ウクライナを巡るメディアの動き【Media Innovation Newsletter】2/28号

おはようございます。Media Innovationの土本です。週末はウクライナ情報をずっと追っていたら終わりました。世界がウクライナを見捨てなかった事に勇気づけられました。では今週の「Media Innovation Newsletter」をお届けします。 メディアの未来を一緒に考えるMedia …

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おはようございます。Media Innovationの土本です。週末はウクライナ情報をずっと追っていたら終わりました。世界がウクライナを見捨てなかった事に勇気づけられました。では今週の「Media Innovation Newsletter」をお届けします。

メディアの未来を一緒に考えるMedia Innovation Guildの会員向けのニュースレター「Media Innovation Newsletter」 では毎週、ここでしか読めないメディア業界の注目トピックスの解説や、人気記事を紹介していきます。ウェブでの閲覧やバックナンバーはこちらから

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今週のテーマ解説 ウクライナを巡るメディアの動き

ロシアが24日、ウクライナに対する侵略を開始しました。各国のメディアは24時間体制で両国の動きを追っています。週末、メディアに何が起きたか振り返ります。

主要メディアは24時間の速報体制で伝える

まずは主要メディアの動きから。各社はウクライナに特派員を送り、現地からの報道を強化しています。主要メディアは常にウクライナ情勢をトップニュースに配し、ニューヨーク・タイムズはリアルタイムで更新される記者たちのメッセージを伝え、ワシントンポストは「War in Ukraine」という特設サイトを展開しています。英国のBBCもライブ放送を継続していて、常に数十万人が視聴しているほか、タイムライン形式で動向を伝えています。

フィナンシャル・タイムズはウクライナの報道についてペイウォールから外す事を決定。全ての記事を無料で読めるようにしています。

現地メディアではキーウインデペンデントキーウポストが現地からの情報を伝え続けています。キーウインデペンデントはわずか3ヶ月前に立ち上げられたメディアだということですが、トラフィックが増大していて、現地での取材も困難が増しているとして、世界からの支援を求め、PatreonGo Fund Me、ビットコインを使った支援を求めています。Patreonでは毎月3万ドル、Go Fund Meでは35万ユーロが集まっているようです(27日0時現在)。

今回、ロシアは3方向(北部のロシア国境、同じく北部のベラルーシ国境、そして南部のクリミア半島)から侵略を開始しましたが、地図を使った解説に各社が取り組んでいます。災害支援ネットワークのPROJECT OWLはグーグルマップを使って戦況を伝えるマップをアップデートしています。この地図では戦闘が繰り広げられている地域や、侵攻を遅らせるために破壊された橋などがマッピングされています。

開戦の前後で日経新聞は「衛星写真で見る緊迫のウクライナ情勢」「ロシア軍、三方からウクライナ包囲衛星写真で見る」「ロシア軍、浮橋造り車両投入衛星写真で見るキエフ侵攻」といった記事で、多数の衛星写真からの情報で現地の情勢を伝えていました。また、「空爆で制空権 衛星写真・SNSで見るウクライナ侵攻」では人流データから市民の避難の様子を伝えました。このように今のテクノロジーを活かした報道が目立つのも今回の特徴かもしれません。

激しい情報戦、プラットフォームの役割も改めて注目

ロシア国内では国営メディアを中心に「ウクライナの解放」を訴えるプロパガンダが進められていると伝えられますが、国内でも大規模な反戦デモがあったとされ、情報統制が強化されているようです。25日の早朝にはFacebookの利用制限がかけられ、時事通信によれば、メタが国営メディアの投稿に対してファクトチェックを実施した事に対する対抗措置だということです。一方、25日夜にはTwitterの利用も制限がされたと伝えられました。世界的なロシアに対する非難が強まっていて、国内に不安が広がる事を懸念した措置だと見られます。

グローバルなプラットフォームも選択を迫られています。ウクライナの第一副首相でデジタルトランスフォーメーション大臣であるMykhailo Fedorov氏はアップルのティム・クックCEOに対する公開書簡で、ロシアに対するApp Storeのサービス停止などを求めました。クック氏は直接的な返答ではありませんが、Twitterで「ウクライナの状況に深い関心を持っています。私達はできる限りの事をしていて、地元での人道的な努力を支援する予定です」と述べました。

CNNはまた、メタとグーグルがFacebookやYouTubeでロシアのメディアが収益化する機能を停止したと伝えています。さらに経済制裁に伴いApple PayやGoogle Payなどのデジタルウォレットがロシア国内で利用できなくなったとEngadgetが伝えています

前述のFedorov氏はTwitterで積極的に発信をしています。26日夜には「YouTubeに対してロシア24、タス、IA Novostiなどのプロパガンダチャンネルをブロックするように連絡した」ともツイート。27日には楽天(メッセンジャーViibarを運営)、Paypalに対して「ロシアでのサービスブロックを依頼した」とも述べています。それぞれのツイートは何千回もリツイートされていて、世論に押される形で各社が対応に踏み出しているというのも現代の戦争を象徴する出来事でしょう。ちなみにFedorov氏は2年前から副首相を務めているということですが、なんと1991年生まれの31歳(Wikipedia)。こうした若いリーダーを得ていた事がデジタルでの戦いを優位にした要因の一つかもしれません。

テック起業家の果たす役割にも注目されていて、楽天の三木谷社長は10億円をウクライナに寄付すると発表。プロフィール画像もウクライナ国旗に変更して連帯を示しています。テスラやSpaceXを率いるイーロン・マスクCEOは前述のFedorov氏から、衛星インターネット「スターリンク」の提供を求められ、すぐに必要な機器をウクライナに届けると表明。ロシアが重要な役割を果たしている国際宇宙ステーションでの業務もSpaceXが代行できると述べました。

真偽不明な情報に注意

今回の戦争では偽旗作戦(相手から武力行使を受けた事を偽装して口実とする)と指摘されるような、情報が開戦前から多く発せられていました。ウクライナ側から攻撃があった事を示すような動画が多数公開され、それらは大半が偽りであったことが明らかになっています(日経新聞のレポート)。

Foreign Policyによれば匿名性の強いメッセンジャーのTelegramを使ったフェイクニュースの拡散も盛んで、主要な都市が陥落した、ゼレンスキー大統領が首都を脱出したといった情報が拡散しているようです。

一方、ウクライナの劇的な戦果を伝える情報にも注意が必要です。ファクトチェック・イニシアティブは出所不明な情報や動画、画像が多数拡散されているとして注意を呼びかけています。

ロシアでは国内の主要メディアに対して、誤った情報を掲載しているとして記事の削除を求めたり、「戦争」という言葉を使用しないように求めるなど、情報統制を強めているようです。ガーディアンは国内のテレビがキーフでの攻撃などを報じておらず、逆にウクライナ側の攻撃ばかりを伝えていると述べています。また、そうした姿勢を嫌い、国営テレビのRTでは複数のスタッフが辞任しているということです。

国際ハッカー集団であるアノニマスはロシア政府に対して「サイバー戦争」を仕掛けていると伝えられ、国防省などのウェブサイトが断続的にダウンしているようです(読売新聞)。こちらは真偽不明ですが、ロシアのテレビ局がハッキングされ、ウクライナで何が起きているかを伝えているという話もあります

また、INPUTは、それまでミームを紹介する普通のアカウントとして活動していたインスタグラムのアカウントが、突然ウクライナの現地からの情報を伝えるアカウントに生まれ変わったという事例を紹介しています。取材によれば、これは単なる利益目的の行為であり、戦争に乗じてアカウントの成長を目指したものだということですが、このようにPVを稼ぐための情報も多く拡散されていると見られ、注意が必要です。ちなみに当該のアカウントは停止措置が取られたということです。

筆者が感じた情報戦の一つに首都の名称があります。戦争が始まる前は、ロシア語読みでキエフ(Kiev)と表記されていた街が、急速に現地での呼称に近いキーウ(Kyiv)に変わっていったのを感じました(英語メディアはウクライナの首都をKievではなくKyivと綴る 前者はロシア語の発音に基づく)。

ジャーナリストの活動をサポート

ウクライナは非常に困難な状況であり、現地にいるジャーナリストも危険と隣合わせです。NiemanLabはウクライナ情勢を伝えるためのソースリストを公開。ジャーナリスト保護委員会(Comittee to Protect Journalist)は英語、ロシア語、ウクライナ語で紛争地域で安全を確保しながらレポートするために留意すべき事をまとめています。日本のメディアからも多数のスタッフが現地でレポートを続けているようですが、無事を祈りたいと思います。

◆ ◆ ◆

週後半から世界はウクライナ一色ということで様々な情報に接していますが、近年では珍しい、先進国の正規軍同士の本格的な戦争であり、デジタルが世界を覆った状態での戦いとなります。膨大な情報が流通する中で真偽不明の情報も多く、極限状態の中でメディアが果たす役割も大きくなっています。一刻も早く、このような無益な戦争が終わるよう、発展したデジタルメディアがどのような作用するのか、見ていきたいと思います。

今週の人気記事から 【本日開催】これからのデータ&プライバシーの行方、個人情報保護法改正前SP

告知ですが、本日17時より「Media Innovation Meetup #34 これからのデータ&プライバシーの行方、個人情報保護法改正前SP」を開催します。

4月に改正される個人情報保護法などデータ&プライバシー重視の流れはメディアや広告に大きなインパクトを与えていきます。イベントでは、データプライバシーについて活動されている社団法人Privacy by Design Labの代表理事を務める栗原宏平氏と、サードパーティクッキー後に向けた様々なソリューションを展開する株式会社インティメート・マージャーの代表取締役社長である簗島亮次氏をお迎えします。

今回はDiscordに開設した「イノベーターズサロン」にて開催します。無料で登録&参加可能ですので、ぜひチェックしてみてください。

1.【2月28日(月)開催】これからのデータ&プライバシーの行方、個人情報保護法改正前SP

2.毎日新聞が創刊150年・・・双方向のコミュニケーションを生み出す「コミュニケーター・カンパニー」を目指す

3.2021年動画配信市場全体は前年比19.0%増、SVOD市場は「Netflix」が3年連続1位

4.博報堂グループ横断の戦略組織「HAKUHODO DX_UNITED」、企業のデータプライバシー対策をワンストップで支援

5.イード、お酒の専門メディア「nomooo」の事業を取得・・・さらなる成長と業界支援を目指す

6.ディズニー、住宅開発プロジェクトを開始・・・カリフォルニアに建設予定

7.ディズニーの4Q業績・・・テーマパーク再開、動画配信も好調

8.NewsPicksがジェンダー課題に向き合う「#TalkforWE」キャンペーン 国際女性デーで対話の喚起を目指すコンテンツを配信

9.INCLUSIVE、報道テックベンチャーのJX通信社と資本提携・・・データを活用した迅速な情報提供を強化

10.ノンフィクション・調査報道サービス「SlowNews」が、社会課題と向き合う「調査報道+」をスタート

会員限定記事から SEOメディアの買収失敗で赤字転落のログリー

今週のメディア企業徹底考察では、転職のSEOメディアの買収失敗で赤字に転落したログリーについて分析しました。同社はインフィード広告で成長してきましたが、広告の表現規制の影響もあり苦戦が続いてきました。そのような中でアーンアウトを含めると10億円を超えるディールでしたが、外部からの検索順位チェックでは買収後に大きく検索流入が落ち込んだ事がわかります。同社はCOOが退任してこの事業の立て直しに集中すると発表していますが、軌道修正ができるのでしょうか?

1.アフィリエイト広告に関する報告書、「広告」明記などを求める【Media Innovation Newsletter】2/21号

2.【メディア企業徹底考察 #46】転職メディア買収の失敗と薬機法対応でログリーが5億円の大赤字に急転直下

3.メタバースやNFTにも言及、2022年のYouTubeのアップデート方針

4.広告業界がクッキー廃止に備えられていないことをIABが警告・・・年間1兆円の広告収益喪失の危機

5.多くのジャーナリストがニュース発信のためにTikTokを活用・・・その実態とおすすめアカウントの紹介

6.FacebookがMozillaと合同で新たな広告技術を提案・・・プライバシー保護を重視

7.米トレードデスク、広告主とパブリッシャーを直接繋げる「OpenPath」を開発

8.ウクライナ侵攻を受け国際/欧州ジャーナリスト連盟が声明を発表・・・フェイクニュース拡散を警戒

9.ブランド広告主の約半数がクッキーの代替としてコンテンツ連動型広告に期待

10.LinkedIn、独自のポッドキャストネットワークを新たに立ち上げへ・・・社内番組や業界著名人による番組を提供

編集部からひとこと

東京は一気に春らしい気温になってきました。コートも薄手のもので良いかな? というところで、気がつけばもう3月に入るところでしたね。海外からのニュースで気が重い日々が続きますが、適度にリフレッシュしながら、自分が出来る事をしていきたいと思います。

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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