【特集】Web3とは何か? インターネットの新たな革命は何をもたらすか

Web3という言葉が様々な場所で聞かれるようになりました。グーグルトレンドによれば日本では昨年11月から突如として言及されるようになり、12月、1月と一気に検索回数が増加して事が分かります。これは世界でも同様の傾向で、昨年後半から大きな盛り上がりを見せていま…

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Web3という言葉が様々な場所で聞かれるようになりました。グーグルトレンドによれば日本では昨年11月から突如として言及されるようになり、12月、1月と一気に検索回数が増加して事が分かります。これは世界でも同様の傾向で、昨年後半から大きな盛り上がりを見せています。

出典: Google Trendの日本国内での「Web3」の検索ボリューム

米投資銀行のゴールドマン・サックスは、12月に公表したレポートの中で、「Web2.0は中盤から後半に差し掛かっている。Web3の流れはコンピューティングの進化と同様に、いま議論されている様々な規制よりも遥かにインターネットの業界構造を変える可能性がある」と指摘しています。

インターネットでチャンスを掴んだ起業家たちも相次いでWeb3に言及し、ゴールドラッシュの再来を予期しているようです。Web2.0の象徴とも言えるフェイスブックは、社名をメタに変更し、Web3の重要な要素であるメタバースに集中する考えを示しました。

著名VCのアンドリーセン・ホロウィッツのゼネラルパートナーであるアンドリュー・チェン氏は「Web3が一時的な流行やバブルだと考えている人々は、多くの合法的なスタートアップがこの領域にピボットしていっているのを無視しています。彼らはゲーム、コミュニティ、ソーシャル、クリエイターエコノミーなどの専門家であり、2022年はとてもワイルドなものになるでしょう」と述べています

アンドリーセン・ホロウィッツのゼネラルパートナーであるアンドリュー・チェン氏

Web3は、Web1.0、Web2.0の流れを汲む、インターネットの新しいバージョンであり、「インターネットが全てを飲み込む」を新しい次元で実現していきます。目端の利く起業家は大挙してWeb3の世界に踏み入れています。果たして新しいインターネットが実現するものとは。解説します。

2度目のインターネットの大進化

インターネットが誕生してから既に50年以上が経過していますが、私達が一般的に使うようになったのは1990年代の後半からです。物凄いスピードで世界に欠かせない存在となりましたが、その在り方も変化をしてきました。

当初のインターネットは「情報」のインターネットであり、誰かが発信した情報を読む、というのが基本的な使い方でした。インターネットメディアの原型もこの時期に作られました。これがWeb1.0(後からWeb2.0に対して、1.0という風に呼ばれたわけですが)、機能は Read=読む という事が主でした。

それからWeb2.0という言葉が席巻した時期がありました。2000年代中盤、ブログやソーシャルメディアが次々に立ち上がっていき、スマートフォンの登場によって、情報を受け取るだけではなく、自分自身が「発信」することがインターネットの楽しみ方になっていきました。Web2.0は Read に加えて Write=書く という機能が追加されたということです。静的だったインターネットが双方向性を持つようになりました。

そしてWeb3はブロックチェーンが組み込まれたインターネットを指します。ブロックチェーンが提供するのは信頼の構造です。ブロックチェーンはその透明性によって検証可能性をもたらし、それによって信頼を基盤にした「経済」を作り出します。発展を続けてきたインターネットは遂に経済を持ち、現実世界と平行して、人々が生活を営む場所へと進化をしていく、これがWeb3が実現するもので、Read / Write に加えて、Trust=信頼 という風に表現されます。さて、ブロックチェーンが実現する「信頼」とはどんなものなのでしょうか?

ブロックチェーンの革命

ブロックチェーンは2008年にサトシ・ナカモトと称する人物が、ビットコインの背景技術として開発したものです。いわゆるデータベースの一種ですが、データをブロック毎に記録し、チェーンのようにブロックを繫ぐ仕組みで、繋ぎの部分に高度な計算を要し、後から一部を改変すると、その後に続くブロックを全て書き換える必要があり、事実上不可能であり、対改竄性能に優れるという特色があります。

さらに誰でもノードに参加できる分散型のデータベースで、特定の管理者を必要としないトラストレスの設計になっています。データの記録は様々な方式がありますが、マイナーと呼ばれる人々が計算能力を提供し、その報酬として報酬を受け取ります。このインセンティブによって分散化が加速します。加えて、取引履歴は全て公開されていることから、誰でも検証可能で、透明性を持ったデータベースだということが言えます。

改竄が困難で、高度に分散化され、透明性があり、管理者がいない、デジタル通貨としてビットコインが誕生し、同様の通貨(仮想通貨)が次々に生まれました。そして、このブロックチェーン上に通貨以外のものを載せようというのが、イーサリアムというブロックチェーンです。イーサリアムはブロックチェーンにプログラムを乗せるスマートコントラクトという発明で、分散型アプリケーション(=DApps)が生まれました。DAppsはコードが公開される事から、透明性があり、検証可能で、DeFi(分散型金融)と呼ばれるような人々が大金を預けるプロダクトも登場しました。

ブロックチェーンアプリケーション(DApps)を支えるスマートコントラクトの仕組み。定義が公開されている事から、誰でも検証してから使うことができ、信頼性を高めることに繋がる

さらに昨年から日本でも大きな話題になっているNFTはNon-fungible Token(非代替性トークン)と呼ばれますが、絵画のような一点物のデータを、誰が所有しているかというのを証明するものです。これもブロックチェーンの特性から、信頼のおけるデータベースに担保されていることが価値を生み出しています。

このようにブロックチェーンは、Web2.0の時代のように中央の強力な管理者(プラットフォーマー)がいなくとも、信頼のおけるデータ構造を作り出すことに成功していて、自立分散的で非常にコストが安価に動作する通貨(仮想通貨)、モノ(NFT)、プログラム(DApps)といったものを生み出しました。これらの要素を活用することで、インターネットに新しい価値がどんどん生まれるだろうというのがWeb3です。

Web3によってインターネットはどう変わっていく?

(1)インセンティブ構造が変わる

仮想通貨は誰でも作り出すことができ、CoinMarketCapというサイトに掲載されているものだけでも1万7000種類を超えます。Web3の世界ではプロダクト毎に独自の仮想通貨が発行され、インセンティブ構造を作り出しています。

例えばソーシャルメディアを考えてみると、Instagramにいくら素敵な写真を投稿しても、運営元からは一円も貰えません。インフルエンサーになれば企業から案件を持ちかけられる可能性はありますが、これはInstagramの外の経済圏であって、Instagramにいくら貢献しようが広告費のシェアを得られる可能性はありません。

ブロックチェーン版のInstagramを目指すNafter。投稿をそのまま購入することができて、クリエイターが収益を得られる。

Web3のソーシャルメディアを考えると、良い写真を投稿して貢献したユーザーは独自の仮想通貨を得る事ができ、自由に売買できる、というようなインセンティブがありそうです。そこに広告を出稿したい企業はその仮想通貨を市場で購入する。あるいは投稿画像をNFTとして購入したいユーザーはその仮想通貨建てで支払う、といった形にすれば売り買いが発生して仮想通貨に価値を付けていくことができます。

ブロックチェーンゲーム(BGC、GameFiとも)もWeb3の有力なプレイヤーです。これまではパッケージを購入したり、ガチャを引いたり、ユーザーは一方的にお金を支払うばかりでしたが、遊ぶことで稼ぐ「Play to Earn」のスタイルが注目を集めています。これまで全て運営の収益になっていたものが、遊ぶことへの金銭的なインセンティブを付けることで、ゲームに注いだ労力が無駄にならない、そんなゲームスタイルを作り出すことができます。

プレイすることで仮想通貨 $SLP を手に入れる事ができ、お金を稼げるゲームAxie Infinity

このようなインセンティブ構造の変化はあらゆるプロダクトに転用可能でしょう。

(2)所有の構造が変わる

これまではあらゆるプロダクト、サービスが、作る人(企業)と、利用する人(消費者)という構造でしたが、Web3では組織の在り方としてDAO(自立分散組織)というものが注目を集めています。

DAOはトークンやNFTを所有することによって、誰でも参加できる組織で、その所有を議決権のように扱い、メンバーによる議論や投票で方針を決定し、貢献への報酬はトレジャリー(金庫)から仮想通貨で支払う、といった組織です。中央の管理者を必要とせず、契約はスマートコントラクト(予め決められたルールによってプログラムが実行される)によって自動的に執行されることから、透明性の高い組織を実現できる可能性があります。

誰でも参加し貢献できる構造とすることで、初期段階から多くのユーザーを巻き込んだプロダクト作りができる可能性があります。DAOでも独自の仮想通貨を発行し、それをメンバーへのインセンティブとして支払っていきます。プロジェクトが成功すれば、その仮想通貨も値上がりしていくことが期待でき、ストックオプションのように良いインセンティブのループを作れる可能性があります。

全てのDAOがこのような特性を持っているわけではありませんが、DAOの特徴の例です。

まだ完全なDAOと呼べる組織はありませんが、初期段階から色々な人を巻き込み、その成功を多くの人と貢献に応じて共有するDAOの思想を取り入れるプロジェクトが増えていっています。

インターネットが全てを飲み込む

「ソフトウェアが世界を飲み込む」と2011年に書いたのはウェブブラウザの始祖であるMosaicを開発し、後に冒頭でも紹介したベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツを設立したマーク・アンドリーセン氏です。

ブロックチェーンが駆動するWeb3は私達が生活する空間も生み出そうとしています。それがメタバースです。単なる仮想空間は以前からあり、「セカンドライフ」のように世界的に注目を集めたものもあります。一方、メタバースが異なるのは仮想通貨やNFTによる経済システムが最初から組み込まれていることです。単にコミュニケーションを楽しむだけでなく、メタバースの中で稼ぐ事もでき、第二の生活圏になる可能性を秘めています。

ブロックチェーンを使った3DメタバースであるDecentraland。NFTで世界が作られている

上記のようにDAOというインターネットによる新しい組織の在り方も生まれています。

ブロックチェーンによってインターネットに信頼のメカニズムがもたらされることによって、「インターネットが世界を飲み込む」が新しい段階に入りました。ゲームやソーシャルメディアのような元々デジタルであった存在が進化するだけでなく、生活空間や組織までもがインターネットに飲み込まれていきます。Media Innoationの1月特集ではWeb3について考えていきたいと思います。

2022年1月特集 Web3超入門

・【特集】Web3とは何か? インターネットの新たな革命は何をもたらすか

(以下公開予定)

1月26日(水)にはイベントも開催!

新年一発目のMedia Innovation Meetupのご案内です。

今回はいま世間で話題の「Web3」にフォーカス。ブロックチェーンから始まる新しいインターネットの潮流について、有識者の方にお集まりいただきます。読むだけだったインターネットは、「Web2.0」によって双方向に交流ができるようになりました。「Web3」は共創の世界で、その世界で生きる事を可能とします。その仕組みについて解説します。

ブロックチェーンがきてるらしいけど、メディアにどう取り入れて行けば分からない、そんな方にもオススメのイベントです。

登壇いただくのは、日本円のステーブルコインJPYCを発行し、暗号資産と法定通貨の架け橋となっているJPYC株式会社の代表取締役の岡部典孝氏、DAO(自立分散組織)で世界の投資家に日本発のNFTをマーケティングすることを目指す、 株式会社Tokyo Otaku Mode 共同創業者でCOOの安宅基氏、XR技術を活用したゲーム発のメタバース開発を目指す、株式会社Thirdverse創業者で取締役CSOの新清士氏、そしてブロックチェーンメディアとして人気を集める「CoinPost」を運営する株式会社CoinPostの代表取締役CEOを務める各務貴仁氏の4名です。

Media Innovation Meetup #33 Web3が実現する未来

・日時 2022年1月26日(水) 17:00~18:30
・会場 Zoomによるオンライン開催
・会費 1000円(Media Innovation有料会員の方は無料)

※本イベントは有料イベントですが、Media Innovation Guildのライト会員、プレミアム会員の皆様には無料で参加いただけます。月額980円からご利用いただけますのでこの機会にぜひご登録ください(詳細)。

■登壇者(順不同)

・JPYC株式会社 代表取締役 岡部典孝氏
・株式会社Tokyo Otaku Mode 共同創業者 兼 COO 安宅基氏
・株式会社Thirdverse 取締役CSO 新清士氏
・株式会社CoinPost 代表取締役CEO 各務貴仁氏

今話題のWeb3にキャッチアップするまたとない機会です。ぜひ沢山の皆様からの参加をお待ちしております。

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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