AI時代の「信頼」をどう取り戻すか──ゼロクリック時代のメディアと広告の新たなエコシステム

・AIの普及により信頼性と情報の質が重要になっている
・ゼロクリック化や検索・SNSの変化でメディアの読者獲得が難化
・メディアは人格やミッションを軸に信頼を築き、新たな価値創造が求められる

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AI時代の「信頼」をどう取り戻すか──ゼロクリック時代のメディアと広告の新たなエコシステム
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生成AIの急速な普及により、生活者はこれまでにないスピードで情報にアクセスできるようになりました。一方で、情報の信頼性低下やバイアスに対する不安も高まっています。検索結果ページの中でAIが要約を提示し、ユーザーが元の記事にアクセスしない「ゼロクリック」現象は、ニュースメディアにとって大きな脅威になりつつあります。

こうしたなか、「AI時代におけるメディアと広告の信頼性確立」をテーマにしたセッションがAdvertising Week Asia 2025で開催されました。登壇したのは、東洋経済新報社 執行役員で東洋経済オンライン事業プロデューサーの堀越千代氏、デジタルガレージ執行役員CDMOでBI.Garage代表取締役CEOの新澤明男氏、Globalive代表取締役社長の梅野浩介氏です。モデレーターは、クーリエ・ジャポン編集長の南浩昭氏が務めました。

4人の議論から浮かび上がったのは、「AIにとってもメディアにとっても、最後に残る競争軸は“信頼”である」という共通認識でした。

GAFAのAI投資「58兆円」が向かう先──“クオリティ・イン、クオリティ・アウト”の時代へ

議論の口火を切ったのは、Globalive代表の梅野氏です。まず示されたのは、AIを取り巻くマクロな投資環境でした。

Amazon、Google、Microsoftなど4社による2025年時点の設備投資額は合計で約58兆円にのぼります。東京都の一般会計予算の約4倍にあたる規模で、そのおよそ8割がGPUや半導体、サーバーといったハードウェアに、約2割がそれを動かすための電力に投じられているといいます。コンテンツに直接支払われていると見られる金額は、わずか1%程度に過ぎません。

「現状のAI企業は、スクレイピング技術を使って、ほぼタダ同然で世界中のデジタルコンテンツを収集していると言われています。しかし、最終的にAIの性能を左右するのはインプットの質です。ガーベジ・イン、ガーベジ・アウトではなく、クオリティ・イン、クオリティ・アウトの発想が不可欠です」

梅野氏は、主要な大規模言語モデル(LLM)の性能が急速に横並びになっているベンチマークも紹介しました。モデル間の精度差は年々縮まり、アルゴリズムそのものによる差別化は難しくなりつつあります。今後は、どれだけ質の高いデータを保有し、活用できるかが競争力を左右するといいます。

日本の鉄道路線長をAIに質問した事例では、数年前は誤答や重複が目立っていたものの、最近では国土交通省の公式データを参照した正確な回答が返ってくるようになっています。

「AI側も、どのデータを信頼しているのかを明示し、信頼性をアピールする段階に入りつつあります。AIにとっても、信頼できる一次情報源を確保することが重要になっています」

ゼロクリック検索がもたらす「人間トラフィック10%減」という現実


《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

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デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの事業統括やM&Aなど。メディアについて語りたい方、相談事など気軽にメッセージください。

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