特集「After Cookie~メディアと広告の未来像」では、プライバシー重視の高まりや、サードパーティクッキー廃止の技術的な制約の中で、メディアにおける広告やデータ活用がどのように変化していき、どのようなスタンスで望んでいけば良いかキーパーソンへの取材で探ってきました。
クッキー後のソリューションとして注目されているプロダクトに「共通ID」があります。クッキーが担っていた、ユーザーを一意に識別する役割を、別のIDによって代替しようというものです。既に複数のプロジェクトが立ち上がっていますが、特に注目されているのがThe Trade Deskが中核となって進めている「Unified ID 2.0」です。
業界を挙げての取り組みとなっていて、様々なアドテクベンダーが参加しているほか、パブリッシャー側でもワシントン・ポストがテストを開始したというニュースを昨年末にお伝えしました。「Unified ID 2.0」の概要や開発状況や見通しなど、The Trade Desk Japan 株式会社 Director, Inventory Partnershipsの白井好典氏にお話を聞きました。
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The Trade Desk Japan株式会社
Director, Inventory Partnerships
―――改めてThe Trade Deskの強みを教えてください
The Trade Deskは2009年創業で、後発のDSPですが、最も急成長しているグローバルDSPでもあります。高い透明性があり、独立系でDSPのみに特化しているという点が特徴です。
透明性という観点では、広告主・広告代理店に広告の配信先媒体を開示し、各キャンペーンのパフォーマンスについても粒度の細かい精緻なレポートで報告しています。
独立系DSPという点では、配信先の媒体に対して、中立的な立場で純粋に効果だけを見て配信先を決定できます。また、自社でSSPを保有していないため、DSPとSSPの両方を保有することでできる利益相反が生じない立場です。
弊社の取り扱いとしてはPMP比率は6割弱、PMPの内9割以上が動画広告を占めるのが特徴的なDSPです。直近ではOTTやCTVにも注力しています。日本にも2014年に進出して、約20名のチームとなっています。高い透明性や独立性から生まれるメリットによりグローバルのクライアントに支持されていることもあり、日本ではグローバルブランドから指名を受けた上での取り扱いが多いという特色もあります。
※DSP・・・Demand Side Platform、デマンド(広告主)側が広告を配信するために利用するプラットフォームのこと
―――サードパーティクッキー廃止後に向けて、御社のクライアントも含めてどのような温度感でしょうか?
広告主、代理店ともに何が起こるのか注視しているというのが実情だと思います。やはり、クッキーに代わる代替ソリューションがなかなか見えていないという不安感は大きいように思います。
―――その中で、The Trade Deskは「Unified ID 2.0」を中核となって開発されていますが、その背景を教えてください
サードパーティクッキー廃止という技術的な変化や、GDPRやCCPAのような法的な規制によって、より安全なIDが求められているという事が背景としてはあります。メディアにおいては、媒体社はコンテンツを無料で提供して、その対価としてユーザーに広告を見せる事でビジネスを成り立たせるという交換価値が成り立っていたのですが、それが崩壊の危機にあります。The Trade Deskとしてはクッキーが廃止された後も、適切な関連広告が配信される事によってメディアを成立させる事は非常に重要だと思っています。
「Unified ID 2.0」という名前からも分かるように、実はこれには「1.0」が存在します。DSPとして、SSPなど他のプレイヤーと接続する際にユーザーを識別するキーがあり、それはサードパーティクッキーを使ったものだったのですが、それを業界で統一したものを使いませんか? という提案で、他社にも無償公開していたものが「1.0」になります。皆で同じIDを使う事で、クッキーのシンク率が上がって業界として成果(高いCPM、高いFill Rate)が出しやすくなる、というものでした。
―――具体的には「Unified ID 2.0」とはどのような仕組みなのでしょうか?