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ともに市場を創出し、パイを分け合う時代へ― グライダーアソシエイツ山口氏と考えるデジタルメディアの未来

音声メディアの躍進、サブスクリプションによる新たなマネタイズ、AIの活用、4Gに続く新無線通信システム5Gの登場など、日々変化にさらされ続けるデジタルメディア。歩みを止めては生き残れないこの世界で、未来への舵取りをどのように行っていけばよいのか?

本稿では、イード メディア事業本部 副本部長の森元行氏、キュレーションアプリ「antenna* (アンテナ)」、コンテキストマッチ型ブランドアドネットワーク「craft.(クラフト)」などを提供するグライダーアソシエイツの上席執行役員・山口翔氏の対談をお届け。デジタルメディアの最前線を駆け抜けてきた二人に、これからのメディアのマネタイズ、どうすれば市場に貢献できるのか?をざっくばらんに語り合っていただきました。

森元行(以下、森):本日はよろしくお願いします。まずは山口さんの経歴をお教えいただけますか。

山口翔(以下、山口):2009年にマクロミルに新卒で入社し、マーケティングリサーチの営業に2年ほど従事しました。2011年4月からは人事に異動し、新卒採用のプロジェクトを3年ほど担当。2014年4月に、マクロミルの創業者である杉本哲哉が新規事業からスピンアウトさせる形で作ったグライダーアソシエイツに出向しました。

弊社では、広告事業の立ち上げ、営業、商品企画などを経て、経営戦略室長として中長期計画の立案にも携わりました。2017年からは「antenna* 」事業の統括を2年ほど担当し、2019年に「craft. 」を立ち上げて今に至ります。森さんは2013年からイードさんにジョインされていると思いますが、これまでのデジタルメディアビジネスを振り返ってみていかがですか?

森:テクノロジーの進化が著しいですね。特に、アドネットワークやリスティング広告の精度の向上が顕著です。顧客の獲得効率を最大限まで追求しつつ、我々のような記事メディアは、いかにバリューを発揮していくかを常に考えています。

山口:純広告やタイアップ、アドネットワークなどから始まって、マネタイズがどんどん多角化していますよね。今はサブスクリプションサービスやユーザー課金でしょうか。ですが、純広告やタイアップほど手法が確立されているものは、まだないようにも感じられますが、その辺はどう見ておられますか?

森:歴史が長いメディアであるほど、既存のマネタイズの手法に終始してしまっているという肌感覚はありますね。その収益も大きいので間違いではないのですが、今日は非メディアの事業者もそうしたマネタイズを行えるので、このままではパイの奪い合いが激化して厳しくなる一方だろうなと。

メディアを中心に進めていくという弊社の姿勢は今後も変わりませんが、それを看板にして色々なチャレンジをしていきたいと考えています。具体的には、コンサルティングや、D2Cなどですね。

山口:なるほど。既存のコンサルにはない強み、メディアだからこそできる上流設計のようなビジョンはありますか?

森:例えばですが、弊社で運営しているゲームメディアであれば、コアな読者の中から未来のクリエイターを育ててゲームメーカーとマッチングできないか、とか。メディアの種類や規模によって手法は変わると思いますが、共通して言えるのは、「メディアこそが生活者・消費者に一番近い位置にいる」ことかなと。それでいて、toBの声も聞ける。両方の話を一番深く聞けるのが、我々の強みだと思っています。

山口:ユニークなユーザーとデータをいかに持つか、ということですね。それは弊社も取り組んできたことです。2014年頃は「antenna」の広告枠販売がメインでしたが、ほどなくマーケットが飽和してきて、新しい一手を打たなければとなったときに気付いたのは、一番のアセットは「antenna* 」がターミナルメディアであるということ。

あるブランドを好むユーザーはどのメディアを好むのか……そうしたユニークなデータを分析して独自のプランニングをすることで、ビジネスを拡張させていく。これがすごく大事だと、この2~3年で本当に痛感しています。

森:PC、スマホ、そしてスマートスピーカーによる音声……と、情報を発信するデバイスはあふれかえっています。そんな中で、どのようにして自社のプロダクトに触れてもらうかですよね。その手法のひとつとしては、プロダクトそのものの魅力を発信するだけでなく、それにまつわるストーリーやクリエイターの思い、それを使うことでライフスタイルがいかに変わるかなども発信し、共感してもらうのがよいのかなと。

山口:「認知はされているが、購買されるに至っていない」モノをどうするかというお話ですね。それは大抵の場合、そのものの本当のよさや使うべきシーンが伝わっていないのが原因で、それさえきちんと伝われば売れるモノもある。認知させる段階では効率が大切ですが、効率だけではそうした文脈を伝えきれません。そこを補い、モノと消費者を適切にマッチングさせるのがメディアなのかなと思っています。

森:いかに”他人事”ならぬ”自分事”にさせるか、ですよね。私も”自分事化”するにはどうしたらいいかを常に考えています。それを突き詰めた結果、僕らのメディアに来てくれることで、知りたいけど知らなかったことを知れる、得した気分になれる……言ってしまえば、来てくれた人の人生が少しでも豊かになってもらいたいんです。

山口:わかります。雑誌における特集記事のようなもので、いかにユーザーの興味の幅を広げられるかということですよね。そうした出会いは、新たな市場の創出につながります。「いいものを作りさえすればみんな見てくれる、分かってくれる」という従来のアート的な文脈も大切ですが、今日はそうしたビジネスとしての視点を融合させなければならないと思っています。こうした議論は本来、会社の中で日常的に行われるべきですが、今、そこまで考えている人は多くないように思えます。

森:弊社の代表取締役・宮川洋は常々「各メディアの編集長は、その事業のプロデューサーたれ」と言っています。メディアを、コンテンツをいかによくするかだけではなく、もっとマクロにPLを見据えよと。

山口:常日ごろからPLへの意識をいかに持つか、ですよね。

森:利益にならないということはその業界に貢献できていないということでもあるので、それでは本当にメディアを運営する意味がないんですよ。

山口:僕たちも、良質なコンテンツを生み出すメディアの事業をサポートしていきたい、よいメディアはそれだけ効率よくマネタイズできるべきだと考えており、「craft. 」は広告のパフォーマンスを開示する前提で設計をしています。たとえば、ある映画が公開されたときに、御社の映画メディア「シネマカフェ」のCTRがすごくいいとなったら、それをお伝えしてタイアップやイベントをご提案できないかなと。そうすればメディアのPLに貢献しつつ、総合的なパイも大きくできるだろうと。

森:ひとつのメディアのトラフィックがいきなり爆発的に増えることはほぼありませんので、そのよう言っていただけるのはありがたいです。シネマカフェの例を続けるなら、僕らはどうやっても第三者にはなれないので、第三者の視点で分析していただけるとありがたいですね。ゆくゆくは「craft. 」をハブとして、メディア同士の出会いの場としても機能したらいいのかなと。

山口:それはいいですね。「貴メディアは、このメディアと相性がいいと思いますよ」というソリューションの提案まで行えれば、これからの時代を戦えるユニークなビジネスモデルになると思います。また、メディアのみなさんとご一緒するうえで、メディアの一番の経営資源たるユーザーのUXを損なう広告の提供は絶対にしてはいけないと常々肝に銘じています。

ユーザーがどのコンテンツに興味があるのかを分析するのではなく、そのコンテンツがどんなものであるのかをしっかり分析し、それに即した広告を出す。我々はそれをコンテキストマッチと呼んでいるのですが、単純にアドネットワークを提供して、UXを損なうようではもう先はないぞと。

森:メディアの読者の大半にとってみれば、広告は依然として”ないに越したことはない”ものなんですよね。ですので弊社のメディアでも、記事広告はPR表記をつけて通常の記事と区別が付くようにしています。ただ、広告案件であろうと、おもしろい記事は読まれるし、喜んでもらえる。これも事実です。

新型コロナウイルスによるマスクやトイレットペーパーの品薄騒動で最近あらためて実感しましたが、みんなで奪い合うと足りなくなるものでも、少しずつ分け合うと足りるんですよね。これからのデジタルメディアも、パイを奪い合うのではなく、分け合ってどのように大きくするかを一緒に考えていくのが大切だと考えています。

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