先立ってiOSの設定から「追跡型広告を制限」という機能を利用してトラッキングを拒否しているユーザーが米国では30%を超える規模となっているようです。Androidでは機能の違いから同種の設定をしているユーザーは限定的ですが、プライバシーを考慮した広告のあり方が求められています。

Singularの調査より(2020年3月)

最後に広告に対する期待をまとめます。JIMAの調査では広告の存在によって「メディアが無料で提供される」「新製品を知ることができる」「新たな発見ができる」というメリットが認識されていることが分かります。広告はこうした期待を裏切らないあり方が求められるでしょう。

「2019年インターネット広告に関するユーザー意識調査」調査結果(2019年12月)

以上、18枚のデータから広告のいまを俯瞰してみました。特集とイベントで「メディアと広告のこれから」を考えていければと思います。

特集: メディアと広告のこれから

1.【解説】16のデータで知る広告の現在地
2.【インタビュー】動画広告だけじゃない、全方位でパブリッシャーの広告ビジネスを支援するTeads
3.【インタビュー】IDFA後のアプリ広告はどうなる? アプリ計測最大手のAdjustに聞く
4.【インタビュー】ヘッダービディングに留まらず多彩なテクノロジーでパブリッシャーを支援するFLUX
5.【インタビュー】有力メディア28社が結集、「コンテンツメディアコンソーシアム」BI.Garageに聞く
6.【インタビュー】「嫌われモノの<広告>は再生するか」境治氏

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Manabu Tsuchimoto
Manabu Tsuchimoto
デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。

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