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今週のテーマ解説 ディズニーも参戦、スポーツベッティングに再び注目
先日、FOXがスポーツベッティングから撤退するというニュースをお伝えしましたが、今度は新規参入のニュースです。依然としてメディア企業にとっては魅力的な領域のようです。
ディズニー「ESPN」をスポーツベッティング事業者にライセンス
ウォルト・ディズニー・カンパニーは、スポーツブランドの「ESPN」をPENN Entertainmentにライセンスし、スポーツベッティングの「ESPN BET」が今秋よりローンチされることを明らかにしました。PENNはディズニーにライセンス料として10年間で15億ドル(約2200億円)を支払います。ディズニーは特に何もすることはなく、毎年200億円が転がり込んでくることになります。
PENNはギャンブルが合法化されている16の州で「Barstool Sportsbook」というブランドでスポーツベッティングのサービスを提供しています。今回、ESPNからライセンスを受けたことでサービス名称を「ESPN BET」へ変更しました。
このBarstoolは、元々20年の歴史を持つスポーツメディアからライセンスを受けて利用していたものですが、PENNは今年2月に運営元のBarstool Sports社の残り株式を3億8800万ドル(約560億円)で買収していました。しかし「ESPN」のライセンスを得た事で用済みになったのか、僅か半年で創業者のデビッド・ポートノイ氏に全株式を売却することも明らかにしています。
ディズニーがコストカットを進める中で、単にブランドをライセンスするだけで毎年200億円を得られるこの取引は魅力的だったでしょう。同社はスポーツベッティングに積極的な姿勢を見せていましたが、自社では取り組まず、パートナーを探す意向を示していました。ディズニーはPENN社からライセンス料を受け取るだけでなく、株式を取得するオプションや、将来的に取締役を指名する権利も持ちます。
FOXはパートナーとの仲違いから撤退したと見られますが、今後独自にスポーツベッティングのサービスを提供する意向を示しています。
投資会社のアポロ傘下となっている米ヤフーもスポーツベッティングに注力しているメディア企業の一つで、「ヤフースポーツ」のコーナーでは積極的に押し出していて、ユーザーが実際に賭けを行うこともできます。また4月には皆でベッティングを楽しむことをコンセプトとしたアプリである「Wagr」の買収も行っています。
スポーツベッティングはどのくらい儲かるのか?
スポーツベッティングがどの程度の収益性があるのか、PENNは上場していて、ちょうど第2四半期(4-6月)の業績を発表しています。それによれば、売上高は16億7000万ドルで、調整後のEBITDARは4億7680万ドルとなっています。非常に高収益な事業ですが、ただ同社はリアルなカジノや競馬場を43箇所で経営しているという総合企業です。
その中のインタラクティブ部門に限ると、売上高は2億5750万ドル、調整後EBITDARは1280万ドルの赤字でした。赤字ではあるものの、売上高は前年同期と比較して、66%もの伸びとなっていて、非常に成長性の高い領域であることが伺えます。同社としては「ESPN」という世界的なブランドを得ることで、一気に成長を加速させたい狙いです。
最大手と見られるDraftKingsも第2四半期の業績を発表しています。それによれば売上高は8億7500万ドル、調整後のEBITDAでマイナス7297万ドルとなっています。こちらも赤字が続いていますが、売上高は前年同期と比較して87%の増加と、非常に高いものがあります。こうした成長率を見るとメディア企業が食指を伸ばすのも理解できます。
◆ ◆ ◆
日本ではまだ合法化されていないため、当然取り組んでいる事業者はありませんが、スポーツベッティングやファンタジースポーツの分野は有望であると考えられます(サッカーのtotoを除く)。検討は行われているようで、動きがあれば本サイトでもお伝えしたいと思います。
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SimilarWebによれば「ChatGPT」へのアクセスが減少傾向にあるようです。6月に9.7%、7月に9.6%減少。SimilarWebの分析によれば、学校が休みになったという季節要因のようです。同社の推計によればChatGPTの成人視聴者の4分の1以上を大学生が占めているそう。18歳から24歳が28.61%、34歳から44歳が15.90%となっています。45歳から54歳では11.19%、55歳から64歳では6.51%、65歳以上では4.20%だということです。続きを読む
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編集部からひとこと
お盆をめがけて台風がきているようです。今週はお休みの方も多そうですが、交通機関の乱れも予想されます。皆様、お気を付けを。