AIエージェントが変える広告営業、セールスフォースと博報堂テクノロジーズが示すメディアの未来

・AIエージェントは広告営業やメディアプラン作成を効率化し、人とAIの協働を促進する
・多事業連携やデータ活用でメディアのシナジーと収益化を狙う戦略が重要
・AI導入の成功にはコンセプト明確化と実行を伴うことが成功の鍵と強調

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AIエージェントが変える広告営業、セールスフォースと博報堂テクノロジーズが示すメディアの未来
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AIエージェントが広告営業の現場をどう変えるのか。Media Innovation Conference 2026で、セールスフォース・ジャパンと博報堂テクノロジーズが、メディア業界の収益構造を再定義するための具体的なアプローチを提示しました。95%のAI導入が失敗に終わるという現実を踏まえ、データを中心としたビジネス変革の道筋と、AIエージェントとの「協働」という新しい働き方を実践例とともに紹介するセッションとなりました。

セールスフォース・ジャパン 執行役員 ソリューション統括本部 通信・メディア・サービス本部 本部長 秋葉健氏

95%のAI導入が失敗する理由

セールスフォース・ジャパン 執行役員 ソリューション統括本部 通信・メディア・サービス本部 本部長の秋葉健氏は、1999年の創業以来、クラウド、モバイル、SNS、予測AIと続くテクノロジーの波を乗り越えてきた歴史を振り返りながら、現在のエージェント型AIを「世界を一変させる革命」と位置づけました。

1999年のクラウド、2006年のモバイル、2010年のSNS、2016年の予測AIを経て、現在はエージェント型AIの時代へ

しかし現実は厳しいものがあります。実に95%、20社に19社の割合で、AIのパイロット導入が失敗しているというデータが示されました。その原因として挙げられたのは、データの品質の低さ、ガバナンスの制限、そして個々の技術要素にとらわれて会社独自のAIを作ろうとして時間がかかってしまうことでした。

Salesforceは自社ヘルプサイトでAIエージェントを活用。会話数は累計200万件を突破

そうした状況の中、Salesforceでは「カスタマーゼロ」、つまり自社をゼロ番目の顧客として位置づけ、顧客に提案する前に自社でAIエージェントをフル活用しています。例えばヘルプサイトでのAIエージェント活用では累計200万件の会話を処理し、チャットボットとは全く異なる自律的な対応を実現しているとのことです。そうした実績を基に外部にAI活用を提案しています。

メディア企業に求められる「フライホイール」

広告事業、サブスク事業、メディアコマース、ライツ/IPの4事業が相互に連携する「メディアフライホイール」

メディア業界への提言として、4つの重要な事業領域が示されました。広告事業、サブスク事業、メディアコマース、そしてライツ/IP事業です。これらを「フライホイール」、日本語で言うと、弾み車として捉え、それぞれが独立して頑張るのではなく、相互に連携しながら自走する循環を作ることが重要だと強調されました。

メディア企業に求められるのは「Capture attention(注目を集める)」「Keep attention(エンゲージメント)」「Monetize attention(収益化)」の3要素

メディア・エンタメ業界に求められる要素は3つに集約されました。クリエイターが顧客の注目を引く「Capture attention」、マーケターがエンゲージメントを高める「Keep attention」、そしてそれらを実際に収益化する「Monetize attention」です。AIエージェントは、コンテンツ制作でのコラボレーション、パーソナライズされた顧客体験、そしてリソース配分の最適化という形で、これら3つの要素すべてを支援できると説明されました。

広告営業におけるAI活用の3つのポイント

ここから講演はメディア・広告業界における具体的な活用に移っていきます。ここからはリードソリューションエンジニアの塩原 秀典氏が解説しました。

広告主、代理店、媒体社の3社間でギャップが生まれ、営業活動の難易度は上昇傾向に

媒体社に求められる姿として、3つのポイントが挙げられました。一つ目は「関係性の可視化」。広告主だけでなく代理店との関係性、ブランドやブランドマネージャーとの関係性を、営業担当者の頭の中だけでなく会社として共有し、チームでアプローチできる状態にすることです。

媒体社には「関係性の可視化」「社内ノウハウの集約」「営業活動の徹底」が求められる

二つ目は「社内ノウハウの集約」。専門性の高い提案が求められる中、知識を属人化させず、会社の資産として活用できる状態にすることです。三つ目は「営業活動の徹底」。目の前の案件だけでなく、中期・長期の案件をしっかり捉え、必要に応じて早めにリカバリーを行う観点が重要だとされました。

これらに対してAIエージェントがどう活用できるか、具体的なデモンストレーションが行われました。広告主の情報管理画面から、ブランド情報、代理店担当者との関係性を可視化し、AIエージェントに「次の夏キャンペーンの提案に向けて」と相談すると、過去の提案事例やリレーション情報を踏まえた上で、誰にどのようなアプローチをすべきか表示される様子が紹介されました。

リードソリューションエンジニア 塩原 秀典氏

Snap社の事例:85%の社員がSalesforceを中心に業務

海外事例として、Snapchatを運営するSnap Inc.の取り組みが紹介されました。月間アクティブユーザー数9億以上、13歳から34歳へのリーチ率75%を誇る同社は、グローバルで推定750兆円とされるZ世代・ミレニアル世代の購買力に対して強みを持っています。

Snapchatを運営するSnap Inc.は月間9億ユーザー以上、13~34歳へのリーチ率75%を誇る

Snap社では、営業活動サマリーエージェント、キャンペーン予測エージェント、アポ獲得エージェントなど、さまざまなAIエージェントを活用しています。特にアポ獲得エージェントは、顧客へのメールアプローチから日程調整まで、人が介在せずにエージェントが代行しているとのことです。

Snap社では広告配信プラットフォームのデータをSalesforceに連携し、業務に必要な情報を集約

その結果、社内の85%がSalesforceを中心に業務を行うようになり、キャンペーン運用のペーシング業務では35%から50%という高い業務効率化を実現しています。単にデータを貯めるだけでは現場の負荷は下がらず抵抗感が生まれますが、AIエージェントと組み合わせることで新しい示唆を得られるようになったことが、高い利用率につながっているとの分析でした。

Snap社では全社DXの利用促進85%、キャンペーン運用のペーシング業務で35~50%の効率化を実現

博報堂テクノロジーズ:AIエージェントとの対話でメディアプランを作成

後半は博報堂テクノロジーズのメディア事業推進センター 高橋雅典氏が登壇し、同社のAI活用事例を紹介しました。高橋氏はデータサイエンティスト・AIエンジニアとして、視聴率予測AIの開発や対話型メディアプランニングツールの開発に携わっています。

博報堂テクノロジーズ メディア事業推進センター 高橋雅典氏

同社では、デジタル広告のメディアプランニング、つまりどの媒体にいくら予算を投下するかを決める作業に課題を感じていました。1回あたりのメディアプラン作成に4~6時間かかり、それが月に何度も発生するという状況です。

メディアプラン作成は「月数回 × 4種類以上 × 4~6時間」の工数がかかる

そこで開発されたのが「デジタルアースCVシミュレーター」です。過去の実績情報を入力すると、コンバージョンを予測し、予算配分を最適化して、最適なメディアプランを自動算出します。しかしWebUIでの運用には、設定項目が多い、過去の設定が思い出せない、アルゴリズムが出すプランの解釈が難しいといった課題がありました。

「Digital AaaS CV Simulator」は広告出稿データを入力すると、CV予測と予算配分の最適化を行う

そこに生成AIを掛け合わせて開発されたのが、対話型のメディアプランニングツールです。「同僚や友達と話すようなAIエージェントとの対話を通して、メディアプランの算出から解釈、ネクストアクションの提示までを行う」というコンセプトで作られました。

「同僚や友達と話すようなAIエージェントとの対話を通して、メディアプランの算出から解釈、ネクストアクションの提示まで」

デモでは、3体のAIエージェント(過去実績ベースの「タケル」、ノーム値ベースの「トモコ」、両者のいいとこ取りをする「YAMA」)がチャットUIで操作される様子が紹介されました。「プランを解説して」と伝えるとAIが解説し、「インスタグラムとスマートニュースを追加して」と指示すると予見がアップデートされ、新しいメディアプランが生成されます。

3つのAIエージェントが連携。過去出稿実績に基づくプラン、博報堂Simulator結果を踏まえたプラン、両方の知見を加味したプランを生成

AIエージェント時代の働き方:ゴールを伝え、実行はAIへ

高橋氏は、AIエージェント時代のメディアプランニングについて、人間の役割は「目的や予見を定義する」こと、つまり何をしたいか、ゴールやなぜこれをするのかを伝えることだと述べました。実際の実行や資料作成はAIエージェントが担います。

人間は「目的・与件を定義する」役割、AIエージェントが実行を担い、人間は「提示された候補を比較、KPIや条件に応じて判断する」

裏では複数のAIエージェントが自律的に連携しながらメディアプランを作成し、レポート生成、PowerPoint作成、Excel作成といった作業も行います。生成されるメディアプランには複数の選択肢があり、最終的にどのプランでいくかは人間が責任を持って比較検討します。KPIや条件を見直す必要があれば、再度予見を整理して実行し直すという、新しい協働の形が示されました。

最後にセールスフォース・ジャパンからまとめとして、AIアプローチは様々あるものの、POC(概念実証)の「C」はコンセプトであることを強調しました。企業が顧客や従業員とどういった形で新しい世界を描くのか、そのコンセプトを明確化した上で、AIを活用して収益構造をアップさせることが重要です。「実行、アクションが伴って初めて収益化につながる」。AIを決してハードル高いものと考えず、フル活用して広告事業のその先へ進むことを呼びかけ、セッションは締めくくられました。

メディアのフライホイールを回すために、コンセプトを明確化し、AIを活用して収益構造をアップさせることが重要

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《Manabu Tsuchimoto》

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デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの事業統括やM&Aなど。メディアについて語りたい方、相談事など気軽にメッセージください。

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