マンガ制作におけるAI活用と西洋での実写化について、読者と制作者の間に大きな認識の差があることが、全国の一般読者1,000名とマンガ制作経験者100名を対象とした調査で明らかになりました。
一般読者はAI制作マンガに強い抵抗感
マンガ制作におけるAI活用について、一般読者の52.1%が「どちらとも言えない」と回答し、明確な意見を持つ層では否定的な見方(28.1%)が肯定的な見方(19.8%)をやや上回りました。特に女性の方が「やや否定的」と答える割合が高い傾向が見られます。
さらに、大部分がAIで制作されたマンガを読みたいかという質問では、「あまり読みたくない」が41.0%、「読みたくない」が24.3%と、合計65.3%が消極的または拒否的な姿勢を示しました。「ぜひ読みたい」はわずか8.5%、「たぶん読む」が26.2%にとどまり、AI制作マンガに対する読者の抵抗感の強さが浮き彫りになっています。
AIが漫画家の仕事を脅かす可能性については、「間違いなく脅威になる」「脅威になる可能性あり」と答えた人が合計41.7%に上り、さらに30.9%は「わからない」と回答しました。「(おそらく、または全く)脅威にはならない」と考える人は27.4%と3割弱にとどまっています。
制作現場では既にAI活用が日常化
一方、マンガ制作経験者を対象としたフォローアップ調査では、全く異なる実態が明らかになりました。制作者の59%が制作工程でAIツールを「定期的に」または「時々」使用しており、AIを使う予定がないと答えたのはわずか16%でした。
AIによる生産性向上については、全体の60%が「大幅に向上した」または「やや向上した」と回答し、「効率が下がった」と答えたのはわずか8%でした。ここでは明確な男女差が見られ、女性クリエイターは男性よりも「生産性が向上した」と答える割合が若干高く、本サンプルにおいては女性の方がAIツールから実務的な恩恵を受けやすい可能性が示唆されます。
制作者が抱えるAIへの懸念
マンガクリエイターが抱えるAIへの懸念は多岐にわたりますが、最も多いのは「AIを使った作品に対する読者のネガティブな印象」(39%)と「伝統的な技術の衰退」(38%)でした。これは、読者からの評価という外的要因と、創作技術の維持という内的要因の両方を懸念していることを示しています。
総じて、制作側が最も気にしているのは競争や法的リスクよりも、AIが「作品の芸術性」や「読者からの見られ方」にどのように影響するかという点だと言えます。
西洋での実写化、認知度に大きな差
西洋で制作されたマンガの実写化については、全体的に認知度が低いことがわかりました。回答者の44.5%が「そのような実写化があることを知らなかった」と答えており、最も多い回答となっています。さらに28%は「聞いたことはあるが、観たことはない」と回答し、実際に1作品以上を観た経験がある人は全体の14~15%程度にとどまります。
西洋でのマンガ実写化で気になる点については、回答者の約半数(44.5%)は「特に気になる点はない」と答えました。何らかの懸念を持つ層に限ると、最も多いのは「文化の誤解や誤表現」(27.9%)で、次いで「キャスティングの問題」(21.1%)、「原作への敬意不足」(19.4%)が続きます。「作品のクオリティの低さ」(15.0%)や「構成・テンポの不一致」(10.7%)は比較的少数派でした。
男女間では1点だけ明確な差があり、男性は女性よりも「原作へのリスペクトが守られているか」を懸念する割合が高い傾向が見られます。
制作者は海外実写化を前向きに評価
これに対し、マンガクリエイターの多くは、海外での実写化について好意的な見方をしています。全体の69%が「日本のマンガの国際的なイメージ向上に役立っている」と回答し、「悪影響がある」と考える人は10%にとどまりました。残りは中立的な立場で、海外実写化に対して強い否定的感情をもつクリエイターは少ないことが分かります。
海外での映像化において、日本の専門家が関与すべきかについては、強い合意が見られました。全体の62%が「必須」もしくは「理想的に関与すべき」と回答しており、作品のオリジナリティや文化的な整合性を保つために、日本側のクリエイティブな判断が重要だと考える人が多数派です。「関与は不要」と答えたのはわずか8%でした。
読者と制作者、異なる視点の背景
今回の調査から、読者と制作側では「これからのマンガの姿」に対する見方が大きく異なることが明らかになりました。一般読者のAIに対する姿勢は慎重というより、むしろ否定的に傾いています。AI を主に用いて作られたマンガを「読みたいとは思わない」と答えた人が多数を占め、AIによって漫画家の仕事が脅かされるのではないか、あるいは長年培われてきた技術や表現が失われてしまうのではないかと不安を抱く声も多く見られました。読者にとって、AI生成のマンガは「人の手による創造性」や「作品に宿る感情の深み」から距離を感じさせる存在であると言えます。
一方、クリエイターにはより実務的で現実的な視点が見られます。AIは既に多くの制作現場で活用されており、大半のクリエイターが効率向上につながっていると評価しています。多くの場合、AIは創作そのものを置き換えるものではなく、作業を補助する道具として使われています。長文資料を要点だけ素早く把握するためにPDF要約ツールが使われるのと同様に、マンガ制作においてもAIは一部の工程を効率化する手段として受け入れられていると言えるでしょう。
西洋でのマンガ実写化に対する見方にも、読者とクリエイターの間で明確な隔たりが見られます。読者の多くは、海外実写化について「そもそも存在を知らない」「特に関心がない」と回答しており、文化的な距離を伴う存在として捉えています。関心を示す層であっても、懸念の中心は制作クオリティではなく、文化的な誤解や原作の扱われ方に集中しています。多くの読者にとって、海外実写化は"自分たち向けではない"コンテンツとして認識されているのが実情です。
これに対し、クリエイターの多くは海外実写化に関わった経験を持ち、その意義を比較的前向きに評価しています。日本のマンガが世界的に認知される機会になると考える人が多く、制作過程に日本側のクリエイターが関わることについても強い支持が見られました。これは西洋作品を排除する姿勢ではなく、文化的・物語的な一貫性を保ちながら国際的な協働を進めていきたいという意識の表れと言えます。
総じて、一般読者は「伝統性」や「マンガらしさ」といった本質的な価値を重視する一方で、クリエイターは新しいツールや国際展開に対して比較的柔軟で前向きな姿勢を示しています。革新そのものは受け入れられつつありますが、日本のマンガ文化が持つ独自性や職人性を尊重した形で進められるべきだという点では、読者とクリエイターの間に共通した認識があることがうかがえます。
調査概要
マンガ制作におけるAIの活用や西洋での実写化を、読者と制作者がどのように受け止めているのかを明らかにするため、2025年11月にセルフ型アンケートツール「Freeasy」を利用して2つの調査を実施しました。
1つ目の調査は、2025年11月4日に全国の15~99歳の1,000名を対象に行われました。ここでは、AIによるマンガ制作や西洋での実写化に関する認知度、態度、視聴・読書行動など、一般読者の幅広い意識を把握しました。
続いて、11月13日~15日に実施したフォローアップ調査では、初回調査から抽出したマンガ制作経験者100名を対象に、制作ワークフロー、AIツールの利用状況、海外実写化への考え方、そして今後のマンガ制作に対する見方を詳しく尋ねました。
これら2つの調査により、一般読者と業界のクリエイターがAI、創作、文化的な翻案をどのように理解し、どこで意見が重なり、どこで違いが生じているのかが浮き彫りになりました。









