政府のデジタル市場競争会議は、デジタル広告市場の問題点やその解決方法について事業者等からのヒアリングや会合を重ねて、中間報告を12日に公開しました。広がるデジタル広告市場について整理されているので、詳細にレポートします。
目次
デジタル広告市場を予約型広告と運用型広告(3パターン)に分類
まず市場の概観について、いわゆる純広告と呼ばれる出稿条件が予め決まった (1)予約型広告と、出稿条件を変化しながら運用する (2)運用型広告に大別。さらに運用型広告は検索エンジンでの (a)検索連動型、YouTubeやFacebookなどのプラットフォームが提供する (b)Owned & Operated Platform、DSPやSSPを介して行われる (c)Open Display Marketに分けました。
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まず市場の実態として、デジタル広告費はテレビを抜いて年間2.1兆円まで成長し、日本の広告費全体の約30%を占めるまでに拡大したと指摘。テクノロジーの進化がそれを加速していて、ユーザーの嗜好に合わせたターゲティング広告が発達し、ウェブサイトを閲覧した瞬間に、広告主がリアルタイムで入札が行われマッチングする手法が発展していると述べています。また、当初は様々なアドテク事業者が存在したものの、買収等による垂直統合が進んでいるとしました。
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デジタル広告市場の特性から生み出される3つの課題
ここでは以下の3点が指摘されています。
1つ目は、広告主は多くのユーザーにリーチするプラットフォームを選択肢、広告枠を提供するパブリッシャーも多くの広告主をカバーするプラットフォームを選択することから、プラットフォームが自然と寡占化し、影響力を強めていると指摘。システム変更が突然行われることから対応が難しい、プラットフォーム事業者が自社を優遇しているのではないかといった指摘や、公取委のアンケートではパブリッシャーの半数がサプライチェーンの透明性に問題・課題があると回答したそうです。
2つ目はアンケートの回答にも関連しますが、システム全体が複雑で、極めて変化が速く、市場の実態を理解することが困難だという指摘です。特にリアルタイム入札によるマッチングなど、システム上でアルゴリズム処理されることから、ブラックボックス化が懸念されています。こうした機能が垂直統合された結果、プラットフォーム事業者による利益相反や自社媒体の優遇などを懸念する声があるとのこと。
3つ目は質の問題です。(1)広告主にとってはアドフラウドやブランドセーフティが課題となっています。プログラム(ボット)による閲覧回数の水増し(アドフラウド)や、ブランドを毀損しかねないサイトに配信されるリスク、視認性が十分ではない枠に配信されるなどの問題があり、これらが第三者によって客観的に測定されていないという不満があります。また(2)パブリッシャーとしては収益が適切に配分されているか不透明という懸念。(3)消費者はターゲティングが煩わしい、パーソナル・データの扱いに対する懸念があるようです。特にターゲティング広告については7割が煩わしいと回答、8割が設定を変えたいと消費者庁のアンケートで回答しているようです。
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5つの観点から課題に対する方向性を提案
こうした課題整理を経て、中間報告では主に大規模なプラットフォーム事業者を対象に、一部は関連事業者全般を対象に、(1)透明性 (2)データ利活用 (3)垂直統合 (4)手続等の公正性 (5)消費者の視点 から対応の方向性をまとめています。
(1)透明性: 取引IDの導入や第三者による指標測定の受け入れ
まず透明性の観点では、アドフラウドやブランドセーフティに対応するため、「質」の実態に関する情報開示や、取引IDなどの仕組みを導入し、実態を追跡・照合可能とする仕組みの導入を掲げています。また、広告の表示回数などについてはプラットフォーム事業者からのレポートのみでなく、第三者による到達指標測定の受け入れや、必要となるオープンAPIの整備や接続の受け入れ、拒否する場合の理由の開示を挙げています。
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(2)データ利活用: 広告主へのデータ提供やオープンAPIの整備
広告主から、出稿した広告に関するオーディエンスデータがプラットフォーム事業者から十分に提供されないという不満の声があることに対しては、オーディエンス・データの提供や、オープンAPIによる接続の受け入れ、拒否する場合の理由の開示を求めています。また、プラットフォーム事業者内でのデータ活用のされ方の透明性・公平性が確保するための仕組みの構築も指摘されています。
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(3)垂直統合: 利益相反をや自社優遇を防ぐ規律やシステム上の手当
DSPとSSPの両方のサービスを運営する事業者や、アドサーバーを運営するプラットフォーム事業者、YouTubeのようにプラットフォームと媒体が一体化したプラットフォーム事業者において利益相反を防止するために、社内規律・システム上の手当といった措置を実施し、その開示、対応状況のモニタリングを求めています。
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(4)手続等の公正性: 独占禁止法によるモニタリング、検索エンジンのアルゴリズムの開示や変更の事前通知
プラットフォーム事業者によるシステム変更やルール変更では、交渉の余地がなく、十分な説明なく行われる事があり、独占禁止法上の問題となる疑いがあれば公正取引委員会において的確な対処を判断するとしました。
また、検索エンジンにおけるアルゴリズム変更によって、パブリッシャーのサイトが下位に表示されたり、アルゴリズムに対して最適化を図るために過度な負担を課せられたりすることがあり、事前に十分な説明がない、各国の事情に応じた対応が十分なされていないという声に対しては、検索エンジンの主要なパラメータの開示、変更時の事前通知・理由の開示、国内相談窓口の設置を求めています。ここはかなり踏み込んだ、という印象です。
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(5)消費者の視点: 透明性の確保や同意コントロールの実効性
最後にパーソナル・データの取得・利用に関しては、透明性という観点から、取得データの範囲・取得方法、内部での管理状況、データの統合・プロファイリングへの活用等に関する情報開示を指摘しています。
また同意取得の観点から、プライバシーポリシーやオプトアウトの分かりやすい掲示を行い、事前設定の提示と定期的な通知を行う、もしくはデフォルトでターゲティング広告を禁止する事を求めています。また、データの取得や利用を拒否した場合でもサービスを仕様するオプションの提供や、データポータビリティを受け入れる条件等の開示を求めています。
さらに、同意があってもターゲティング広告が認められない場合についての必要な考え方を事業者として定める事を求めています。
世界的にプライバシー保護の流れが強くなっていますが、ここも大きく踏み込んでいる様子が伺えます。
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今後については、さらにルール整備のあり方について詳細に検討を行い、意見募集も行い、今冬に最終報告を取りまとめるとしています。