【メディア業界2024年の展望】『未来を変える情報』で働く人のプラスアルファに貢献する、フジテレビジョン・清水俊宏 氏

テレビ業界の未来、報道の未来と今を語っていただいています。

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【メディア業界2024年の展望】『未来を変える情報』で働く人のプラスアルファに貢献する、フジテレビジョン・清水俊宏 氏
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清水俊宏 氏

株式会社フジテレビジョン ニュース総局報道局報道センター部長職プロデューサー(『Live News α』チーフプロデューサー)兼ビジネス推進局コンテンツビジネスセンター

2002年フジテレビ入社。報道局に配属され、政治記者、ディレクター、プロデューサーなどに従事。2016年にコンテンツ事業局へ異動すると、テレビニュースのデジタル化や新規事業開発などを担当。「FNNプライムオンライン」などネットメディアの立ち上げや、テレビ番組との連動コンテンツなど幅広く手掛けた。 2023年7月、再び報道局へ異動となり、夜のニュース番組『FNN Live News α』チーフプロデューサーに就任。ビジネス推進局の兼務もしていて、「ニュース番組プロデューサー」と「ビジネスプロデューサー」の二刀流を務める。 また、2021年からはフジテレビ公認YouTuberの顔も持ち、経済番組『#シゴトズキ』で大企業幹部やスタートアップCEO、VC、タレントなど多彩なゲストから「仕事に役立つ思考法」を聞き出している。ラジオ出演やセミナー講演など発信も積極的。

2023年、どのような仕事やプロジェクトに取り組まれましたか?

2023年は、日本のニュースのあり方を変える土台作りを進めました。きっかけは、7月にフジテレビ系列の平日夜ニュース『FNN Live News α(ニュースアルファ)』のチーフプロデューサーに就任したことです。新卒で記者や報道番組ディレクター・プロデューサー等を経験し、ビジネスセクションに軸足を移してからはニュースサイト『FNNプライムオンライン』を立ち上げたり、ニュース動画のSNS展開などを推進したりと、ニュースとは強い関わりをもってきました。ただ、ビジネスの視点を持って地上波レギュラーニュース番組のプロデュースをするのは初めてです。

チーフプロデューサーに就任して最初に取り組んだことは、ミッション・ビジョン・バリュー、KPI、中長期計画を定めることでした。ミッションは「『未来を変える情報』で働く人のプラスアルファに貢献する」です。「速く、正確に、わかりやすく」はニュース番組として当然。それと同等に、私たちの番組を見た人たちの「心」や「行動」に変化を起こすような「役に立つ情報」を伝えることを大事にしたいと考えています。

「あすの会議で、こんな話をしてみよう」「来週のプレゼンは、図表を使ってみよう」

そんな風に、番組に触れた視聴者ひとりひとりに小さな変化が起きて、それが社会全体に広がり、イノベーションのきっかけとなりたい。それが『ニュースアルファ』の存在意義です。

それを実現するための演出もスタート。ニュースを「3C」「SWOT」などビジネスフレームワークで考える「図表でヨミトキ」スタジオ解説や、教養や知識を広げるフラッシュニュース、翌日のアイスブレイクに使える話題を30秒でお伝えする「あすはこんな日」など、ミッションに向かって様々な趣向を凝らしています。地上波の枠を超えて、YouTubeチャンネル『ニュースα』も開設しました。

最近ではスタッフとの会話で「この企画は〇〇が学べます」「画は強いけど、未来を変える情報からは外れますね」なんて言葉が溢れています。

昨年、メディア業界や個人的な視点で最も注目した出来事は何でしたか?

「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行」は、後世の評価を待つまでもなく歴史上の大きな転換点であったことは間違いありません。特にオフラインイベントの復活は特筆に値します。

コロナ前には「OMO(Online Merges with Offline)」という考え方が大きな注目を集めていました。顧客にオンラインとオフラインの垣根を意識させずにモノやサービスを体験してもらうビジネスモデルです。メディアにとっても必要不可欠な考え方になりつつありました。ところがコロナ禍でリアルの接触が不可能になり、「オフラインをいかにオンラインに置き換えるか」「オンラインでいかに新しい体験を作るか」に各社とも注力せざるを得ない状況に。それによって様々なサービスが生まれましたが、一方で「オンライン疲れ」や「オンラインサービスの踊り場」も叫ばれるようになっていました。5類以降によってオフラインの重要性がかなり強く意識されるようになり、私自身も特に秋以降は毎週のようにオフラインイベント登壇の依頼を受けました。価値体験型マーケティングなども合わさった展開など、もはやコロナ禍前とも違う状況です。地上波ニュースやオンラインメディアにとって新しいビジネスモデルを構築できるチャンスだと強く感じています。これからがとても楽しみです。

メディア業界において、今後注目すべきトレンドや焦点となる事項は何だとお考えですか?

もはやトレンドの領域を超えて、使う人・使っていない人の差が大きく出ているのが生成AIです。

「以下は、生成AIがメディア業界に及ぼしうる影響のいくつかの例です。

1.生産性向上。生成AIによって、記事の簡略化やカスタマイズなどの作業を自動化することができます。編集部はより効率的に仕事を進められるようになることが期待できます。

2.速報性と更新頻度の向上。生成AIを活用することで、高速かつ正確な情報をリアルタイムで提供できるようになります。リアルタイムの情報を効果的に取り扱えるようになることで、更新頻度を増やすことも可能です。

3.カスタマイズされた情報提供。生成AIを使用することで、個々のユーザーの嗜好に合わせた情報を提供することができます。ユーザーの利便性が向上し、メディアの読者数も増加することが期待できます。

4.文章の自動生成。生成AIによって生産性が向上する一方、人手による原稿制作の機会が減少することが懸念されます。今後は、生成AIと人間が相補的な役割を担う体制の構築が必要となります。

5.メディア競争の激化。生成AIを導入すれば、多くのメディアが同じ情報を提供できるようになることが予想されます。このため、競争力のある独自の情報提供や、分析・解説などのサービスの提供、利用者とのコミュニケーションを増やすことが必要になります。

以上は、今後の焦点の一例です。将来的には、生成AIと人間が共存することで、より効果的なメディアの運営が実現されるでしょう。」

…と述べた「」の部分は情報漏洩対策等を施したフジテレビ社内向けChatGPTの回答を一部書き換えたものです。作業時間はたった1分。生成AIによって今後、メディアに携わる人ができることがさらに増えていきます。

2024年への意気込み:来る年に向けた抱負や目標をお聞かせください。

コロナ禍を経て、何をやっても「これまでと違う」と評価される時代に入りました。「故きを温ねて新しきを知る」もよし、「物は試し」「当たって砕けろ」もよし、行動した者が勝ちます。動かないのはもったいない。こんなチャンスだらけの時代はありません。私自身、テレビやメディアの枠に縛られず、新しい分野にも積極的にチャレンジを続けていきたいと考えています。そのために必要なのは「知識・教養」「実行力」「ネットワーク力」の3つ。何事も受け身になることなく自分から何かを起こそうとするマインドを持ち、グランドデザインを描きながら進んでいくことを心がけます。食、アニメ、地方創生、XR、宇宙、コミュニティ、AI…。何かご一緒できることがありそうなら、皆さんもぜひお声がけください!

《編集部》