トランプ追放は正しかったのか、ジャック・ドーシーの苦悩【Media Innovation Newsletter】1/17号

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トランプ追放は正しかったのか、ジャック・ドーシーの苦悩【Media Innovation Newsletter】1/17号

おはようございます。Media Innovationの土本です。今週の「Media Innovation Newsletter」をお届けします。

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今週のテーマ解説 トランプ追放は正しかったのか、ジャック・ドーシーの苦悩

ツイッター創業者でCEOのジャック・ドーシー氏がTwitterで11連発のツイートで、先日のトランプ大統領のアカウントの永久停止について説明しました。

先週のニュースレターで解説したように、トランプ大統領は6日、ワシントンDCで行った集会で聴衆に対して、大統領選挙の結果を最終的に確認する作業が行われてる連邦議会に向かうように訴え、それを受けた群衆(=今は反乱者と呼称されている)が議会に乱入。計5名が死亡する事件となりました。暴力によって選挙結果を覆そうとする、民主主義を破壊しようとする行為を大統領本人が煽り、その後のツイートでも正当化するような言動を見せた事に批判が集中しました。

Facebookが次期大統領の就任までアカウントを停止したほか、Twitterは永久停止を決定。YouTube、Snapchat、Twitch、Instagram、TikTokなど多くのソーシャルメディアが後を追いました。また、決済プラットフォームのStripeは献金サイトでの利用を停止。また、検閲のないソーシャルメディアとして今回の事件でも活用されていたというParlerを巡ってはアップルとグーグルがアプリを削除。アマゾンはAWSのホスティングを停止するという決定を下しました。

議会への乱入は民主主義を破壊するような行為だとして強く批判される一方で、私企業であるプラットフォーム企業が一致すればインターネットが抹殺するような事が出来てしまうという強大さを持っている事をどう捉えるべきか、議論が噴出している状況です。論点は非常に沢山あるわけですが、一例すると、

  • 現職の大統領の発言を遮断することは公共の利益に資するのか
  • 遮断するという決定には私心がなく透明性のあるプロセスがあったのか
  • 私企業の決定であるとはいえ、法律にする裏付けが求められるのではないか
  • 掲載内容をコントロールする以上、プラットフォームではなくメディアとして捉えるべきではないか
  • 強大なプラットフォーム企業を適切に監督する法的枠組みが必要ではないか

といった事が挙げられます。冒頭のドーシー氏の発言は非常に示唆に富みますので、紹介したいと思います。

ジャック・ドーシー氏のツイート12連発

「Twitterから@realDonaldTrumpを追放したことや、どうしてこうなったのか、私は喜びも、誇りも感じていません。このような措置を取ると警告した後、Twitter内外での身体的安全への脅威がもたらされているという信頼すべき情報に基づき、これを決定しました。これは正しかったのでしょうか?」

「これはTwitterにとっては正しい判断だったと思います。私達は異常で手に負えないような状況に直面し、全ての行動を公共の安全に焦点を当てなくてはなりませんでした。オンラインでの言論に基づく、オフラインでの被害は明らかに現実のものになっていて、私達のポリシーの適用を後押ししました」

「とは言え、アカウントを追放す事は大きな影響をもたらします。明らかに異常な事態ではありましたが、健全な会話を実現するという目標に私達は失敗したと感じています。そして私達の業務や取り巻く環境を省みるタイミングです」

「こうした行動を取ることは世間の会話を分断します。私達を分断します。物事の解明や贖罪、学習の可能性を制限します。そして、個人や企業が世界的な公での会話に対して大きな影響を与える危険な前例をもたらすことになります」

「このような力に対する監視と説明責任は、Twitterのようなサービスが担っているのはインターネットという巨大な言論空間でのほんの一部に過ぎないという事実が常につきまとっていました。もし人々が私達のルールに同意しないのであれば、他のサービスを利用すればいいのです」

「この考え方は他の数多くの基礎的なインターネットツールが、彼らが危険だと思うものをホストしない事を決めた時、大きな挑戦に直面します。私はこれが協調的に行われたとは思っていません。各企業が独自の結論に達したか、あるいは他の企業の行動に刺激されたという可能性が高いと思います」

「いまこの瞬間にはダイナミックな動きが必要かもしれませんが、長期的にはオープンなインターネットの崇高な目的と理念を破壊することになるでしょう。企業が自身を節度あるものとするためにビジネス的な決断をすることは、政府がアクセスを排除することとは異なりますが、同じようにも感じます」

「私達は皆、自分たちのポリシーとその適用に間にある矛盾を批判的に見る必要があります。私達のサービスがどのように気晴らしや危害を煽るか見極める必要があります。私達はモデレーションにもっと透明性を持たせる必要があります。これは自由で開かれたインターネットを侵害する事はないでしょう」

「これが私がビットコインのモデルにこれほど情熱を注いでいる理由です。どんな個人も主体もコントロールしたり影響を与えたりする事が出来ません。これはインターネットが進化を望む方向で、時間が経過するにつれ、より多くのものがそうなっていくでしょう」

「私達はソーシャルメディアのためのオープンで分散化された標準のためのイニシアチブに資金を提供する事で役割を果たそうとしています。私達のゴールはインターネットの公開された会話のための標準クライアントになることです。それは@Blueskyと呼ばれています」

「構築には時間がかかります。私達はゼロから標準を作ることも、既に存在するものに貢献することにも視野に入れながら、面接を行い採用をしているところです。最終的な方向性がどうであれ、私達は透明性をもってこの仕事を行っていきます」

「今は世界中の人々にとって、大きな不確実性と闘争の時代である事を認識するのが大事です。この瞬間の私達の目標は、できる限りの武装解除を行い、より大きな共通理解を作り、もっと平和な存在になることです」

「私はインターネットと世界的な公共の会話がそのために最善で最適な方法だと考えています。また、今日はそれが実現できてないことも認識しています。この瞬間に私達が学んでいることは、私達の努力を後押しし、私たちが協働する社会を前進させるでしょう」

健全性と透明性を第三者的に担保する仕組みを

ドーシー氏のコメントからは力を持ち過ぎてしまったプラットフォームを健全に維持していく事への苦悩が見て取れます。同氏はブロックチェーンに言及し、分散型で透明性のある意思決定システムの可能性を示唆しています。

言論の自由を主張する人でも、ソーシャルメディアで犯罪を扇動したり、暴力を煽ったりする自由を求める人は少数派でしょう。これまでもソーシャルメディアは自主的な取り組みとして、社会的な規範から外れる投稿に対してはモデレーションを行ってきましたし、アカウントの停止措置も行われてきました。しかし、退任直前とはいえ、選挙で選ばれた現職の大統領までその対象となった以上、より透明性が求められるのは当然でしょう。

将来的にはブロックチェーンなどで自律分散的なプロセスを目指すとして、短期的には業界を横断した第三者機関を設けて各社のモデレーションの状況を監督していく形になるでしょうか。また、Parlerのような「言論の自由」を盾に社会一般の規範から外れるようなメッセージを黙認するプラットフォームを許容しない枠組みも求められると思います。

皆さんはどうお考えでしょうか?

今週の人気記事から 緊急事態宣言で再びイベントは5000名以下に

1都3県での緊急事態宣言の発出から一週間が経ちました。先日には更に7府県にも拡大されています。これを受けたガイドラインではイベントの開催について、5000名以下もしくは収容率50%の少ない方と規定されています。様々な事業に大きな影響があると見られますが、感染拡大阻止の為には致し方ない措置でしょうか。

ただ、緊急事態宣言に入っても前回のように人通りは減少していないと様々なデータで報じられています。緊急事態宣言は2月7日までとされていますが、新規感染者数や重傷者数が大きく減少する事が無ければ長期化も懸念され、より厳しい状況となってしまう可能性もあります。

1.再び緊急事態宣言、イベントは5000人もしくは収容率50%以下を目安

2.「静岡新聞SBSはマスコミをやめる。」企業変革に取り組む静岡新聞社の決意

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会員限定記事から グーグルのサードパーティクッキー廃止を英当局が調査

会員限定記事では、グーグルがサードパーティクッキーを廃止して、プライバシーサンドボックスという新しいシステムを導入する事について、広告における独占をより強化する動きではないかと英国の競争当局が調査を開始したというニュースが最も注目を集めました。

クッキーは広告におけるターゲティングや効果計測に幅広く利用されている技術ですが、プライバシーへの懸念から、利用を制限する動きが広がっていて、グーグルもChromeブラウザで2022年には利用を制限する予定です。これの代替としてプライバシーサンドボックスという技術を提供するとされていますが、これが独占強化策なのではないかという疑いのようです。

本件に関しては今月の特集でも取り上げていく予定です。

1.グーグルのサードパーティCookie廃止は独占強化に繋がるか、英当局が調査開始

2.「パブリッシャーには今がチャンス」theLetter 濱本氏が語るニュースレターのこれから

3.【朝日新聞社】変化に柔軟に、デジタルシフトを率いていく存在を求める…「メディア就活最前線」#3

4.Facebookのニュース配信アルゴリズムがまたも更新…オリジナル性に乏しい記事は表示頻度が低下

5.フェイスブック、「ページ」に関するアップデートを発表…「いいね」が廃止

6.2020年にメディア業界で失われた雇用は3万人強で過去最多、ニュース関連でも…米国調査

7.なぜメディアはデジタルトランスフォーメーションに失敗したか、サウス・チャイナ・モーニング・ポストCEOが語る

8.印刷工場を再編する米新聞社…タンパベイ・タイムスはガネットに委託、シカゴ・トリビューンはオフィスを移転

9.グーグル、オーストラリアでニュースを検索から排除する実験

10.リゾート運営会社、メレディスから雑誌「トラベル・アンド・レジャー」を1億ドルで買収…会員制旅行ビジネス拡大へ

編集部からひとこと

昨日、今日と初のセンター試験あらため共通テストが実施されています。新型コロナウイルスという前例のない事態で何とか戦ってきた受験生の皆様が良い結果を掴める事を祈っています。そして受験情報は弊社のリセマムで!(宣伝)

《Manabu Tsuchimoto》

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デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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