弁護士ドットコムが27日発表した2021年3月期の第1四半期の業績は売上高11億6000万円(前年同期比24.0%)、営業利益700万円(▲95.9%)、経常利益800万円(▲95.4%)、純利益400万円(▲96.4%)と増収ながら大幅な減収減益となりました。
主な要因は、新型コロナウイルス感染拡大からの印鑑廃止の流れを受けて好調を維持している電子署名プラットフォーム「クラウドサイン」への投資です。主にテレビCMに3.3億円以上を投下したことで広告宣伝費が増加しました。内田社長は「昨年の第3四半期にも同規模の投資を行い、その際は営業赤字だった」とトップラインが伸びている事を強調しました。
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そのクラウドサインは6月には単月で月商1億円に到達したということで、昨年が通期で6.3億円の売上だったのに対して、今期は社内予算で14億円を目指しているということです。第1四半期では2.6億円の売上でした。単純に4倍すると10.4億円ですが、伸び率を考えれば到達可能な数字と言えそうです。
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成長を加速するために、他の事業から従業員を異動したり、キヤノンシステムアンドサポート、富士ゼロックス、リコーなどの代理店を通じた販売、三井住友フィナンシャルグループとの合弁会社、SMBCクラウドサインを通じて販売を強化します。
目次
弁護士ドットコムは成長にブレーキ
一方でこれまでの主力事業の「弁護士ドットコム」には成長にブレーキがかかっています。
月間のサイト訪問数は、今年5月5日に実施されたGoogleのアルゴリズムアップデートによって影響を受け、検索経由の流入が低調な状態が続いているとのこと。「検索エンジン対策はまだ明確な改善に至れていないが、継続的なサービス改善を通じて反転を目指していきたい」と内田社長は会見で述べています。
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これに比例する形で、有料会員も減少傾向にあります。有料会員はサイト内にある法律相談掲示板の全ての回答を閲覧できるというもので月額300円。アクセス数の減少と軌を一にするように減少していて、直近では16万9328人となっています。
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一方、同社が最重要KPIとして説明する登録弁護士数は1万9415名で、うち5078名が有料登録で、こちらは継続的に伸びています。新型コロナウイルスによって一時的にマーケティングニーズが減衰し、第1四半期の伸びは鈍化していましたが、内田社長は「足元では順調な増加ペースに戻ってきている」と話しました。
企業内弁護士など、有料でのマーケティングニーズがない弁護士に対しては、月額9000円で法律系書籍が読み放題になる「弁護士ドットコム ライブラリー」などのサービスを訴求していくとしています。
「税理士ドットコム」は苦戦、「ビジネスロイヤーズ」は順調
「弁護士ドットコム」から派生したメディアである「税理士ドットコム」は一部従業員が「クラウドサイン」に異動になったこともあり、訪問者数は減少しているものの、売上高は増加しているとのこと。
今後は5000名を突破した税理士の登録を増やしながら、人材紹介のサポートや、税理士が関わることもあるM&Aのサポートなどの新しい事業の創出を目指していきたいとしました。
企業内法務担当者に向けた「ビジネスロイヤーズ」は順調に成長を続けています。こちらも書籍が読み放題のサービス「ビジネスロイヤーズ ライブラリ」を展開。今後は「クラウドサイン」など、法務部門が必要とするサービスを訴求し、法務におけるDXの拠点としたいと説明しました。