「組織再編でサブスク強化に全力」毎日新聞、高塚デジタル編集本部長

Media Innovationでは、メディアのグロースを支援するプロダクトを提供するPIANOの協力の下、オンラインカンファレンス 「Media Growth Summit 2022」 を5月27日(金)に開催します。業界のキーパーソンがメディアの成長に向けた戦略を語ります。

新聞各社がいま力を入れているのが有料サブスクリプションの会員獲得です。それは今年で創刊150年を迎えた「毎日新聞」も例外ではありません。直近では記者とデジタルの組織の統合も行い、体制面からもサブスクリプションへの注力を進めています。

Media Growth Summit 2022に登壇予定で、株式会社毎日新聞社でデジタル編集本部長としてデジタル展開を指揮する高塚保氏にお話を伺いました。

高塚保 株式会社毎日新聞社 デジタル編集本部長
1990年4月毎日新聞社入社。社会部を振り出しに甲府支局などを経て98年4月から政治部。首相官邸、自民党、野党、外務省などを担当。2007年9月毎日新聞労働組合委員長。政治部に戻った後、2015年10月社長室。広報と新規事業を担当し、社内の新規事業公募制度を立ち上げ。オープンイノベーションも推進しベンチャー企業への出資などを経験。2019年4月政治部長、20年4月編集編成局次長兼政治部長、21年4月デジタルメディア局長、22年4月よりデジタル編集本部長。

―――最初にこれまでの経歴を伺えますでしょうか?

記者としては政治部の経験が長かったのですが、2015年に社長室に移り新規事業の立ち上げなどに携わりました。その後、政治部長を経験し、2021年からデジタルメディア局長、現在は組織が変わって、編集編成局のデジタル編集本部長というになりました。毎日新聞デジタルの編集長のような仕事です。

―――新規事業という観点では毎日新聞社はオープンイノベーションの取り組みは長年続けられていますね

記者から社長室に移って感じたのは、新規事業にトライしていかないと新聞社は立ち行かなくなる、ということです。そこで、新規事業の推進役も兼任して、社内公募の制度をスタートしたり、ベンチャー企業への出資もスタートしたりしました。

更に、メディアドゥ、ブロードバンドタワーとの協業で「毎日みらい創造ラボ」というオープンイノベーションの取り組みを開始しました。これはメディアやコミュニケーションの領域で将来性のあるベンチャーや起業家を支援しようというもので、ここから20社以上への投資も実現しました。

―――現職はデジタル編集本部長ということですが、デジタルメディアの運営はどのような組織体制になっているのでしょうか?

もともと、コンテンツを制作する部隊と、収益を獲得する部隊は分かれていたのですが、統合していこうということで、以前は政治部・社会部・経済部などの記者が所属する編集編成局と、デジタルメディア局が分かれていたのですが、これを統合し編集編成局の中にデジタル編集本部というデジタルを司る部隊が入りました。つまり、作る部分と、それをお金に変える部分を一体で推進していこうということです。

デジタル編集本部はデジタルのコンテンツと、デジタルのビジネスの両方を統括しています。記者から上がってきた記事をどうやってデジタルで発信していくのか、という点も考えますし、その活動の結果としてどのように収益に結びつけていくか、例えばサブスクリプションを伸ばす、ヤフーやLINEなどへのコンテンツ販売を伸ばす、そういった戦略も考える部署となっています。

以前は広告も手掛けていましたが、今は営業部隊も統合的に動いた方がいいだろういうことで、営業総本部という部署に移管しています。

―――組織統合の狙いはサブスクリプションの強化でしょうか?

まさに今の毎日新聞社の最大の取り組みがデジタルにおけるサブスクリプションの強化です。以前のように記者が紙だけを意識して記事を作っていては勝ち目がありません。今までは出したコンテンツの反応を知る方法は殆どありませんでしたが、今はソーシャルでどう拡散されていくかなどを意識しながら記者は活動しなければなりません。

「原稿は紙面に載せるために考えるのではなく、まずデジタルでどう発信するか考えよう」と記者にはしつこく言っています。これは何年も前からの課題で、徐々に意識は変わってきたものの、まだ途上で、組織再編はそれを更に推進するためのものです。

―――サブスクリプションの獲得のためにどんな事に力を入れているのでしょうか?

Piano DMPなどのアナリティクスを活用して、ユーザーの動向把握には力を入れています。有料会員になっている人はどんな動きをするのか、有料会員になってくれそうな人はどんな人なのか、ユーザーの動きを、ツールを活用して可視化しながら、施策に落とし込んでいます。

新聞社のニュースサイトの編成はどうしてもその時々のニュースソースやトレンドに左右されます。例えば、ロシアのウクライナ侵攻や知床の観光船沈没などは大きなトラフィックを生みますが、こうしたニュースは無料のプラットフォームでも読めることから、有料会員の獲得にはなかなかつながらないという面があります。

一つ確実なのは、その時々のニュースではなく、読者の課題意識に応えるような狭くとも深い記事がコンバージョンに繋がるという事です。政治といっても、永田町・霞が関の動向を知りたい人から、選挙の投票先を考えている人まで幅広い層の読者がいるので、常に誰に向けて発信しているのかを考えてコンテンツを作っていかなくてはなりません。

―――課題はどんなところにあるのでしょうか?

新聞社という成り立ちから、デジタルのエンジニアは絶対的に不足しています。いま急ピッチで採用を進めていますが、まだまだ足りません。新聞社がエンジニアの皆さんが求める、やりがいのある仕事、良い職場環境を提供できているかにも課題があります。最近、アプリのリニューアルも行いましたが、チャレンジングでやり甲斐のある仕事に一緒に取り組んでいける環境を作っていきたいと思っています。

デジタルのビジネスという観点ではサブスクリプションだけではなく、コンテンツ販売や、広告のビジネスもあります。無料コンテンツと有料コンテンツのバランスを見ながら、毎日新聞デジタルに触れてくれるユーザー数をできるだけ増やし、そして有料で使っていただけるようにサービスを充実していくことが課題だと受け止めています。

Media Growth Summit sponsored by Piano
・日時 2022年5月27日(金) 13:30~17:00
・会場 オンライン開催(Zoomを予定)
・会費 無料 ※要事前登録
・主催 Media Innovation (株式会社イード)
・共催 PIANO Japan株式会社
・備考 人数が定員に達した場合、早期に申し込みを終了する可能性があります

※本イベントは無料開催となりますが、Media Innovationの会員登録(無料可)が必要です

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【12月6日更新】メディアのサブスクリプションを学ぶための記事まとめ

デジタルメディアの生き残りを賭けた戦略の中で世界的に注目を集めているサブスクリプション。月額の有料購読をしてもらい、会員IDを軸に読者との長期的な関係を構築。ウェブのコンテンツだけでなく、ポッドキャストやニュースレター、オンライン/オフラインのイベント事業などメディアの立体的なビジネスモデルをサブスクリプションを中核に組み立てていく流れもあります。

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デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。

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