アイティメディアは2026年8月3日、2027年3月期第1四半期の連結決算を発表しました。売上収益は22億40百万円(前年同期比17.5%増)と第1四半期として過去最高を更新し、営業利益は5億35百万円(同49.8%増)と大幅な増益となっています。BtoCメディア事業の大幅な成長に加え、BtoBメディア事業ではマジセミ株式会社の新規連結がデジタルイベント収益を押し上げました。通期業績予想に修正はなく、売上収益92億円、営業利益20億円の見通しを維持しています。
新指標「調整後EBITDA」の導入とM&A戦略の本格化
今回の決算から、同社は新たに「調整後EBITDA」を業績指標として導入しています。これはEBITDAにM&A関連の一過性費用を足し戻した指標で、M&Aの強化・実行に伴う費用が増加する局面において、本業の収益性をより正確に示す目的で設計されたものです。当四半期の調整後EBITDAは5億63百万円(前年同期比48.0%増)、マージンは25.2%と前年同期の20.0%から5.2ポイント改善しています。

この指標導入は、同社がM&Aを成長ドライバーとして継続的に活用していく姿勢を明確にしたものと読み取れます。実際、当四半期からマジセミ株式会社が連結範囲に加わっており、デジタルイベント収益の顧客数が前年同期の147社から319社へと2倍超に拡大しています。

BtoBメディア事業:マジセミ効果で増収も、主力リードジェンは伸び悩み
BtoBメディア事業の売上収益は17億13百万円(前年同期比9.9%増)でした。収益モデル別に見ると、構造的な変化が見えてきます。
デジタルイベント収益は5億11百万円(同31.6%増)と大幅に伸びています。これはマジセミの連結効果が大きく、年間1,000回超のウェビナーを開催する同社の事業がBtoBメディア事業のポートフォリオに加わったことで、顧客基盤が大きく拡大しました。ただし、顧客単価は264万円から160万円へと39.4%低下しており、マジセミの顧客層が比較的小口であることが単価の希薄化をもたらしています。
一方、主力のリードジェン収益は7億21百万円(同0.5%増)とほぼ横ばいにとどまりました。顧客数は1,493社(同0.5%増)、顧客単価は48万円(同0.0%増)と、いずれもほとんど成長が見られていません。決算短信によると、一部大手顧客のマーケティング活動の鈍化が背景にあるとしています。リードジェン会員数は140万人に到達し前年同期比2.3%増加しているものの、収益への転換が課題として浮かび上がっています。
予約型広告&ブランドソリューション収益は4億80百万円(同6.3%増)で堅調に推移しています。特にAIプラットフォーム関連の広告需要が活発化する兆しがあるとされ、顧客数も236社から263社へ11.4%増加しました。セグメント全体の調整後EBITDAマージンは19.6%と、前年同期の20.1%からわずかに低下しており、マジセミ統合に伴うコスト構造の変化や大手顧客の鈍化が利益効率に影響を及ぼしています。
BtoCメディア事業:一時的特需で驚異的なマージン改善
BtoCメディア事業の売上収益は5億26百万円(前年同期比51.3%増)と大きく伸長しました。調整後EBITDAは2億27百万円(同234.8%増)に達し、マージンは43.2%と前年同期の19.5%から23.7ポイントも改善しています。
決算補足説明資料では、第1四半期の一時的な特需により売上収益が上振れし、それが利益効率の大幅な上昇につながったと説明されています。このため、この水準のマージンが通期にわたって持続するかどうかは慎重に見る必要があります。ただし、BtoCメディア事業が一時要因を含むとはいえ連結業績の利益成長を強力に牽引したことは確かです。
CMS刷新とAI活用による編集業務の効率化
同社は編集業務の基幹システムであるCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)の刷新を進めています。2026年5月に「ITmedia AI+」、7月には「ITmedia NEWS」および「ITmedia エグゼクティブ」について新システムへの移管が完了しました。
このCMS刷新は単なるシステム更新にとどまらず、サイトのユーザビリティ改善に加え、AI活用を含む編集業務の効率化を企図しているとされています。メディア企業にとってコンテンツ制作の生産性向上は収益性に直結する課題であり、同社がAIを編集プロセスに組み込む取り組みを具体的に進めている点は注目に値します。

子会社・発注ナビの成長継続
BtoBメディア事業のなかで継続的な成長を見せているのが、子会社の発注ナビ株式会社です。当四半期末時点の加盟社数は8,902社に達し、その影響力が拡大していると開示されています。発注ナビはIT製品・サービスの発注を支援するマッチングプラットフォームであり、リードジェン事業とは異なるマネタイズモデルで成長を続けています。
財政状態と株主還元
財政状態について、総資産は89億27百万円と前期末の105億46百万円から減少しています。親会社所有者帰属持分比率は79.2%と、前期末の82.2%から低下しました。配当については、2027年3月期の年間配当予想を1株当たり50円(前期は100円)としており、変更はありません。
通期の業績予想は売上収益92億円(前期比10.7%増)、調整後EBITDA22億円(同13.9%増)、営業利益20億円(同13.3%増)を据え置いています。第1四半期の売上収益は通期予想の約24.3%に相当し、BtoCの一時特需を考慮しても順調な滑り出しといえます。M&Aパイプラインの進捗やリードジェン事業の回復動向が、下半期以降の焦点となりそうです。





