フィンテック関連事業を展開する株式会社ZUU(東証グロース:4387)は2026年3月27日、同月19日に発生した資金流出事案を公表しました。被害額は9,600万円。ビジネスチャット上で当社役職員を装った第三者が不正な送金指示を行い、従来の社内ルール・プロセスに則って振込が実行されてしまったというものです。
同社は事案発覚後、直ちに金融機関へ組戻し依頼を行い、所轄警察署に被害届を提出しました。しかし公表文には「現時点において、回収は極めて困難な状況であると考えております」と明記されており、9,600万円の大半が損失として確定する可能性が高い状況です。
同社が公表した原因説明には、「ビジネスチャットを用いた巧妙ななりすまし指示に対し、既存のルールが実効的に機能しなかったこと」と「チャットツールと振込実行プロセスの連携における真正性確認が不十分であったこと」の2点を挙げています。リモートワークの普及とともにビジネスチャットが業務の中枢を担うようになった現代において、口頭や書面による確認を省略しがちな組織文化のリスクが改めて浮き彫りになりました。
赤字継続中の財務体力に追い打ち
今回の資金流出が特に深刻なのは、同社の財務状況が決して盤石ではない中で発生した点です。2026年3月期第3四半期(2025年4~12月)の連結業績を見ると、売上高は1,931,778千円(前年同四半期比10.6%減)、営業損失は176,823千円(前年同四半期の営業損失96,454千円から拡大)、親会社株主に帰属する四半期純損失は275,922千円となっています。
貸借対照表では、現金及び預金が前期末の2,623,451千円から1,299,933千円へと約13.2億円減少しています。これは主に投資ファンド関連の資金移動によるものですが、手元流動性の低下は否めません。自己資本比率も前期末の13.7%から9.4%へと低下しており、財務的な余裕は縮小傾向にあります。
今回の9,600万円の流出は、特別損失として計上される見込みです。通期業績予想では親会社株主に帰属する当期純利益をわずか3百万円(前期比97.4%減)と見込んでいましたが、この特別損失が加わることで通期の最終損益が赤字に転落する可能性は十分にあります。同社は「最終的な損失額並びに本件による当社業績への影響については、現在精査中」としており、業績予想の修正開示が近く行われる可能性があります。
フィンテック企業が問われるガバナンスの信頼性
同社は「ZUU online」などの金融メディアを運営し、金融リテラシーの向上を事業の柱の一つとしています。金融知識の普及を掲げる企業が、自社の資金管理で基本的な内部統制の不備を露呈したという事実は、ブランドイメージへの影響も無視できません。
今後の対応として同社は、外部専門家を交えた事実関係の調査・原因究明と、グループ全体のセキュリティ基準および財務ガバナンスの抜本的見直しを掲げています。
ビジネスチャットを悪用したなりすまし詐欺は、ZUUに限らず多くの企業が直面しうるリスクです。送金指示の真正性確認を「チャット上の承認」だけで完結させず、電話や対面など別チャネルでのダブルチェックを義務付けるといった対策は、今や業種を問わず必須の経営課題といえます。

