クラウドソーシングを用いた一般人によるファクトチェックがプロのファクトチェッカーによるものとほぼ同水準であるという研究結果を、マサチューセッツ工科大学が発表しました。
今回の実験では、フェイスブック上で「要ファクトチェック」とフラグ付けされた200以上のニュースストーリーを対象に、1,128人の一般人と3人のプロがファクトチェックが行われています。そして、12人から20人の一般人による判定水準はプロのファクトチェッカー3人に相当するという結果が得られました。この水準は、政治的な中立性や政治への関心、分析的思考力の高さが大きいほど、高くなるようです。
また、クラウドソーシングが膨大なファクトチェック実施への解決に期待される一方、誰でも参加できてしまう仕組みにならないよう注意する必要があるとも述べられています。
SNSに蔓延るフェイクニュース
[MMS_Paywall]
現在、SNS上でフェイクニュースが拡散されてしまうことが問題となっています。ワシントンポストによれば、2020年の米選挙シーズン中、フェイスブックでフェイクニュースを多く発信しているパブリッシャーの記事が、CNNやWHOなどの信頼性の高いニュースソースの記事の6倍もの反応(「いいね」やシェアなど)を得ていたことがわかったとのこと。
フェイスブックはこの報告に対して、計測に使われたエンゲージメントはユーザーが実際に記事を見た回数に等しくない、と反論し、60の言語に及ぶ80のファクトチェックパートナーと協力してフェイクニュース対策を行っているとも主張しています。
このように、蔓延るフェイクニュースに対するファクトチェック体制の強化は必須と言えるでしょう。しかし、今回の実験を行ったMIT研究者のJennifer Allen氏によれば、ファクトチェックの大きな課題として、チェック対象が多すぎてプロのファクトチェッカーがカバーしきれないことがあると言います。そこでMITの研究者が提案する方法が、一般人によるファクトチェックです。
一般人によるファクトチェック
今回MITは、Amazonが運営するクラウドソーシングサービスMechanical Turkにて一般人を1,128人募り、フェイスブック上でフラグ付けされたニュースのファクトチェックを依頼しました。総数208件の記事から1人あたり20件を担当し、見出しと導入文から7項目の質問に回答することで真偽をスコアリングしていく形です。同時に、プロのファクトチェッカー3人が同じ記事を判定することで、一般人による判定との相関を確認していきます。
実験では、12人から20人の一般人によるファクトチェックが3人のプロによるものとほぼ同水準である結果が得られました。多くの分野で見られる、「一般人がグループを組むことでプロや専門家を凌駕する」という事象が、ファクトチェックにおいても当てはまったことになります。
さらに、参加した一般人を民主党支持者と共和党支持者が同じくらいになるようにグループ分けすると、より水準がプロのものに近づくことも分かりました。これは、両翼の考え方を取り入れた政治的中立性が高いほどファクトチェックの精度が上がると言えるでしょう。また、参加者に政治的知識や分析的考え方を試すテストを行ったところ、テストの結果が良い参加者ほどプロの判定に近くなることも分かったようです。
クラウドソーシング実用化への課題
クラウドソーシングを活用することで、ファクトチェックの数の問題を解決できる可能性が見えてきました。しかし、大きく2つの課題があると今回の研究を主導するJennifer Allen氏は指摘しています。
1つは、参加する一般人の素性です。クラウドソーシングで誰でも参加できるようになってしまうと、政治的に中立でない参加者によって判定が大きく偏ってしまう可能性があります。政治的中立性を高めるために、どのようにファクトチェック参加者を選別すべきなのか、その仕組みを組織は考える必要があると述べています。
2つ目は、どのようにして一般人に参加を促すかです。クラウドソーシングによるファクトチェックでは多くの人数が必要となってきますが、政治的に関心があり、労力をかけて誤りを正したいと思っている一般人はそう多くはないでしょう。組織は、どのような方法で人々にファクトチェックを行いたいと思わせるかを考える必要があるというこ