ふるさと納税サイト「ふるなび」を運営する株式会社アイモバイルの収益性が、ジリジリと低下しています。
2022年7月期の営業利益は前期比12.2%増の37億9,300万円となったものの、営業利益率は29.2%から27.2%へと2ポイント低下。2023年7月期の営業利益は前期比1.5%増の38億5,000万円を予想していますが、営業利益利率は3.1ポイント低下して24.1%で着地する見込みです。
■アイモバイル業績推移


「ふるなび」の会員数や契約自治体数は右肩上がりで増加しているものの、流通取引総額を増加させるための広告費が利益を圧迫しています。人件費を抑制して広告費を捻出しようとする、厳しい懐事情が浮かび上がります。
目次
ふるさと納税1件当たりの単価は2万円と高額
アイモバイルは2007年9月に開始したモバイルアドネットワークサービス「i-mobile」が原点。2011年1月にPC向け、2011年5月にスマートフォン向けアドネットワークサービスを開始しました。2014年7月に「ふるなび」をリリース。2016年10月マザーズ市場に上場しました。
事業はインターネット広告事業と、「ふるなび」などのコンシューマー事業の2つに分かれています。主力はコンシューマー事業で、2022年7月期は売上高の7割がこの事業によるものです。

ふるさと納税は2019年6月に新制度として再スタートしました。これまでとの大きな変更点は、返礼品が寄付額の3割までに設定された点。それまで、自治体による返礼品競争が発生し、地域を応援して地方創生に繋げるという本来の目的から逸脱していました。それを是正する制度改正でした。
アイモバイルの業績に注目すると、2019年7月期は質の高い返礼品を獲得する目的で、多くのユーザーが「ふるなび」を利用しているのがわかります。その反動で2020年7月期の売上高は大幅な減少に転じています。しかし、自治体が返礼品に工夫を施したことや、新型コロナウイルス感染拡大でEC取引が活発になったこと、そしてふるさと納税のメリットが多くの人に認知されたことで2021年7月期の売上高は再度伸張しました。
2020年はふるさと納税受入額が6,724億円となり、制度改正前の駆け込みがあった2018年の5,127億円と比較して31.1%も増加しています。
■ふるさと納税の受入額及び受入件数の推移(全国計)

この調査から、2020年の1件当たりの単価を割り出すと19,278円となります。1件当たりの単価が高いふるさと納税は、サイト運営会社にとって流通総額を増やしやすいという特徴があります。