「新型コロナで、人々が求めるものは変わったと思います」
そう語るのは、Netflix『全裸監督』や情熱大陸を手がけたプロデューサー、たちばな やすひと さん。
新型コロナウイルスの影響で、人が集まって撮影をしたり対面で取材したりするのが難しくなり、「コンテンツ作りが思うようにいかない」と苦しむメディア人も多いのではないでしょうか。 メディア人がポストコロナ時代に捉えるべき変化とは?「1億総クリエイター時代」にプロとしてやるべきこととは?たちばなさんに聞きました。
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プロデュース会社「Nemeton」代表。主なプロデュース作品は、『全裸監督』(Netflix 2019年8月~)『マリオ~AIのゆくえ~』(NHK-BS 2018年10月)、『オー・マイ・ジャンプ! ~少年ジャンプが地球を救う~』(テレビ東京2018年1月~)他。
目次
「リモートだとうまくいかない」のはなぜ?
―――新型コロナウイルスの影響で、テレビ番組の作り方が変わったり、Zoomを利用した作品が生まれたりしていますよね。取材もリモートが増えましたが、やっぱり上手くいかない部分もあるな、と感じています。
たちばな: いろんなチャレンジが行われていて、面白いものも出てきていると思うのですが、あと一歩何か足りないという感覚が作り手にも受け手にもあるのかもしれません。
例えばZoomをベースに、画面共有やSNSなどをうまく組み込んだ作品とか、これまでにない体験が生まれているとは思うのですが、映像のクオリティが低いとか、ライブの臨場感にはかなわないとか、どうしても荒を探されてしまう感じがありますよね。でもいいこともあると思うんです。コストがかからないのもそうだし、地方の人も参加できるとか。メリットとデメリットを冷静に分析して、ポジティブにトライしていくのが重要だと思います。
また、私はコロナを機に、積極的に「公開対談」のようなものを配信していますが、そういうことが当たり前にできるようになったことはとても嬉しいことです。その公開対談の中でハフポスト日本版の竹下編集長と話していて「Zoomならではの距離感や可能性」があるなと気づきました。
簡単にいうとリラックスして話せるということなんです。竹下さんも「テレビのスタジオと自宅からのリモートだと出てくる言葉も違う」と言っていて確かに! と思いました。
テレビ局のスタジオにある緊張感は「いいことを言わなきゃ」というプレッシャーが強く、自宅からのリモートだと「物理的に安全な場所」なので、もう少し等身大の意見が話せるとか。これはケースバイケースなので、リモートが勝るという話ではないですけど、じっくり話す対談には向いていると思ったりしています。
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私は常々、感動やクリエイティブな閃きは、安心や安全がないと生まれないと思っているので、作品作りなどもリモート的なやり方で良いものが生まれる可能性はあると感じています。
例えば、「締め切り効果」という言葉があるじゃないですか。私も締め切りという力を利用して作ることが多いのは事実なのですが、一方で、締め切りを含めたプレッシャーからは本当に良いものは生まれないと確信しているんです。
プレッシャーによるクリエイティブって、「解決」はできても「創造」はできないのではないかと。「安心」という状況があって、初めて自分の中に深く潜れて作れるものはあるはずで、リモート環境はうまく利用すれば、プラスに働くものもあると思っていますす。
コロナで受け手の求めるものはどう変わったか
―――実際にコロナ禍で受け手、視聴者や読者が求めるものは変わったと思いますか?