「メディア横断的なサービス開発と実装を一層推進」KODANSHAtech・長尾洋一郎氏・・・2023年のメディア業界展望(6)

2023年はメディア業界にとってどのような一年になるでしょうか? Media Innovationに縁を持っていただいた皆様に、2022年の振り返りと、2023年に向けての展望を伺いました。 目次 2022年の仕事を振り返ってみて、いかがでしたか2022年のメディア業界で印象に残ったことを…

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2023年はメディア業界にとってどのような一年になるでしょうか? Media Innovationに縁を持っていただいた皆様に、2022年の振り返りと、2023年に向けての展望を伺いました。

長尾 洋一郎(KODANSHAtech合同会社ゼネラルマネージャー、株式会社講談社第一事業局第一事業戦略部副部長事業戦略チーム)
1982年生まれ。東京大学で数学を学んだのち講談社入社。文芸局(当時)で小説の単行本編集を経験したあと、週刊現代編集部へ。雑誌ジャーナリズムの現場で硬軟多様なテーマを取材。2017年、現代ビジネス編集チームに異動、ウェブメディアに関わる。2018年、社内エンジニアリング集団・事業戦略チーム(通称「techチーム」)発足。2019年、同チームの法人化を提案、KODANSHAtech合同会社を旗揚げ。

2022年の仕事を振り返ってみて、いかがでしたか

KODANSHAtech合同会社の公式創業日は2020年2月2日(「20200202」で回文です)なのですが、2022年はちょうど、本格稼働をはじめて3年目という節目の年でした。

「3年」のどこが「節目」なのかと言いますと、そもそも会社を作ると提案したときの計画が、「3年間で25名の開発のプロを集めます」という人事計画だったんですね。

さて、蓋を開けてみると、ということなんですが、おかげさまで内定者を含めて25名の組織まで拡大しまして、いったんは当初の目標を達成したなというところです。

KODANSHAtechは、創業110年超の伝統的な出版社である講談社(1909年~)で、ウェブによるコンテンツ発信、メディアのサービス事業化といったことに取り組むプロフェッショナルを「仲間」としてグループに迎え入れるための「箱」として設計された組織です。

当初目標である25名の達成とともに、この3年間で、講談社の複数のウェブメディアのプロジェクトにアサインしているエンジニア、ウェブデザイナー、ディレクターのみなさんのお力をいただいて、積極的かつ合理的なウェブメディア開発が行える環境が着実に整えられてきました。

現在では、5年前までなら考えられなかったほど、編集者の企画とエンジニアリングとが結びついた、有機的なサービス開発が行われるようになっています。

今年は、そうしたメディアごとの開発サイクルの安定化を実感したとともに、メディア横断的なサービスの開発・実装にも着手できたことが大きなトピックなのですが、残念ながら公にリリースできるのは2023年後半のことになります。

2022年のメディア業界で印象に残ったことを教えてください

極めてローカルな話で恐縮ですが、文藝春秋さんのサブスクリプション基盤がPiano社のプロダクトに移行したことでしょうか。

弊社「FRIDAY」のサブスクリプションサービスも、先行してPiano社のプラットフォームで運用されてきましたが、運用型広告だけで戦える時代の終わりを誰もが実感するなか、今後のメディアビジネスを組み立てるための重要な部分をになってくれるパーツが、奇しくも同じプロダクトになったことは、非常に象徴的な出来事だと思います。

個人的には、以前からほうぼうで発言していることなのですが、つまるところメディア業界は小さな村です。もちろん、影響力の面では大きなものがあるわけですが、産業の規模や人材のパイは、そう大きくない。そこにコミットしてくれるエンジニアリング人材の層の厚さたるや、もはや「厚さ」というより「薄さ」と表現したほうがよいくらいです。

もちろん、本質的に情報産業であるメディアは、エンジニアリングと非常に相性のいい業界で、その意味でツール開発事業者やデータ分析事業者はメディア向けのソリューション提供を次々と行ってくださるのですが、それに比べて、受け入れ側の力量、使いこなしの能力は非常に低迷した状態がつづいています。

Piano社のソリューションに限らず、2022年には、比較的大きなトラフィックを持ったメディア同士で、「あれ、おたくもあれを使うことにしたの?」となる場面が多く見られた印象がありますが、コロナ禍やウクライナ侵攻も相まって、ウェブでさえ広告出稿が渋い市況の中、各メディアが「より確かなソリューション」「成功事例のあるツール」への移行で効率化を図ろうとする動きは、当面続くのではないでしょうか。

それは多様性という観点では、必ずしも好ましくない現象ではありますが、一方でメディア開発者の人材市場の動向という見方からすれば、知見が共通化されることで相互に人材の交流ハードルが低くなり、参加者が増えたり、コミュニティ活動が活性化するといった、よい流れにもつながるかもしれません。

2023年のメディア業界、ご自身の取り組みたい仕事について教えてください

2022年の成果という、最初のご質問とも関連しますが、2022年中には「個別のメディア事業に紐づく新規開発・改善」以外に、メディア事業者なら誰でも利用する可能性のあるパーツ、あるいは機能の「共通項」をくくりだし、独自のソリューションとして組み立てるという複数の試みをはじめました。

一部では、すでに内部で試験稼働を開始しているシステムもあります。こうした独自のソリューションを用いて、グループ内のメディア開発を加速化・効率化するとともに、グループ会社以外にもシステム提供を行うという、講談社グループとしてはかなり珍しいタイプの事業化も行えるのではないかと考えています。

また、KODANSHAtechという会社そのもの、組織体としてのあれこれは、ここまで私自身が多くをになうことによって動いてきたのですが、バックオフィス環境を整備して、さらなる飛躍に結びつける準備もしていきたいと思っています。

《浜崎 正己》

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浜崎 正己

浜崎 正己

メディアの立ち上げと運用を支援する(株)メディアインキュベート の代表。1988年千葉県生まれ。Twitter : https://twitter.com/masaki_hamasaki

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