ロイター・ジャーナリズム研究所が『ジャーナリズム、メディア、テクノロジーのトレンドと予測2023年』を発表しました。高騰するインフレやロシアのウクライナ侵攻、地球温暖化の影響、COVIDパンデミックの後遺症等、これまでジャーナリズムは社会の危機をその時々においてニュースの需要と出版社の繁栄の機会にしてきました。
ところが昨今は、憂鬱なニュースが多くの人々を遠ざける<選択的ニュース回避>の状況にさらされています。この事は、既存のメディアの独立性が揺らぎ、視聴者優位の現象やソーシャルメディアへのメディア価値分散を加速させ、マクロ経済の落ち込みと経営指標が連動する現象につながっています。
今年は、報道・ジャーナリズムを担うパブリッシャーがニュース回避と様々な断絶という2つの課題に対処し、どのような予測を立てているかを、まずはエグゼクティブサマリーから報告書の内容を俯瞰したいと思います。
目次
メディア・リーダーは今年をどう見ているのか?
報道機関であるパブリッシャーは、昨年のこの時期に比べ、事業の見通しについて確信を失っています。編集者、経営者、デジタルビジネスの責任者他303人のサンプルの半数以下(44%)が、2023年について自信があると答えましたが、約5分の1(19%)が自信がないと回答しています。最大の懸念は、コストの上昇、広告主からの関心の低下、購読料の成長率の軟化に関する不可避な要因です。楽観的な見方の人でも、来年はレイオフやその他のコスト削減策を実施すると考えています。
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