ディズニーも参戦、スポーツベッティングに再び注目【Media Innovation Weekly】8/13号

先日、FOXがスポーツベッティングから撤退するというニュースをお伝えしましたが、今度は新規参入のニュースです。依然としてメディア企業にとっては魅力的な領域のようです。

特集 ニュースレター

おはようございます。Media Innovationの土本です。今週の「Media Innovation Newsletter」をお届けします。

メディアの未来を一緒に考えるMedia Innovation Guildの会員向けのニュースレター「Media Innovation Newsletter」 では毎週、ここでしか読めないメディア業界の注目トピックスの解説や、人気記事を紹介していきます。ウェブでの閲覧やバックナンバーはこちらから

会員限定のコミュニティ「イノベーターズギルド」を開設しました。Discordにて運営しています、こちらからご参加ください

★アプリも提供中です →AppStore/Google Play

今週のテーマ解説 ディズニーも参戦、スポーツベッティングに再び注目

先日、FOXがスポーツベッティングから撤退するというニュースをお伝えしましたが、今度は新規参入のニュースです。依然としてメディア企業にとっては魅力的な領域のようです。

ディズニー「ESPN」をスポーツベッティング事業者にライセンス

ウォルト・ディズニー・カンパニーは、スポーツブランドの「ESPN」をPENN Entertainmentにライセンスし、スポーツベッティングの「ESPN BET」が今秋よりローンチされることを明らかにしました。PENNはディズニーにライセンス料として10年間で15億ドル(約2200億円)を支払います。ディズニーは特に何もすることはなく、毎年200億円が転がり込んでくることになります。

PENNはギャンブルが合法化されている16の州で「Barstool Sportsbook」というブランドでスポーツベッティングのサービスを提供しています。今回、ESPNからライセンスを受けたことでサービス名称を「ESPN BET」へ変更しました。

このBarstoolは、元々20年の歴史を持つスポーツメディアからライセンスを受けて利用していたものですが、PENNは今年2月に運営元のBarstool Sports社の残り株式を3億8800万ドル(約560億円)で買収していました。しかし「ESPN」のライセンスを得た事で用済みになったのか、僅か半年で創業者のデビッド・ポートノイ氏に全株式を売却することも明らかにしています。

ディズニーがコストカットを進める中で、単にブランドをライセンスするだけで毎年200億円を得られるこの取引は魅力的だったでしょう。同社はスポーツベッティングに積極的な姿勢を見せていましたが、自社では取り組まず、パートナーを探す意向を示していました。ディズニーはPENN社からライセンス料を受け取るだけでなく、株式を取得するオプションや、将来的に取締役を指名する権利も持ちます。

FOXはパートナーとの仲違いから撤退したと見られますが、今後独自にスポーツベッティングのサービスを提供する意向を示しています。

投資会社のアポロ傘下となっている米ヤフーもスポーツベッティングに注力しているメディア企業の一つで、「ヤフースポーツ」のコーナーでは積極的に押し出していて、ユーザーが実際に賭けを行うこともできます。また4月には皆でベッティングを楽しむことをコンセプトとしたアプリである「Wagr」の買収も行っています。

スポーツベッティングはどのくらい儲かるのか?

スポーツベッティングがどの程度の収益性があるのか、PENNは上場していて、ちょうど第2四半期(4-6月)の業績を発表しています。それによれば、売上高は16億7000万ドルで、調整後のEBITDARは4億7680万ドルとなっています。非常に高収益な事業ですが、ただ同社はリアルなカジノや競馬場を43箇所で経営しているという総合企業です。

その中のインタラクティブ部門に限ると、売上高は2億5750万ドル、調整後EBITDARは1280万ドルの赤字でした。赤字ではあるものの、売上高は前年同期と比較して、66%もの伸びとなっていて、非常に成長性の高い領域であることが伺えます。同社としては「ESPN」という世界的なブランドを得ることで、一気に成長を加速させたい狙いです。

最大手と見られるDraftKingsも第2四半期の業績を発表しています。それによれば売上高は8億7500万ドル、調整後のEBITDAでマイナス7297万ドルとなっています。こちらも赤字が続いていますが、売上高は前年同期と比較して87%の増加と、非常に高いものがあります。こうした成長率を見るとメディア企業が食指を伸ばすのも理解できます。

◆ ◆ ◆

日本ではまだ合法化されていないため、当然取り組んでいる事業者はありませんが、スポーツベッティングやファンタジースポーツの分野は有望であると考えられます(サッカーのtotoを除く)。検討は行われているようで、動きがあれば本サイトでもお伝えしたいと思います。

今週の人気記事から 集英社、ファーストパーティデータを活用した広告配信サービスをリリース

集英社が、ポストクッキー時代に対応して、自社のマンガアプリや雑誌WEBメディア、ECサイトなどで取得した閲覧情報や購買情報などの1st Partyデータを、広告配信・分析に活用できるサービス「Shueisha Data +」をリリースしました。TreasureDataを活用してデータを一元管理、集英社の運営するメディアでの横断的な広告配信に活用するということです。続きを読む

1.U-NEXT、17つのケーブルテレビ局と事業連携を開始

2.集英社、1st Partyデータを活用した広告配信・分析サービスをリリース

3.Yahoo! JAPANのビッグデータから予測した今後のトレンド予測、「雪塩さんど」「下瀬美術館」「レンジクック」など10選を発表

4.DAC、ゲーム・メタバース/XR領域のメディア事業専門会社「株式会社ARROVA」を設立

5.電通PRコンサルティングとインフォバーンが共創型オウンドメディア支援ソリューションを共同開発

6.TOW、屋外広告・交通広告を主に扱うケシオンと業務提携 街を舞台のプロモーション活性化目指す

7.大広、生成AIを活用した自動対話プログラムの開発を開始 FABRIC TOKYOと共同

8.広告枠最適化のBrowsi、日本法人を設立・・・国内で既に65社が採用

9.アイレップ、生成AIを活用した広告クリエイティブワークフローシステムを開発 製作時間を最大40%削減

10.テレビ東京、仏アプリ開発会社「YONKO.SAS」に出資 コンテンツIPを世界展開へ

会員限定記事から ChatGPTのアクセスが減少傾向

SimilarWebによれば「ChatGPT」へのアクセスが減少傾向にあるようです。6月に9.7%、7月に9.6%減少。SimilarWebの分析によれば、学校が休みになったという季節要因のようです。同社の推計によればChatGPTの成人視聴者の4分の1以上を大学生が占めているそう。18歳から24歳が28.61%、34歳から44歳が15.90%となっています。45歳から54歳では11.19%、55歳から64歳では6.51%、65歳以上では4.20%だということです。続きを読む

1.ChatGPTへのアクセスが減少傾向、その理由とは?

2.KKR、サイモン&シュスター社を約16億5000万ドルで買収の交渉中

3.ローカルニュースに特化したAIによる自動生成ニュースサイト「LocalLens」は地方ジャーナリズムの起点になるか?

4.再びプラットフォームとパブリッシャーの対立が激化【Media Innovation Weekly】8/7号

5.米大手新聞チェーンのガネット、デジタル収入の拡大で黒字転換見通し

6.急成長する広告付きストリーミング配信、2027年には100億ドルの広告収入と予想

7.ニューヨーク・タイムズ、売上高6.3%増。購読者総数は1000万人へ

8.BuzzFeed、第2四半期は売上が前年同期比で-27%と苦戦、現金が底をつく懸念も

9.ドットダッシュ・メレディス、第2四半期は売上が-15%と苦戦・・・一部セグメントの広告が低調

10.英リーチ、Facebookからのトラフィック減でPVが16%もの減少・・・コスト削減で利益目標を追求

編集部からひとこと

お盆をめがけて台風がきているようです。今週はお休みの方も多そうですが、交通機関の乱れも予想されます。皆様、お気を付けを。

《Manabu Tsuchimoto》

関連タグ

Manabu Tsuchimoto

Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

特集