米国ではポッドキャストをネットワークしたアドネットワークが広がりを見せています。日本でもいち早く音声広告の領域にチャレンジしているのが、ロボットスタート株式会社です。同社を率いる中橋義博社長は保険会社やヤフーを経て、世界で始めてモバイルの検索連動型広告を提供したサーチテリアを創業し、後にGMOグループに売却したネット広告のプロです。

一方で、メディアの音声対応はまだ緒についた段階であり、ロボットスタートではメディアの音声対応支援も積極的に行っていて、日本でAmazon Echoのフラッシュニューススキル (Flash Briefing Skill)に提供されているうちの10%以上を同社が支援しているものだと言います。中橋社長と鹿田貴史CTOにメディアの音声化についてお話を伺いました。

―――簡単に自己紹介をお願いします

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中橋: 昔からコンピューターが大好きで、最新のパソコンに触れられるという理由で学生時代はアスキーでアルバイトをしていました。卒業後は生命保険会社に勤めていましたが、個人で運営していたウェブサイトを故・井上雅博社長もご存知だったという縁もあり、ヤフーに転職しディレクトリや検索を担当しました。

当時、検索は全くビジネスになっていなかったのですが、GoTo.comという会社が検索連動型広告を発明して、急成長します。本国のヤフーで導入されていたのですが、これを日本で研究していたら、この会社に興味を持つようになり、2004年に社名をオーバーチュアに変えて日本上陸した際に転職することにしました。

同社ではPC向けのサービスが主流だったのですが、ドコモの「i-mode」を筆頭に日本ではモバイルの流れがきていました。そこでモバイルの検索連動型広告をやろうと決心し、サーチテリアという会社を創業しました。ある程度やりきったところで2012年にGMOグループに売却。数年間在籍していましたが、2015年に次はロボットをやろうと考え、ロボットスタートを創業しました。

鹿田: 私はサーチテリアの第一号社員だったという縁で、ロボットスタートの創業に加わりました。元々はトランスコスモスで「Askモバイル」というモバイルサイトをやっていて、サーチテリアの検索連動型広告を中橋に営業され、導入したという事があったのですが、気付いたらサーチテリアに入社して、営業をする側になっていました(笑)。その後、アパンドールのCTOを経て、ロボットスタートのCTOを務めています。

―――社名からもあるように、そもそもはロボット領域に取り組んできたそうですね

中橋: メディアやアドテクに長年携わってきて、PC、モバイル、スマホと常に家庭用のコンピューターデバイスの初期から見てきました。この次に来るのは、コミュニケーションロボットなのではないか? という思いで起業したのがロボットスタートです。

家庭にロボットが普及すれば、ロボットが広告メディアになりますので、ロボットアプリデベロッパーにマネタイズする手段を広告で提供しながら、ロボットのエコシステムを大きくしていくような貢献ができないかと考えていました。普及を後押しするために、「ロボスタ」というメディア事業や、ロボットを開発する企業に対するコンサルティングもはじめました。

ロボット業界の関係者にはなくてはならないメディアとなっている「ロボスタ

―――今、音声領域に大きく舵を切っているのはどういう背景でしょうか?

中橋: 家庭用のロボットが普及するまでには、まだ時間がかかりそうだというのが最大の理由です。実はいま「ロボスタ」で一番読まれているのが、ロボットメーカーの倒産記事です。ロボット掃除機の「ルンバ」のように、特定の機能を持ったロボットは実用化が進んでいますが、人間とコミュニケーションを取れるような汎用的なロボットを商品レベルに落とし込むには、まだまだ技術的なハードルがあります。「Pepper」を筆頭に、現在のロボットはB2Bでの利用がメインになっています。現状から考えると消費者向けの広告ビジネスはまだ先になるだろうと思います。

一方、ロボットを追っている中で、常に隣の領域として存在していたのが、スマートスピーカーです。これはロボットから体を動かす機能が取り除かれて、頭脳と会話の機能が強化されたような存在と言っても良いでしょう。このスマートスピーカーが「Amazon Echo」を筆頭に米国から徐々に受け入れられ、日本にも上陸してきました。このタイミングで、ロボットに加えて、スマートスピーカーの広告、メディア、コンサルの事業をはじめました。

ロボットスタートの中橋社長

―――現在、なぜ音声が大きく注目されているのでしょうか?

中橋: これは単純に便利だからだと思います。音声であれば、PCやスマホが苦手な人でも簡単に操作ができます。特に子供たちにとってみると、始めて触れるコンピューターデバイスがスマートスピーカーなどの音声デバイスになるのは今後間違いないと思います。そうすると、その世代にとっては音声入力が当たり前になります。

またスマートスピーカーは、Amazon、Google、Appleなどの大手プレイヤーがいま最も力を入れて競争している分野であり、熾烈な機能アップデートが行われていることから、メディアからの注目も集まっています。特に北米ではホリデーシーズンに大安売りされることもあって、一家に一台から、一部屋に一台という状態も珍しくなくなっていて、普及率はキャズムを超えた状態だと思います。また、家の中だけでなく、クルマの中というのも音声アシスタントの領域として広がっています。いずれも、北米以外でも普及率が高まってきていますが、日本はその数年遅れで普及していくものと考えます。

―――日本で遅れているのは何故でしょうか?

中橋: これもシンプルにスマートスピーカーの国内リリースが遅れたというだけの理由だと思います。2,3年遅れではありますが、確実に北米の状況を追っていくと思います。普及の遅れと共に、スキル・アプリの数もまだ日本では限定的です。「鶏が先か、卵が先か」という問題にはなりますが、スキル・アプリが増えて利便性が高まれば、日本での普及も加速していくと思います。ここはロボットスタートとしても後押ししていきたい領域です。

―――音声広告はどのような状況でしょうか?

鹿田: 現在、博報堂DYメディアパートナーズさんと協業しながら音声広告のアドネットワークを作ろうとしていますが、ロボットスタートの音声広告はAppleとGoogleの「Podcast」で配信されているものと、Amazon Echoのフラッシュニューススキルで配信されているものを対象としています。同時にメディアさんの音声対応の支援も行っています。まだまだ日本全体の在庫が少ない状況ですので、そこを増やさなくては市場ができません。

ロボットスタートCTOの鹿田氏

―――そこで、メディアの音声対応支援をしているわけですね

鹿田: 音声対応支援では、テキストのコンテンツを、エーアイ社の音声合成技術で音声化し、AppleやAmazonのアカウント開設、配信設定、そして配信回数に応じて広告収益を配分する、というところまで一気通貫で提供していて、メディアさんは特に手を動かす必要がなく、音声対応が可能です。ですので、まずは対応するところから始めませんか? と呼びかけています。

中橋: フォーマットが音声に変わっても、やはり重要になってくるのはコンテンツです。メディアの皆さんが音声化という技術的な部分で労力を割かずに、コンテンツに注力するためにも、我々の力を活用して欲しいと思います。

―――メディアが音声対応をする際の課題はありますか?

鹿田: 面倒事は弊社が引き受けて、特にデメリットはありませんので、ぜひ始めて欲しいです(笑)。懸念事項として初期に挙がるのは、どのように要約するのか、というのと、音声化の精度です。

要約は、記事をまるまる読み上げるとかなりのボリュームになりますので、要約する方が望ましいのですが、それを機械的にやるのか、それとも人力で用意するのかという選択が必要です。

また音声化の精度はどんどん上がってきていますが、人名や固有名詞、新語、あるいは難読文字などを音声エンジンに直接渡すと喋り方を誤る可能性があり、どこまで誤る可能性を許容するのか、許容できないなら、フリガナを振ったり、事前に音声化されたものをチェックしたりというような対応をどこまで実施できるか、という点が論点になります。

中橋: アイティメディアさんや、イードさんなど現在日本でリリースされているメディアのフラッシュニューススキルの10%以上をロボットスタートで支援させていただいています。ノウハウや知見も溜まってきていますので、是非声をかけていただければと思います。

―――上手くいってるメディアのスキルに共通点はありますか?

鹿田: マーケティングは必要だと思います。自社メディアの音声版を積極的にアピールしているメディアのスキルは上位に来ています。Twitterでの呼びかけも効果が高いようです。スキルストアのロジックは開示されていませんが、アクセスからの登録率が高いスキル・アプリの評価が上がるような傾向も感じられますので、まずはエンゲージメントの高い自社の読者にプラスαの接点として登録してもらうのが良いと思います。

―――音声広告にはどのような特徴がありますか?

中橋: まだまだ試行錯誤をしている段階ですが、ユーザー調査を行ったところ、ユーザーには前向きに受け入れられていて、ブランドアウェアネスを高める効果があることが分かっています。現状の技術的な制約から、誘導数などの計測はできませんが、ラジオに出稿しているようなクライアントには違和感なく受け入れられるのではないかと感じています。

―――これから音声の市場が更に大きくなるためには何が必要でしょうか?

中橋: よく言われるのはキラーアプリ(スキル)の存在です。PCでは、エクセルやブラウザ。スマホであればFacebookやLINEのようなキラーアプリが存在します。スマートスピーカーで良く使われる機能は、音楽・天気・タイマー・アラーム・ニュースなどがありますが、元々プラットフォーム側が用意した機能ばかりで、サードパーティー発のキラーアプリはまだ存在しません。スマホの初期も同様でしたが、音声でもキラーアプリが生まれてくると、さらに市場は拡大すると思います。

一方で、ビジネスモデルが確立しないと、サードパーティーが力を注ぐのは難しいでしょう。ですので、ロボットスタートとしてはまずはウェブメディアの音声化のお手伝いをしながら、広告で収益化の手段を提供して、スキル・アプリがどんどん生まれてくるような状況を作ることで、少しでも市場の拡大に寄与できればと思っています。

特集: 音声とメディアの未来

5人のキーパーソンが登壇するイベントは5月22日(水)開催

今回の特集に登場する5名から直接話しが聞ける「Media Innovation Meetup #4 音声とメディアの未来」は5月22日(水)の開催です。

終了後には軽食と飲み物を用意した懇親会も実施します。

※Peatixの画面より領収書の発行が可能です
※当日は名刺を1枚お持ちください(ない場合は結構です)

■概要
日時 2019年5月22日(水) 19:00~22:00
会場 〒160-0004 東京都新宿区四谷3-9 第一光明堂ビル 9F TIME SHARING 四谷 ※四谷三丁目駅から徒歩2分
主催 株式会社イード
入場料 3,000円

■スケジュール
18:30 開場
19:00 開演、主催者挨拶
19:05 各登壇者からプレゼンテーション
    株式会社Voicy 緒方憲太郎 代表取締役CEO
    Radiotalk株式会社 井上佳央里 代表取締役
    シマラヤジャパン株式会社 安陽CEO
    ロボットスタート株式会社 中橋義博 代表取締役社長
    株式会社オトナル 八木太亮 代表取締役社長
20:20 パネルディスカッション
21:00 懇親会
    軽食とドリンクを用意します
22:00 終了

■チケット
チケットはPeatixで販売中です。

※Media Innovation Salonの会員様には1000円引きとなるクーポンを配布中です。ぜひ参加をご検討ください。