『After GAFA』著者 小林弘人氏が語る、「編集者としてのキャリアと起業、そして “GAFA後” の日本」

2月末にKADOKAWAから発行された『After GAFA 分散化する世界の未来地図』は、GAFAが推し進めてきた情報の専有と、その反動がもたらしたアンチGAFAの潮流を、インターネット・ギークたちの底流にある分散化・民主化という文化・思想的な側面を交えて描いた力作です。

今回、同書の著者である小林弘人氏にインタビューを実施。編集者としてキャリアをスタートし、インフォバーンやメディアジーンの 起業、そしてインキュベーターへと活動の場を広げてきたこれまでの歩みを振り返っていただくとともに、本書のモチーフである“GAFA後の世界”を考えるに至った経緯とその問題意識について、お話しを伺いました。

編集スキルは起業に通ず

――― 小林さんというと、古くは『WIRED 日本版』の創刊を手がけ、最近では『Business Insider Japan』の発行人として携わるなど、メディアプロデューサーとして数々の実績を上げてきたという印象がありますが、直近ではイノベーション支援に力を入れられていますね。

小林(弘人氏・以下略):デジタルエージェンシーのインフォバーンを立ち上げてから以降、メディアを含めた新規サービスもたくさん立ち上げてきました。その意味では連続起業家と言ってもいいのかもしれません。起業には、編集者としてのスキルセットが大いに役立ちました。誌面をつくる企画・取材・構成・デザインといった編集作業は、起業に必要なワークフローに重ねて捉えることができます。ですので、自らで新しい事業を立ち上げるだけでなく、他の企業の事業立ち上げを支援行ってきました。編集スキルというコンピタンスをイノベーションの方に生かしてきた、というのが2010年以降ですね。

インフォバーンやメディアジーンの創業者で、現在は取締役CVO(Chief Visionary Officer)を務める小林弘人氏

―――編集者、そしてメディアの役割は変わりつつあると。

単に情報を届けるだけのメディアは紙の時代ですでに終わっています。いまは、メディアの概念が拡張・立体化されて、コミュニティをどう育てるのかという事も含みます。つまり、インキュベーション的な役割も求められている。いまやっているイノベーションやDX支援はクリエイティブインキュベーターといった呼び方のほうがしっくり来ます。そこには教育も含め、一緒に学び、考えます。コンテンツを作り届けるだけよりも、今の仕事のほうが、幅が広がり、楽しいですね。

―――メディアビジネスのあり方についてどのように考えていますか。

メディアのビジネスモデルが拡張しているだけでなく、異業種からの参入もある。メディアにはこれまでの成功体験を元に自らのチャネルを制限・規定しているせいで、そこから抜け出せない人たちがたくさんいます。

ビジネスモデルの異種格闘技戦が始まっているわけで、メディアが本来持っているキュレーション能力や、目利き力、言語化する能力を駆使しつつ、それを成立させている”見えないワークフロー”にある特徴を集めて再パッケージすれば、Webや紙という単なる提供フォーマットにとどまらないビジネスモデルが起案できるはずです。

オンラインメディアの基本的なビジネスモデル上では、フリーミアム(リード獲得)がありますが、あるいはD2Cブランドを立ち上げたり、自身のコミュニティに対して旅行の企画を行う、ということかもしれない。編集者ができることは、じつに可能性が広いのです。

―――編集者にこそ柔軟性が求められる時代が来ているのですね。

編集者に限りませんが、自分が世に送り出したアウトプットを愛し過ぎると、変化を嫌い、自分が世界の中心になってしまう場合があります。いいコンテンツを作って「すごいね」と言われて楽しくなってくるのはわかります。が、それはいわば「罠」で、そのアウトプットはテクノロジーやライフスタイルが一瞬で古くなる。やっていることの本当の価値を見極めないといけません。

良質なコンテンツを作り込む技術もスキルセットは必要ですし、軽視してはいけないのですが、突然いろんなことが変わったときにそれだけでは生き残っていくことは難しいのです。メディアが読者に届けてきた本質的な価値とは何だろうか、というのは常に自問自答するべきだいと思います。それはアウトプットとしてのコンテンツだけではないはずです。

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北島友和
北島友和
大学院修了後、約4年の編集プロダクション勤務を経て、2006年にイード入社。およそ10年間、レスポンス・RBB TODAY等の編集マネジメントやサービス企画を担当。その後2016年にマーケティングコンサルティング会社に転じ、メディア運営の知見を生かした事業会社のメディア戦略やグロース支援にプロマネとして携わるほか、消費財メーカーの新規事業・商品企画・コミュニケーション戦略立案等の支援に従事している。

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