【メディア企業徹底考察 #89】「あさがくナビ」学情がアクティビストに狙われた理由

就職情報サイト「あさがくナビ」を運営する株式会社学情が、アクティビスト(物言う株主)のLIM JAPAN EVENT MASTER FUNDとの対立に苦心しています。LIMは自己株式の取得や定款の一部変更などを学情の経営陣に求めました。 LIMは株式会社テレビ東京ホールディングスへの…

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就職情報サイト「あさがくナビ」を運営する株式会社学情が、アクティビスト(物言う株主)のLIM JAPAN EVENT MASTER FUNDとの対立に苦心しています。LIMは自己株式の取得や定款の一部変更などを学情の経営陣に求めました。

LIMは株式会社テレビ東京ホールディングスへの株主提案や、株式会社ニチイ学館のMBOに反対したことで知られる名うてのアクティビスト。学情の経営陣はLIMからの提案に真っ向から反対していますが、経営は混乱する可能性があります。

学情のようにアクティビストから株主提案を受ける会社は、共通する特徴があります。決して他人事ではありません。

過剰な自己資本がリスクとなる時代

学情は2002年5月にジャスダックに上場した会社。2013年1月に株式会社朝日新聞社と資本業務提携しました。朝日新聞社は学情の株式を5.0%、朝日学生新聞社が5.0%を保有しています。2022年10月期の売上高は前期比8.9%増の67億7,300万円、純利益は同1.0%増の13億9,600万円でした。

2023年10月期は売上高を前期比18.1%増の80億円、純利益を同11.7%増の15億6,000万円と予想しています。学情は自己資本比率が88.3%という極めて財務体質が健全な会社。しかし、これこそがアクティビストに狙われる要因の一つになっています。

アクティビストは、一定の株式を保有した上で経営陣に積極的な提案を行います。法人だけでなく個人として活動するケースがあり、組織形態も様々ですが、LIM JAPAN EVENT MASTER FUNDとなっていることから、LIMは投資家から集めた資金を運用するファンドの形態をとっていると考えられます。

アクティビストファンドとよく似た形態にバイアウトファンドがあります。バイアウトファンドは投資対象の会社の大部分の株式を取得して支配権を獲得。企業価値を上げ、3~5年を目処に売却または上場させるのが定石です。アクティビストファンドは実権を握るほどの出資はしないのが普通。また、自己株式の取得や増配による短期的な企業価値向上を狙うケースがほとんどです。アクティビストファンドはバイアウトファンドよりも、短期間で効率的に細かく稼ごうとする特徴があります。

LIMの提案内容は5つあります。

1.自己株式の取得の件
2.剰余金処分の件
3.定款一部変更(資本コストの開示)の件
4.定款一部変更(自己株式の消却)の件
5.自己株式の消却の件

一見すると複雑なように感じますが、LIMが提案している内容は非常にシンプル。学情の過剰資本を解消して株主に還元するべきというものです。

学情は2022年7月末時点で現預金が45億円、投資有価証券を54億円保有しており、流動性の高い運用資産が100億円あります。これは総資産のおよそ8割を占める金額。預金残高を積み上げすぎていると指摘しています。

保身的な事業推進が仇になった

LIMが特に問題視しているのが、2021年7月に行った学情の第三者割当による新株予約権の発行。学情は発行済株式数の希薄化を招きかねない新株予約権の発行によって資金を調達しようとしたのです。

17億2,600万円を調達する計画でしたが、2021年7月末時点で学情は47億7,500万円の現金を保有し、自己資本比率は92.9%まで高まっていました。


《不破聡》

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