2月13日、Media Innovationでは、オフラインイベント「Media Innovation Meetup #1」を主催しました。第1回目は経済メディア特集として「NewsPicks」の編集長・金泉俊輔氏と「Stockclip」のCEO野添雄介氏を招聘。それぞれの媒体から見た、サブスクリプション時代のメディア作りについて講演していただきました。

まずは講師2名による、それぞれのメディアの概要説明が行われました。株式会社ユーザベース運営による「NewsPicks」は、5年運営されているソーシャル経済メディア。現在のユーザー数は約360万人で、これは経済に特化したニュースプラットフォームとしては国内最大規模、と金泉氏。有料のサブスクリプション会員は、そのうち約95, 000人とのことです。

NewsPicks」の特性は、経済ニュースをキュレーションするプラットフォームであること、ピッカーと呼称されるユーザーたちによるコミュニティが生成されること、編集部によるオリジナルコンテンツ(記事)が提供されることの3つ。ピッカーが自分の気になるニュースをピックアップしてコメントすると、他のユーザーがそれを見ることでニュースへの理解をより深められるようになっています。現在のユーザー層は男性が8割で、もっとも多い年代は30代。金泉氏は「今後は、これからイノベーションが求められてくる業界の若い読者層ももっと開拓したい。

2017年7月に創業されたStockclip株式会社による「Stockclip」は「ビジネス情報をサマライズ、ビジュアライズして手軽に読める経済メディア。野添氏によるとキーワードは「変化」と「比較」。野添氏は、かつて自動車がアメリカの人口の50%に普及するまでに約60年かかったのに対し、携帯電話は約10年、スマートフォンはたったの5年で普及したことを例に挙げながら「これだけ日々物事が大きく変化する時代において、何もかもを知ろうとするのはもはや不可能に近いことです。そこで「変化」だけに着目してグラフなどでビジュアライズして比較することで、世の中がどう移り変わっているのかを把握できるようにしています」と語りました。

同メディアで公開される記事の数々は専門家ではないながらも、野添氏をはじめとする「日々何が起き、どう変わろうとしているのかを貪欲に知ろうとしている」メンバーが作成しているとのことです。その後は当メディアの責任者・土本学がモデレーターを務め、お二人とのパネルディスカッションを実施しました。

―――それぞれ、メディアに携わることになったきっかけと、現状で感じている課題は。

金泉:きっかけは「物事の本質を知りたい」という欲求からです。それを満たすにはさまざまなアプローチがありますが、自分はメディアを生業にすることでその欲求を満たしたいと感じました。

これは「NewsPicks」だけではなく業界全体に感じている課題ですが、ドットコムバブル以降、情報はタダで手に入るものという認識が広まってしまったのは良し悪しだったと思います。情報が広く伝達するようになった一方で、記事やコンテンツに満足な制作コストをかけづらくなってしまいました。コストがかかる調査報道は難しくなってしまいました。

野添:メディアを立ち上げたきっかけは「自分が知りたいことをまず発信してみよう」というところからです。そうすることで、自分自身の知識欲もより刺激されるんです。立ち上げていきなりバズる類のサービスではないと思っていましたので、広く訴求するよりは継続の意思がある方に応援をいただければと、サブスクリプションの形を取りました。現状の課題は、やっぱり媒体の規模をいかに大きくしていくかですね。

―――「購読者に支持されるコンテンツ」を言語化するなら?

金泉:抽象的になってしまいますが「まだ言語化されていないもの・みんなが知らない何か、を具現化したコンテンツ」だと思います。それをうまく編集し表出させるのがメディアの役割です。例としては、企業の不祥事を暴くのもその1つだと思います。

野添:「記事やコンテンツ全体の文字量に対して、得られる情報が多いもの」と捉えています。いかに短い時間で的確な情報を与え、理解させることができるか。読み物でもないかぎり、冗長な記事は支持を得られません。

「Stockclip」のCEO野添雄介氏

―――そうした「支持されるコンテンツ」を作れる人に求められる条件は。

野添:読者に必要な情報を見極め、それをいかに分かりやすく届けられるかを考えて実行できることだと思っています。

金泉:反骨心が強く、安易に周囲に迎合しないことでしょうか。たとえば100人のうち99人が「こっち」と言っていても、そこで「いや、あっちだ」と言える1人であること。これがいいコンテンツを作れる人の特徴だと思っています。もちろん、それにはそう言うだけの妥当性が必要で、批評性だけが前面に出ていたり、ただ天邪鬼で言っているだけでは意味がありませんが。

―――ユーザーに、サブスクリプションに移行してもらうためのコツや考え方は。

野添:シンプルですが、毎月払う額よりも大きなメリットを媒体に感じてもらうことです。そうすれば、将来の期待に対して継続していただけます。たとえば「Stockclip」では、Amazonの20年分の決算資料を集め、それを元にした記事を提供していますが、個人で同じことをしようと思ったら5時間くらいはかかるのではないでしょうか。それなら、月額1980円は安いと思っていただけるのとかなと。

金泉:無料のメディアでPVを稼ぐスタイルは、いかに煽情的な見出しを付けて見てもらうかなど、どうしてもマーケティング寄りの思考になります。ですが、”見出しと記事の差異”は、月額をお支払いいただくサブスクリプションで得られる体験としては質が低いと言わざるを得ません。なので、会員の方をいかに裏切らないようにするか、いかに継続してもらうかという、記事の中身をよりしっかりとしたものにする思考を強めることが大事です。

「NewsPicks」の編集長・金泉俊輔氏

――そのほか、サブスクリプション型サービスならではの留意点は。

野添:解約をしやすくしておくことです。目を通す頻度が下がったり、その人にとって興味を惹かれる内容ではなくなったりと、サブスクリプションを解約する理由はさまざまなものがあると思いますが、解約に手間がかかるとその真意を把握しづらくなるんです。手軽に解約できるからこそ、解約率が下がることに意義が出てきます。

金泉:同意します。世界的に見ても、解約しづらいサブスクリプション型サービスはあるんですよね。なかには、解約しようとすると電話をかけてくるなんてところもあったりします。加えるなら、解約時にアンケートを細かくやるのもあまり意味がないと思っています。それよりは実際にヒアリングをして、その内容を受けて改善を図る方がいいです。あとはやはり、優れたコンテンツを作っていくことが当然ながら大きいのかなと思います。

――それぞれのメディアの今後の目標は?

野添:まずは会員を10,000人の大台に乗せたいですね。

金泉:世界で読まれる、見られるオリジナルコンテンツを作っていきたいですね。